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124話 慣れた密入国。






「ここは何処だ?」


穴から出てきた俺の視線の先は砂漠だった。


「ここは・・・・18階層の入り口の上です!」


「えっ?あっホントだ。洞窟の上か」


俺達は18階層の入り口の洞窟の上にいた。みんなが出てきたので転移を試したところ、普通に発動してリゴルドーの家に帰れた。





「それであれは何だったのです?」


エリーは俺が使ったアイスブロックが気になるようだ。

だが…


「俺にもわからん。いつも発動場所はある程度変えられるんだけど、あそこまで高い位置に発動したのも初めてだし出来ると思ってしたわけじゃないからな」


「ではサイズは?」


そうなんだよな。明らかに大きかったもんな。


「それもわからん。夢中で気持ちを込めて放ったからかな?とにかくあの竜の上に発現させようと必死だった」


「そうですか…やはり魔導の道は奥が深いです」


聖奈さん曰く、巨大な質量を高高度から落とすとかなりのエネルギーが発生するとのこと。相手が竜であってもオーバーキルだったようだ。

まぁ自爆したからもう二度と使いたくないけど…


「ですが、それをモノに出来たら次の竜戦は楽勝です!」


「そうだな。かなり離れた位置から撃てるならやってもいいな」


「撃てるなら?何言ってるんです?撃てるようになるまで修行です!」


「えっ…」


そこまで!?


「ダメだよ」


「何でです?」


聖奈さん。今度こそ頼みます!


「まずは地球で武器の仕入れをしてからだよ。それからセイくんには修行してもらおうね!」


バカァ…


「はい!」


まぁ、安全に突破出来るならいいけどさ…






「じゃあ行ってくる。ちゃんと歯磨きしてから寝るんだぞ?」


今日から一週間の予定で地球へと帰る。その為、ミラン達にはリゴルドーにいてもらう事にした。

ライルは王都の店のボディガード兼店員を買って出てくれた。王都には家がない為、宿を10日程先払いしておいた。


「はい。お気をつけて」


「お土産待って…そうでした…食べられないのです…」


うん。エリーは嘘でも心配してくれ。


「はい。これは今日の分のおやつだよ。また夜に帰れたら次の日のデザートを買ってくるから楽しみにね!」


「い、い、いい、い、いいのです!?」


エリー。きょどりすぎだぞ…


「うん。ダンジョンは中断だからこの取り決めも中断だね!」


「「やったぁ!!」」


って事は…俺も酒を飲める?


「やったぜ!!」


あれ?何だか聖奈さんが母親に思えてきた…

パパは誰?






「今日はどうするんだ?」


マンションに戻った俺は聖奈さんに説明を求めた。


「今日は会社にある輸出製品を全てリゴルドーの家に運んで欲しいの。リゴルドーが一杯になれば水都だね」


「ああ。異世界には行けるけど会社には行けなくなるからな」


普段転移魔法でどこにでも行ける分、地球が不便に感じる。

地球でも魔法が使えたら密輸し放題なのにな。ダメ犯罪!


「じゃあ行こっか?」


「ああ」


聖奈さんに促されて会社へと向かった。


お互いが今日出来る事を終えると帰路に就いた。車の中で聖奈さんが予定を口にした。


「明日の朝早い時間の飛行機だから空港の近くのホテルを取ってるよ。だからもう家には帰らないからね」


「えっ?何も持ってきてないんだけど…」


「後ろに積んであるから大丈夫だよ」


うん。完全にママだな。







「お土産だぞ!」


今日は店の物じゃない。武器の密売をしているところは街から車で8時間も離れている為、これは現地で聖奈さんが作ったケーキだ。


「うわぁあー!セーナさんのゲーギだぁ…」


エリー…ケーキで泣くのはやめよ?

何だか俺達が酷い親みたいじゃん?


「今回も街が近くにないところなのですか?」もぐもぐ


「そうだな。元々ないかあったけど無くなったのかはわからんがな」


そもそも紛争地帯がある国には厳しい入国制限がかかっている。俺達は近くの比較的治安がいい国に入国してからブローカーを介して武器の闇取引現場がある国まで連れて行ってもらった。


