132話 WSバースデー。
パァンッパァンッパァンッ
「「おめでとうございます!」」
「おめでとさん」
「誕生日おめでとう」
リゴルドーの家のリビングにて聖奈さんのサプライズ?バースデーパーティが開催された。
「えっ!?うそっ!ありがとう!」
そういや聖奈さんも演技下手くそだったな。
聖奈さんは大袈裟にメイド服を着た天使二人を抱きしめた。
何だが鼻息が荒いけど大丈夫か…?
「く、くるしいですぅ…」
エリーの気管が締まったようだ。
「ごめんね!二人が余りにも可愛くて…セイくん写真!」
パシャパシャ
「撮ってるよ。エリーの首が締まってるとこもな」
俺は仕事の出来る雑用係なんだ。なめるなよ?
「やっぱりこれを着たのは自殺行為でしたか…」
「ミラン。喜ばせるのはいいが程々にな…」
やはりミランの考えだったようだな。エリーは誕生日と聞いて真っ先にケーキの心配をするくらいだから何も考えていない。
「飯の用意も出来てるし食わないか?」
食いしん坊2号の提案に乗ることにした。
「凄いね!これは水都で、これはエトランゼかな?色んな所の料理を用意してくれたんだね!」
「そうだけど…よくエトランゼのがわかったな?食べた事少ないだろ?」
何で見ただけでわかるんだ?流石ウチの料理番だな。
「消去法だよ。これは王都で見たことあるし、見た事がないのがエトランゼかなって」
「なるほどな。確かに俺も酒なら当てられるかもな」
王都では蒸留酒が多かったし、水都では果実酒が多かったな。寒い国ではアルコール度数の高い酒が好まれるのは世の常か。
色んな国の現地料理が一度に楽しめるのは転移魔法が使える俺だけだな。そこは威張らせてもらおう!
数々の料理を楽しんだ後は、プレゼントタイムだ。
「俺からはこいつだ」
ライルは何やら丸い宝石?を渡していた。
「これは…まさか琥珀?凄いね!ありがとう!」
「ここにくる前に拾ったもんだから気にするな。何でも魔除けになるみたいだな」
こいつは思い出の品をミランの時からホイホイとあげているけどいいのか?
まぁそれだけ仲間に飢えていたんだろうな。
ライルは琥珀に革紐を通したモノをプレゼントした。
「次は私ですね!どうぞ!」
エリーは本を渡していた。あれって…
「魔導書?いいの?エリーちゃん?」
「すでに中身は頭の中に入れたので問題ないです!私の師匠から貰ったモノですが、私は弟子を取る事はないので貰ってください!」
なるほど、代々弟子に渡していく入門書みたいなものか。買えば高いだろうに…
「私からはこれです。時間があったので間に合いました」
ミランは…靴下と手袋だ。
「季節はこれから暑くなりますが、女性は指先とお腹を冷やしてはいけないと母から聞いて育ちました。
なので寝る時にでも使って下さい」
「これって…ミランちゃんの手縫い?」
「そうですが…素人の手縫いなどいらないですよね…」
「ううん!ありがとう!私の為に時間をたくさん使ってくれて!」
聖奈さん…ミランが死ぬから離してあげて…
聖奈さんは涙を流しながら喜んでいた。そりゃ嬉しいよな。
俺が渡す前に大分ハードルが上がったが、どうせ初めから期待はされてないから渡せる。
「俺からはこれだ。そろそろミランを離してやれ」
「うわっ!高級な…まさかパパ活?」
ちゃうわっ!
金の使い道がないからな。こういう時は大盤振る舞いだ。
「綺麗です」「可愛いデザインですね」
「これはシャ◯ルっていうブランド物のピアスだよ。多分だけどおやつ150日分くらいするよ」
うん。よくわからんけど合ってると思う。だけど値段当てはやめて…
「流石セイは金持ちだな!」
「ライルも金持ってるじゃん…」
こいつはいくら持ってるのか知らないけど、引っ越しの時に重い金貨袋を運ばされたから間違いなく金持ちだ。
「?いくらあるか知らねーからな」
「どうせなら算数の勉強だと思って数えとけよ」
「算盤貰ったらやってみるわ」
確かに…色々考えてるな…
というか、稼いだ金にも興味を持てないってどれだけ寂しい冒険者生活だったんだよ…
俺のパーティメンバーは元ぼっちばっかりだな…
次の誕生祝いはライルでその後はエリーだな。
「「おめでとうございます!」」
数日後、油断していた俺は見事にサプライズに引っかかってしまった。
「えっ?…誕生日か?」
「そうだよ!これでまた同い年だね!」
「言ってたっけ?」
あれ?誰にも伝えてなかったと思うんだけど…
「言ってなくても免許証のコピーとかの個人情報を持ってるんだから知ってるよぉ」
笑われてしまった…
確かに…
俺は聖奈さんの個人情報は知らないのに…
これまで通り、聖奈さんの手料理の次はプレゼントの時間だ。
「俺からはこいつだ」
ライルが渡して来たのは黄色い…
「パンツだ」
バシッ
「何渡してんだよ!?」
俺の誕生日はオチか何かか?!
