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129話 昇級祝いは連休と酒の解禁。




「えっ!?ゴーレムを倒した!?」


翌日、エトランゼの冒険者組合出張所にゴーレムの魔石を持参してきた。


「ああ。俺達はパーティで突破したんだけどこの場合は昇級はどうなるんだ?」


「すみません。ここではお話し出来ないので冒険者組合本部の方にこの手紙を持って行って下さい」


確かにここだと他の冒険者に話を聞かれてしまうな。

11階層から情報が一切流れていなかったことからもダンジョンの情報規制は厳しく管理されているのだろう。


俺達は一路冒険者組合本部へ。


「この手紙を渡せと言われた」


相変わらずガラガラの一階の受付に手紙を渡した。


「こちらは…」


受付嬢が手紙を確認し終えたら


「三階の個室にご案内します。こちらへ」


どうやら部屋へとご案内のようだ。俺は美人な受付嬢の後をついて行く。射殺すような複数の視線を背中に受けながら。


いや、受付嬢が美人なのは俺のせいではなくね?

しかも人員が豊富なのか、毎回違う人だし。仲良くなれないよね?




案内された部屋に入ると座って待てと言われた。

部屋の中は8畳程で窓はないがソファやテーブルは高級そうだ。

俺達はコの字型に並べられたソファに座って、何者かを待った。


コンコン


「失礼します」


ノックと共に入ってきたのは冒険者より執事が似合いそうな初老の男性だった。


「初めまして。冒険者組合本部本部長補佐をしていますベートリッジといいます。セイ殿のパーティ『三銃士』ですね?20階層のゴーレムを倒したと聞きましたが?」


「そうだ。これがその魔石だ。19階層の白道には驚いたよ」


何も情報をくれないから嫌味を一つ言っておいた。


「それはそれは。確かにあそこで脱落したと思われるパーティは数多くいましたからね。もちろんダンジョン内の事は把握出来ていませんから確定ではないですが」


「どうしてここまで情報を規制しているんだ?」


「お考えの通りかと思いますが、Aランクに簡単にならせない為と、自力で20階層を突破しないと次からは手詰まるからですね」


「手詰まる?」


まだ見ぬ21階層はどうなっているんだ?


「はい。21階層からはご覧になったように洞窟です。中は迷路のように分岐があり、落とし穴などの罠が多数あります。しかも情報がない状態での攻略になるのでそこまで情報ありでしかたどり着けない者達ではすぐに死んでしまいます。ですので冒険者を鍛える為にも情報は規制しているのです。

ちなみに最高到達点は冒険王が残した42階層になりますが、今の最高到達点は27階層止まりです。

鍛えてなおこの有様なのでご理解頂けるかと」


なるほどな。Bランクになれるポテンシャルを持っている者は少ない。だから危機管理をして無駄に死なずに堅実に攻略して行くパーティ、冒険者を求めているということか。

それでも油断したり調子に乗ったりするような奴は自然とダンジョンが淘汰していくと。そんな奴はどうせ21階層からすぐに死んでしまう。


あれ?これって俺達の事じゃね?


「ランクアップには魔石の納品と口止めが条件ですがどうされますか?」


「構わない。一つの魔石でみんなランクアップ出来るのか?」


「はい。そこに到達出来たものにAランクを与えるのは冒険王の意向でもありますから」


なるほど。元々Aランクは本物(21階層)のダンジョンに潜れる資格のようなものか。


「一ついいですか?」


「はい。セーナ殿ですね。どうぞ」


「パーティの名称の変更は出来ますか?」


「はい。どちらの組合でも出来ますよ」


「ではこの後このお部屋をお借りしてもいいですか?」


聖奈さんのお願いが通り、パーティ会議が開かれた。



「三銃士はもう無理だね。四人どころか五人だもん」


「何か候補はあるのか?」


「ペンタゴンとかは?」


五角形かよ…横文字だと良いけど、翻訳次第ではクソダサで伝わるぞ?却下だ。


「エリーと愉快な仲間たちはどうです?」


「愉快なのはエリーだから却下だ」


何を驚いた顔をしているんだよ。


「セイとミランの…」


「却下だ。名前は入れない」


いや…そんなチワワみたいな眼差しを向けてもダメだぞ?


「そう言うセイくんは何か案があるの?」


「そうだな…。ドラ○ンクエスト略してド○クエ」


「却下ね」


くそっ!やっぱり俺達に名前決めなんて出来ないんだ!