「危険ではないですか?」


「残念な事に世界的に見たら俺達は悪の片棒を担いでいる事になる。武器商人や密入国ブローカー、現地のマフィアなどに金を落としているからな。

そう言った意味では命の危険は低くなっているが、向こうの治安を維持している組織に捕まる可能性はあるな。そういった危険のほうが高い」


死ぬより捕まる方がマシだからな。それに月が出る時間まで逃げれば逃げ切れるし。

まぁ向こうの治安部隊は普通に撃ってくるから死ぬかもしれんが…


「そうですか。どちらにしても気をつけて下さいね」


「ああ」


俺は地球へと帰った。







sideミラン

「セイさん達がいないです。ミランは何をするのです?」


「私は一度父の工房に行ってきます。エリーさんは魔法の訓練ですか?」


セイさん達が元の世界に戻った翌日、私達はお互いの予定を話し合いました。


「私はお姉さんなのでミランに付き合うのです!」


「そうですか。では転移で行きますか?」


エリーさんは近距離であれば1人くらいなら一緒に転移が出来ます。以前セイさん達がいない時に散々試したので問題はありません。


「任せるのです!」


私はエリーさんに掴まり、その時を待ちます。

多分エリーさんは一人でいるのが寂しかったのでしょう。わかります。

あの人達と過ごしていると一人がとても不安になります。





「お父さん!今大丈夫?」


工房はいつも騒音に支配されています。いつも通り大声で父を呼ぶと返事がありました。


「ミランか!?よく来たな!入りなさい」


「うん。エリーさんもどうぞ」


父が満面の笑みで迎えてくれます。

前は少しそれが嫌でしたが、離れて暮らすうちにそれが有難いことだと感じるようになりました。反抗期だったのでしょうか?


「生産のペースはどう?大変な事はない?」


「おお!任せろ!何も問題ないな!今は弟子がやっと使えるようになってきたから雑用はしなくて良くなったし楽なもんだ!」


やはり騒音の中で過ごしているせいか、父の声はうるさいです。


「弟子とは?」


「ああ。ミランも知っているんじゃないか?おーい!マック!こっちこい!」


マック?まさか…


「げっ!?ミランじゃねーか!」


マックは別の住宅エリアの男の子で同い年です。あまり関わりはありませんでしたが、何故か避けられています。どーでもいいですが。


「げっ。とはなんだ!俺の可愛い娘に対して!」


ゴンッ!


「いてぇっ!?親方!?酷いですよ!」


「うるせえ!ミランにちょっかい出すんじゃねーぞ!?」


「…出しませんよ」


「ならいい。ミランは知ってるようだがエリーちゃんに紹介しよう。うちの工房で小遣い稼ぎしているマックだ。ミランと同い年だ。

セイは知っているから伝えなくていいがよろしくしてやってくれ。ほら挨拶しな」


「マックだ。よろしくな」


ゴンッ!


「イッテェ…何で…」


「エリーちゃんは18歳だぞ!何調子こいた挨拶してるんだ!」


「お父さんいいです。慣れてますから」


エリーさんは私の妹に間違えられるくらいです。

私が老けているわけではないと思いたいです…




side聖

「買った武器は全部運べたな。後は無事に出国出来るか、か?」


リゴルドーから地球に戻ってきた俺はブローカーが用意してくれた空き家で聖奈さんに問いかけた。


「そうだね。でもいくらお金持ちになれてもこれは他の人に任せられないのが痛いよね」


「まぁ立派な犯罪だからな。しかも命懸けの」


立派っていうのか?わからん。


「でも良く思いついたね!税金を引かれた現金で買わずに、リゴルドーに置いておいた金塊で武器を買うなんて」


「いや、たまたまだ。態々税金を払った後の現金より、現金に変える手間と税金が引かれる前の金塊ならこっちからしたら割安になるなって」


俺のというよりドブトリーのお陰だな!あれ?ドブトリーだったっけ?コブトリー?まぁいいや。


「取引相手も『次もまた金塊で取引してくれるならサービスする』って言ってたから大正解だねっ!」


世界的な金の高騰と、紙幣の信用度の下落とかが原因なんだろうな。現金より嵩張らないし、他にも色々理由がありそうだなぁ。興味ないけど。

俺達にプラスならなんでもいいや。


「後は帰るだけだけど、明日の朝からまた箱の中だね!不束者ですがよろしくお願いします!」


「こっちこそ。あっ。向こうに戻ってからミラン達に変な事を吹き込むなよ」


「…もちろんだよ」


何の間だよ。


俺達はこの国に入国する際、荷物に紛れて入ってきた。

この国は只今絶賛内戦中の為、不正な手段を使っても通常の入国は出来なかった。

この国の政府が外の国の介入に敏感になっている為だ。

その為、善意の支援物資の中に紛れて国境を突破する事になり、仕方なく木箱の中で5時間ほど過ごさなくてはならなかった。

つまり帰りも…


聖奈「聖くん。触ってるよ」


聖「わ、悪い。こう暗くちゃ見えなくてな」


俺と聖奈さんは密入国の為に木箱の中だ。明かり取りと換気用の穴は中から開けられるが、どうやらコンテナか何かの中らしく真っ暗だ。


聖奈「聖くん…そんなに触りたいなら男らしくちゃんと触ってよ」


聖「?いや動いてないぞ?」


聖奈&聖「…えっ?」


???「はっはっはっ」


聖奈「イヤー!!何かいる!?」



遂に後書きも二本立て…

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