「おいおい。俺の故郷では親しい友人には黄色の下着を贈る物なんだよ」
「そ、そうなのか…すまん…」
俺は渋々下着を拾った。
琥珀の時もそうだけど、ライルは占いとかを信じるタイプなのかもな。
冒険者は命懸けだからそういったものに拘る人が多いと聞いたけど、ライルも例に漏れずか。
「私はこれです!」
エリーから貰った物を広げた。エリーも布だ。白にレース…
「私の下着から作ったハンカチです!」
バシッ
「お前もかよっ!?」
「ふぇぇ。怒らないでくださぃ…田舎では布は貴重品なので母がいつも作ってくれていたので作れるものがこれしか思いつかなかったんですぅ…」
「セイくん。謝ってね?」
何だ?俺が悪いのか?俺が悪いんだろうな…
「悪かった。手作りの品は嬉しいよ。ただ布は買えただろ…」
「ホントです…」
今気付いたのかよ…
見た目少女の元下着で汗を拭うのは抵抗が…
まぁこれは宝物にしよう。ゲフンゲフンッ
「次は私です。つまらない物ですが一生懸命愛情を込めて作りました」
ミランから貰ったプレゼントは…ぬいぐるみだ。良かった初めてまともな物を貰えた。
「何でオーガなんだ?」
唯一の気になる点は全くデフォルメされていないオーガのぬいぐるみだと言う事だ。
「私とセイさんの二人きりでの初めての共同作業でしたから…」
いや、顔を赤くされても…それに作業呼ばわりはオーガさんに失礼では?
「ありがとう。大切にするよ」
それでもミランが一生懸命に考えて、作ってくれたものだから宝物にしよう。
「最後は私だね!私も下着でもあげたら喜ぶかと思ったけど、セイくんはむっつりだからその場では嫌がるもんね!はいっこれ」
「余計な言葉が多かったけどありがとう。何が入っているんだ?」
聖奈さんから渡されたのはキチンとラッピングされた包みだった。
「おっ!これはいいな!こっちでも使えるな!」
渡されたのは革製の財布だった。どこかのメーカーとかではなさそうだが高そうだ。明らかに地球産だな。
「こっちでは小銭入れの部分しか使えないから微妙だけどね。流石に革製品の手作りは出来ないけど、オーダーメイドだから一点物だよ!」
「ありがとう!素直に嬉しいよ。地球で大切に使わせてもらうな!」
良かった。初めて使えそうなもので。聖奈さんはこういう時にはボケないから助かるぜ…
その後はみんなからお酒を注いでもらって楽しく過ごした。
深夜
side聖奈
「それで?ミランちゃん?あの中身は?」
セイくんを酔わせて眠らせた後、久しぶりの女子会が開かれた。
「やっぱりセーナさんは誤魔化せませんか…」
「何の事です!?」
エリーちゃんは純粋だから気づかなかったようだね。
「ミランちゃんがただのぬいぐるみを渡すわけないでしょ?何かあるのよ」
「そ、そうなのです!?ミラン!白状するのです!」
「白状というほど大袈裟なものではありません。これは私の祖母から聞いたおまじないです」
ミランちゃんの説明は掻い摘んでこうだった。
好きな異性に自分の分身が入った贈り物をすると相手と結ばれるという、ありきたりなおまじない。
お婆さんは若かりし頃にお爺さんにお守りを渡した。
お守りの中身にはお婆さんの体毛(どこかは秘密だよ)がいれられていたと。
それで結ばれた祖父母の話を覚えていて、あのぬいぐるみの中に綿の代わりに自身の服や下着を切断した物と一緒に体毛を入れた。
「なんだ。そんな事ですか」
「エリーちゃん。そう馬鹿にした事ではないかもね?魔法や魔導具があるんだもん。もしかしたらホントに効果があるかも…」
「そ、そんな…」
こうして私は今日もエリーちゃんを揶揄う事に成功した。でもホントに効果があるかもしれないから私もしておこっと。
聖「いやー今日も暑いな…」
異世界でも夏は暑いもんだな。と聖はエトランゼの街を歩く。
幼女「キャッ」バタッ
聖「大丈夫か?」
幼女「ふぇーん。足擦りむいちゃった…」
聖「待ってろ。これで抑えてやるからな」
幼女母「すみません。洗ってお返ししま…」
聖 (ん?なんでハンカチ見て固まってるんだ?はっ!?)
幼女「ありがとう!」ガシッ
幼女母「は、離れなさい!その人は変態よっ!」バシッ
聖「ち、違うんだ!これには訳があって…」
町人「うわぁ。あの人女性モノの下着を持ち歩いているよ」
町人2「いくら親切な人でも変態わね…」
ハンカチ型パンツを投げつけられた聖は街中で変態紳士と呼ばれたとか呼ばれなかったとか…




