125話 生まれてきてくれた事を感謝する時。
いや、慣れたらダメなんだけどな。でもこっちでは転移すれば簡単に密入国出来ちゃうから倫理観が…
まぁ俺も地球人ではなく異世界人になりつつあるって事なんだろうな。
「では、聖奈さんはもう少し向こうに留まるという事ですね?」
「そうだな。俺はその間にダンジョンで修行してくるよ」
俺達は無事に日本へ帰り、その夜に聖奈さんを残して転移した。聖奈さんは地球での仕事を優先してくれたんだ。
ミランにそう伝えると
「私もお供します!」
「ありがとう。でも、危険だから…」
「それは前に!」
「違う…俺の魔法が暴発すればどうなるかわからんからだ。俺は地上では環境破壊になるから魔法の訓練はしなかった。だがダンジョンなら気にせず撃てるんだけど仲間が近くにいたら怖くて全力が出せないからだ。すまんな」
これはエリーから教えてもらった事だからエリーはもちろん付いてこない。
俺は魔法だけで二層と三層を無双するんだ!
ソロだと厨二病を爆発させられる!
悪いなミラン!次のダンジョンは一人用なんだ!
「それでしたらお邪魔ですね。わかりました。気をつけて下さいね」
うん。もうちょい粘ってくれてもいいんだよ?俺は構ってちゃんだから。
翌日、ライルにも帰還を報せてからエトランゼのダンジョンの三階層に転移した。
二階層だと狭い為、他の冒険者を巻き込みかねんからな。もちろん魔力波は欠かさないけど。
「おっ!反応はあっちだな。魔法の練習だから魔物はどうでもいいけど、人が通らないところに行かないとな」
現在は2階層に程近いところだからまずは3階層の真ん中を目指す事にした。
「5回遭遇したけどまだ3体以上の群れには会わなかったな」
ボスのような存在がいるって話だったけどこの様子だとレアな存在のようだな。
「この辺りでいいか。『魔力波』うん。危険は無さそうだな」
俺はあの時にしたようにアイスブロックを遥か上空を意識して発動させた。
「大分調整出来る様になって来たな…なんかアレだな。自転車に乗るみたいな感じで、出来なかった時は全く出来る気がしなかったけど、出来るようになれば何故出来なかったのかわかんない感覚だな…」
自分で言ってて、何言ってるのかわからなくなってきた…
「多分身体強化魔法で魔力操作が出来る様になってきたお陰だな。特に5倍の身体強化が出来る様になってからは自分の使っている魔力がよりわかるようになったし」
裏を返せば微量の魔力操作が苦手って事だな…
「発動高度もそうだけど、作り出した氷の硬さ…硬度っていうのかな?それの調整も出来る気がする。密度が高いとその分重たいから聖奈さんが言ってた質量攻撃に有効だろうしな」
俺は昼過ぎにはきっかけを掴めていた。
「さて、それじゃあそろそろ帰って商品の納品を済ませてしまうか」
俺は冒険と荷運びの二足の草鞋を履いているからな!こう見えて忙しいんだ!
夜は地球に行き荷物と聖奈さんを連れて帰った。
俺にとっては凄く大切な2日後に向けてしっかり準備をしないとな!
翌日も昼間はダンジョンで過ごして遂に当日を迎えた。
「セイくん。人員輸送は任せたよ」
「人員輸送って…まぁ間違いじゃないが」
今日はリゴルドーではなく、水都の屋敷にみんなを集めた。
準備が終わった後、本日の主役であるミランと一緒に水都の屋敷前に転移した。
「あれ?今日は外ですか?」
普段は屋敷の中に転移していたからミランが疑問に思ったようだ。
「ん?ニアミスかな?」
んなわけあるかと自分でも思ったが上手い言い訳が思い浮かばず、これで押し通した。
俺はミランの後ろについて、ミランに玄関扉を開けさせた。
パンッパンッパンッパンッ
『誕生日おめでとう!!』
「えっ!?」
扉の向こうにはパーティメンバーとミラン家族が勢揃いだ。
「ミラン。14歳の誕生日おめでとう」
俺はミランの頭を後ろからポンポンしながら祝いの言葉をかけた。
「あ、ありがとうございます?」
ミランはまだ状況を掴めていないようだ。
「こっちでは誕生日じゃなくて誕生月なんだってな。ホントは5月に入ってからすぐに祝おうと思っていたんだが、バタバタして遅くなってしまった」
王国に誕生日なんて正確なものはないのだ。ミランは5月生まれ。それがわかっていれば事足りるみたいだ。
「ミランちゃん!お誕生日おめでとう!さっ!リビングでパーティするから入って入って!」
「はい!ありがとうございます!お父さんもお母さんも忙しいのにありがとう!」
バーンさんとか泣きそうになってるぞ…
人の事は言えんが、流石に誕生日では俺は泣かないな。
パーティでの食事も終わり、ミランの家族を送った後、プレゼントタイムになった。
この国の一般人は毎年プレゼントを渡す習慣はない。成人の時くらいだ。
しかし俺達にはそんなものは関係ない!
