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133話 スーパームーン。月に代わって〇〇よ!





俺の誕生祝いが終わって数日。

その間は異世界店舗の陳列商品の見直しやら、地球での販売物の見直しを行って過ごしていた。


「ごめんね。ダンジョンに行きたいよね?」


「いや、ダンジョンは逃げないからな。それに他のパーティメンバーに仕事をさせて俺だけ好きな事をするのはな…」


「セイくんはもう少し自己中にならないとね。私達はそんなセイくんが好きだからいいけど、あまり我慢しないでね?」


うん。そんなにストレートに言われると、ぼっちに慣れた俺はどう答えていいかわからんな。


「それより待ちに待った日がやって来たぞ」


「待ちに待った?なんだろう?」


聖奈さんにもわからないか。


「今日はスーパームーンだ。俺が力を手に入れた満月の夜も後から調べたらスーパームーンだったろ?だからもしかしたらまた月の神(ルナ)様と話ができるかもしれない」


「えっ!?ホントに?もしかしたら私も転移できるようになるかも!?」


「それはどうだろうな?前の話だと力が弱くて聖奈には転移の能力(ちから)を与えられなかったって言ってたし」


スーパームーンは一年の中で地球に最も月が近づく満月の夜の事を言う。

もしかしたら月の神様と話しが出来るかもしれない。

その日が今日の夜だ。この世界と向こうの衛星(つき)がシンクロしているならこっちもスーパームーンだが、どうだろうな。






そして夜。リゴルドーの家にみんなで集まっていた。


「そろそろでしょうか?」


「そうだな。こちらで話が出来なかったら一度向こうに転移するから」


そう話し合っていた。


「でも、屋根の上なんて初めて登ったよ」


「俺もだ」


まぁ普通は登らないよな。俺はソーラーパネルをつける為に何度も登ったけど。


「あっ!お月様です!」


遠くに見える街の城壁から満月が登って来た。


「確かにいつもより大きい気が…」


挿絵(By みてみん)


突然声を失ったミラン。


「ミランちゃん?」


「聖奈…動けるのか?」


「何言ってるの?…って、もしかして月の神(ルナ)様?」


『初めましてかな?私は一方的に見てたけどね』


久しぶりの声を聞いた。頭に直接響く声だ。


「月の神様。お久しぶりです。その後お加減はいかがですか?」


『ふふふっ。何だか君に敬われると変な感じだわ』


そりゃ敬うよ。俺の人生を変えてくれたんだから。


『お加減は変わりないよ。私は貴方達の星から少しずつ離れていっているから力は少しずつだけど、及ばなくなっていっているわ』


「それはどうしようもないのですか?」


『そうよ。でも貴方達、人の寿命からしたら何も変わらない程ゆっくりだけど』


聖奈さんがどうにか出来ないか聞いたがどうやら人知の及ばない事のようだ。


『それより私の祭壇で祈りを捧げてくれてありがとう。今日はそのお礼が言いたかったの』


正月のあれか…届いていたんだな。『神は見ている』とはホントの事だったのか。


「あの!出来ればで構いませんがこの子達を地球に転移出来る様に出来ませんか?」


「聖奈!」


「だって、私達にはどうしようも出来ないんだよ?それなら月の神様の使徒を増やすくらいしか出来ないじゃない」


いやどんな方便だよ…

ミラン達に地球を見せたいだけだろ…


『いいわ』


いいのかよ!?


『でもその願いをそのまま叶えてあげられるほどの『■★◆』がないの。誰か一人ね。後、丁寧な祈りを毎夜捧げてくれた貴女にも能力(ちから)をあげるわ。

そこの男の子みたいな適性はないから転移くらいしか出来ないけどね』


俺のような?


「あの…俺にくれた能力って?」


『あら?まだ気付いていないのかしら?魔力が人の許容量以上に使えるはずよ?』


例のチートは月の神様のお陰だったのか…

主人公補正かと思っていたけどやっぱり俺はモブのようだな…まぁぼっちだったし?

あれ…?この魔力が月の神様のお陰なら地球でも魔法を…?