「アルカナの探求者。とかはどうだ?」


えっ…なんか中2っぽい…けど、一番マシ。


「アルカナ…神秘とかのニュアンスだよね?良いんじゃないかな?戦闘より旅が目的だし」


「何だかカッコいい響きなのでそれにしましょう!」


「セイさんが良ければ」


何だか決まりそうだけど。ミラン…自己を持て。


「良いんじゃないか?どちらにしても使う機会がないし」


そう。これまでに三銃士を名乗った事があったかどうかもわからんくらいのモノだ。ホントはどーでも良い。


「じゃあ決まりだね!手続きしたら帰ろうか!」


聖奈さんが締めて、退室の流れとなった。

受付でランクアップしたカードを受け取り、パーティ名も変更した後、リゴルドーへと帰った。





「それじゃあ行けたの?」


夕食後、いつもの報告会にてダンジョン20階層に転移出来たことを報告した。


「ああ。帰って来れたから出来て当然だけど、心配でな」


「そうだよね。あの不思議空間を越えられるかはやってみないとね」


これで今まで通り、セーブしたところからダンジョン攻略が出来るみたいな感じにはなったな。

ただゲームとは違いリセットは出来ないけど。


「今後はどうする?」


「俺はAランクになれたからもう目標は達成した。だが仲間だからどこまでも一緒に行くぞ」


良かった。ライルに断られたらまた男一人になっちゃう。


「罠をどうするかよね…金属探知機で調べるわけにもいかないし」


「魔力波なら使えるけどな」


一度試してみるか?いや、それで失敗して誰か死んだら悔やんでも悔やみきれんぞ?


「もう少し様子見かな?それまではみんな好きに過ごさない?

もちろんセイくんは朝と夕方に転移でみんなを送らなくちゃいけないけど」


「それくらいはいいけど、みんなはどうだ?」


全会一致。

みんな休みたかったのね…


「じゃあそういう事で!再開がいつになるかわかんないからデザートとお酒は解禁しちゃおっか?」


「はい!間違いないです!流石セーナさんです!」


やったぜ!自分が言い出しっぺだったから誰か言ってくれないかな?って思ってたんだ!


「セイは明日からはどうすんだ?」


「俺か?とりあえずまだ魔法が上達するかもしれないからダンジョンの低階層で練習かな。金にはならんけど」


ゴブリンやオークをわざわざ倒しに行くのはなぁ。


「そうか…俺はまた水都で勉強しててもいいか?」


「いや、それは自由にしてくれ。むしろ勉強がしたいって思えるライルはすげぇよ」


「セイくんは苦手じゃないけど嫌いだもんね」


いえ、苦手です。そして大嫌いです。


「私は今夜から2日位地球に帰るから送ってね」


「会社か?悪いな。後はミラン達だがどうする?」


「私は久しぶりに父と母と過ごします。なので王都に送ってください」


「では、私はセイさんと…」


「ミランちゃん?ミランちゃんも実家で過ごすよね?」


「…はい」


なんか最後に見えない圧力を感じたが、気のせいだろう。




翌日俺は一人きりでダンジョンにいた。


「うーん。環境破壊し放題とはいえ、ずっとしてるとマンネリ化するな。やっぱり次の階層に行きたいなぁ」


まぁ行くなら一人で行かないといけないけど…誰か罠解除でも覚えてくれないかな。


「ん?何かこっちに向かってきてる?」


普通のオークは来ないからまたボスオークか?

人だと面倒だから隠れておくか。


俺は近くの木に登り身を隠す事にした。





「この辺りだ。必ず見つけ出すんだ!」


誰この人達?まさか俺のファン?なわけ。


「それにしてもすげーな。魔法使いっていうのはみんなこんな事が出来るのか?」


「まさか。こんな事が出来る奴ばかりなら、今頃世界は魔法使いを崇めるルールばかりになってるだろうよ。そんな事より探せ!他のパーティに取られるぞ」


どうやらこの人達は魔法使いを仲間にしたくてここに探しに来たみたいだな。

そう言えば俺的には一月以上前だけど、ここで訓練していたのは世間ではつい先日の事か。

じゃあやっぱり俺を探してるんだな。


残念ながら俺は男5人のパーティに入る気はない。

女5人のパーティなら三日三晩悩んだ挙句、涙を流しながら断る自信はあるけどな!


女1「ここに凄腕の魔法使いがいるらしいよ?」


聖 (うおっ!ホントに美女5人のパーティがキタコレ!?)


女2「でも何で態々ダンジョン内で訓練してるんだろうね?」


女3「どうせ魔法使いなんて陰気な奴でしょ?キモイキモイ」


女4「しかもソロなんだよね?凄腕なのに変だよね」


女5「どうせパーティの女性に魔法をたてに関係を迫って追放されたとかでしょ?みんなも気をつけてよ?」


〜〜〜〜〜〜〜〜


ミラン「セイさんはどうしたのでしょうか?」


エリー「何だかモノクロに見えます。燃え尽きているです」


聖奈「そっとしておきましょ?」


聖「世の中ってなんでこんなに残酷なんだろうね」


ライル「よし。病院に連れてくぞ」


聖奈、エリー、ミラン「うん」

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