普段遠慮するミランに物をあげられる数少ないチャンスの為、ここぞとばかりに用意した。
「はい!ミランちゃん!これプレゼント!」
聖奈さんは可愛くラッピングされた包みを7つ渡している。
恐らくプレゼントと言う名の聖奈さんの趣味だ!
「ありがとうございます…まさか全て服ですか?」
「そうだよ!可愛い服を集めたから着てね!」
「ありがとうございます。着る機会があるでしょうか…?」チラッ
これはお出かけしたいということだな。もちろんおめかししたミランと出かける事に俺は異論無いぞ。バーンさんが睨んできているのを幻視した。
「おい。やるよ」
ライルはぶっきらぼうに渡すが、何を渡すか悩んでいたのを知っているぞ!
「これは…」
「俺が昔使っていた短剣だ。今は重さもサイズも合わなくなったからな。ミランには合うだろうよ」
えっ!?なにそのカッコいいプレゼント…
思い出の品なんてイケメンにしか許されないやつだぞ…
「ありがとうございます!大切に使わせて貰いますね」
ライルは照れているようでそっぽを向いている。
「次は私です!ミランにはこれをあげます!」
エリーは何か箱のような物を渡した。何が入っているんだ?
「これは何が入っているのですか?」
「何も入ってないです。その箱がプレゼントです!」
まさか…
「それは本人にしか開けることの出来ない魔法の箱です!セーナさんの悪口を書いた日記とかを入れるのに使うですっ!」
「…エリーちゃん?どうやらケーキがいらないみたいだね?」
「なぜです!?」
エリー。アホの子や…
「ありがとうございます。大切な物をしまいますね」
「ん?ミランの大切な物ってなんだ?」
まさかその短剣じゃないよな?
そもそも入らんか…
「セイさんがくれたアクセサリーです」
ん?そんなのあげたっけ?いやあげた気がするな…
「そ、そうか。大切にしてくれてありがとうな」
「それよりセイくんのプレゼントは?まさか俺自身だ!とか言わないよね?」
誰だよそいつ…俺が言わないやつやん。
「ちゃんとあるぞ。これだ」
俺が渡したのは髪飾りだ。
「可愛いです…ありがとうございます…」
「うわぁ。フェ◯ガモのバレッタだ…奮発したね!」
「フェ◯ガモですか?鳥でしょうか?」
「違うよ。私達のいた世界の高級ブランドの名前だよ」
ミランの金髪に映える黒の髪飾りだ。流石聖奈さん。すぐにバレたな。バレッタだけに…
「そんなに高級品なのです?」
エリーはこういう時ばかり食いつくな。
「そうだよ。プリンアラモード100個分くらいかな?」
うん。大体あってるから。値段を当てるのはやめて?
「セイさん!私の誕生日にはバレッタではなくデザートで下さい!」
「なんでだよ…そもそもエリーの誕生日はいつなんだ?俺と聖奈は来月だが」
「ひどいです…知らないなんて…」
いや、知らないものは知らんがな。
「悪いな。それでいつなんだ?」
「8月です!プレゼントはお忘れなくです!」
「ちなみに俺は7月だからな」
ライルもさり気なくいうなよ…まぁ祝うけど。
「ライルは何か欲しいものがあるのか?」
長くBランクをしているから金だけは持ってそうなんだよな。
「あるぞ。店で使っているソロバンって奴が欲しい」
「算盤か。確かにあれは俺が持ち込んだ物だから売ってないな。わかった。楽しみにしていてくれ」
「えっ!?私のデザートは!?」
それは流石にやれんわ…
まぁ何かはあげるから勘弁してくれ。
それにしてもライルが算盤とは…この世界では学ぶ機会が少ないからな。ライルは元々勉強家だったって事だな。
しかし、冒険者は辞めさせないぞ!うちはブラック企業だからな!
最後は色々あったが、無事にミランの14歳を祝えた。
次は日にち的に俺だけど、もう祝われて喜ぶ歳じゃないからな。
聖奈さんのは祝わないと後が怖いから忘れないようにしよう…日にちまでは知らんけど…
ちなみにミランにあげた初めてのプレゼントは金のブレスレットだった。そういえば二人で出かける時には必ず着けてくれていたな。
聖「な、なんだ!?」
聖奈「わかんないよぉ…聖くんどうにかしてぇ!」
聖「どうにかって…そういや携帯が…」
俺は見たくないが明かりをつけた。
聖「犬…?何で?」
聖奈「わあ!可愛い!ポメラニアンかな?」
箱の中の住人はどうやら俺たちだけじゃなかったようだ。
ポメラニアンのポメ子はその後、武器の密売人のボスが物凄く気に入り、譲った。
聖奈「ハナコは大切にされそうだね」
聖「そうだな。デレデレだったからな…あの顔で…」(何だよハナコって。ポメラニアンなんだからポメ子だろ)
聖奈「私も欲しいな…」
聖「会社で面倒みたら飼えるんじゃないか?みんなの同意がいるけど」
聖奈「子供が…」
聖 (うん。無視しよう。だいたい俺達に子供が出来たら間違いなく名前で虐められるからダメだな)
長いっ!後書きが長い!