「わ、私も地球とここを行ったり来たり出来るのですか!?」


『そうよ。貴女は適性(・・)が低いからこちらの負担が大きいけど、()からしたら誤差みたいなものね。それで一人は誰にするの?あまり時間がないわ』


何だか月の神様の話し方が大人びているけど…もしかして聖奈さんがいるから見栄を張っているとか?まさかな…

いや、ぼっちだったんだからあり得るな…


「ではこちらの金髪の女の子、ミランにお願いします。出来れば翻訳の能力も…」


ここぞとばかりにお願い事を増やすのは流石だな。


『もちろんよ。じゃあまたね』



「しますね」


ミラン達が動き出した。


「?どうしたのです?」


エリーになんて言うんだ?まぁ俺でもミランを選んだだろうけど。


「終わったよ。月の神様は力を与えてくれたよ」


「じゃあ私もデザート食べ放題です!?」


うん。俺が神様でもエリーには与えないかな。


「ごめんね。神様は一人にしか力を与えられないんだって。今回はミランちゃんに与えてもらったの」


「そうですか。わかりました。ミラン!デザートをよろしくです!」


「えっ…はい。エリーさんすみません」


「大丈夫です!私はデザートには興味ありますが、向こうでセーナさんに馬車馬の如く働かされないのでむしろラッキーです!」


「…うん。エリーちゃんの今晩のデザートはなしね」


「なんで!?」


うん。別に問題なかったな。


「それでミランが転移できるようになったんだろ?これからどうするか話し合いするにしても家にはいろーぜ」


それもそうだ。夜に屋根に登っているやつなんていないもんな。衛兵に通報される前に降りよう。






「えっ?国外の店舗に私がですか?」


話し合いどころか聖奈さんの計画を聞くだけだった。いつもの事か。


「そう。日本だと戸籍っていう身分を証明するものが買えないけど国外だと買えるところもあるの」


いや、国外もないだろ!しれっと嘘をつくな!そして犯罪に巻き込むな!


その後、説明を受けたミランは聖奈さんの作戦に乗る事にしたようだ。

まぁ、不法滞在も犯罪だからいっか。


「では、私は身分証を用意して新しい店舗で働く為の滞在する許可を得ると言う事ですね。セイさんの生まれ故郷には旅人の為の滞在許可で行けると。そういう事ですね?」


「うん。流石ミランちゃん。飲み込みが早くて助かるよ。後、ミランちゃんも言葉の壁はなくなってるからセイくんの魔導書も読めるようになってるよ」


まぁミランはどっからみても外国人(・・・)だからヨーロッパの方が見た目的には不審ではないよな。


「それで私も転移できるようになったよ!これでセイくんの負担も減らせるし、出来ることも増えたね!」


「そいつはすげーな」


「ライルくん。こっちでは出来ないよ…あくまで異世界間転移だから」


「そうか。まぁそれでもセイの自由時間が増えるのはいい事だな」


あのー。俺は元々何もしてませんが?貴方達と違って…


「うん!これでセイくんへの恩が少しでも返せたらいいね」


「そこは気にしないでくれ。仲間だからな」


ここはカッコいいことを言っておこう。言われた事しか出来ないけど。


これで聖奈さんの悪巧みが加速しそうだな。俺的には地球に憧れていたミランを連れて行くことが出来る様になったから嬉しいけど。




「えっ!?今からか?」


話し合いが終わるや否やミランが初めてわがままらしい事を言ってきた。


「はい…出来ると聞いたら我慢が…」


「わかった。だけど向こうに着いたら言う事を聞くのが条件だぞ?命の危険は少ないけど、それ以外の危険はこっちより多いからな」


「はい!もちろんです!」


ミランは年相応に興奮冷めやらぬテンションで返した。





「じゃあ行ってくる。ホントに行かないのか?」


俺は往生際悪く聖奈さんに聞いた。


「行かないよ。邪魔しちゃ悪いからね。それにセイくんも堂々としていないと職質されるよ?」


ミランの誘いに聖奈さんは来ないと言ってきた。俺は一人だと何かあった時に不安だから聖奈さんにも来てほしかったが叶わなかった。


転移室に入り、最終確認をする。


「いいか?」


「はい!」


「地球へ帰りたい」


その言葉を残して俺達は転移した。

月の神「きゃー!あの子以外とお話ししちゃった!変な風に思われなかったかな?もしかして『神様って大人!』って思われちゃったかな?

はぁ。独り言には慣れてるけど…またお話ししたいなぁ」


ぼっちの月の神の苦悩は続く。

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