123話 竜退治。作戦?そんなのあったっけ?
「何で止めるんですか?!セイさんはライルさんと2人で行く気ですよ!?」
ミランが涙目で聖奈さんに抗議をした。
「行かせようよ」
「ですが…」
「私達は何もしないわけじゃないよ?セイくんが死んだら私はこの銃で死んでやるからセイくんも死ねないと思うし、何よりも2人が戦うなら竜も降りてくると思うよ。そうすれば私達の出番でしょ?」
竜が降りてくる?
「なぜ、降りてくると?」
「簡単だよ。ここを突破した人達がいるんだよ?多分大勢ね。みんながセイくんみたいに何でも出来るわけじゃないなら普通に竜を倒したと言うこと」
「それは…わかりました。援護できる距離に離れましょう」
えっ?わかんないんだけど…
「なるほどな。確かに他の奴が倒せたなら、最後は近接戦か。もしくは魔法や弓が届く距離か」
なんで?わかんないの俺だけ?
「竜の魔法にセイさん達がやられなければ降りてくるという事です?」
「そうだよ!エリーちゃん」
あっ!そう言う事か!
「ようは近接戦じゃないと攻撃が当たらない、もしくは倒せないと思わせればいいんだな?」
「うん!そしたらバレないように近づいて、エリーちゃんは魔法で、私はRPGで攻撃するよ!」
RPGの弾頭の残りは対戦車用の貫通力を高めたモノが2発か。広範囲に炸裂するものは蟻さんで使い切ったからな。
これが終われば買い足ししないと。
「聖奈の腕だとどれくらいの距離から当てられる?」
「RPGは風向きが関係しているから何とも言えないね。でもあの竜のサイズなら300mくらいの距離なら当てられると思うよ」
300か…かなり近いが、どうせ倒せなきゃ殺されるからな。
「わかった。とりあえずは離れていてくれ。ここで待機だな」
「わかったよ」「「はい」」
「よっしゃ!いくか!」
ライルの掛け声で俺達は穴に近づいた。
これで竜討伐には空を飛べなきゃダメとかだと俺達は詰むけど、そんな事いってたら何も出来ないし今は出来ることをしよう。
「やっぱり降りてきたぜ!って何してる?」
俺たちが穴に近づいた為、竜が降りてきているのを知らせてきたが返事は出来ない。なぜなら
『アイスブロック』
詠唱をしていたからだ。
「頼む!竜の真上に出来てくれ!」
竜は穴に向かい降りてきている。穴と言えど竜が入れるサイズじゃない。マンホールより少し大きいくらいのサイズだと思う。
竜が地上から50m付近まで降りてくるとその威容が目に入った。
「まるでテレビから出てきた見た目だな…」
首が長く、体表は鱗のようなモノで覆われていて胴体から一対の翼が生えていて手足がある。ちゃんと尻尾も…俺が少し感動していると
「口を開けた!魔法が来るぞ!」
くそっ!俺の魔法はどうした!?
目線を上げると何かが落ちてきている。
「逃げろ!!」
ライルの言葉に反応してその場から離脱した。
直後、俺達のいた所に砂を固めた槍のようなものが刺さった。
「くそっ!はやいな!」
俺は余所見していたとはいえ、殆ど視認出来なかったぞ!
「何だありゃ…?」
ライルが呆けた声を出した。釣られてみると竜の真上にバカでかい氷の塊が…
ドガーーーンッ!!
竜諸共地面に落ちてきた。そして信じられないほどの衝撃波が俺達を襲った。
「うおおおっ!?」
「ぐっ!!」
砂煙で目が開けられない!
「「うわぁぁ!」」
俺とライルは吹き飛ばされた。
「大丈夫?」
目を開けると聖奈さんの顔が飛び込んできた。
「死ぬかと思った…」
「ライルさんも無事です!」
遠くからエリーの声が聞こえた。
「何があったの?」
聖奈さんに聞かれたから事の顛末を話した。すると
「質量兵器だね。これからはアイスブロックじゃなくて神の杖って名前に変えないとね!」
また訳のわからんことを…
ツッコミたかったが竜が生き返る(?)前に急いで穴へと向かった。
「よし、通れるな!」
アイスブロックで穴が塞がってはいなかった。どうやら落下の衝撃で吹き飛んだみたいだ。
「竜の魔石が見当たらないのは残念だな」
「ライルさん。命あっての物種ですから」
ミラン。そんな言葉をどこで覚えた?異世界では普通なのか?
「何はともあれ、19階層に行こう?」
「そうだな。なんかブラックホールみたいになってるけど、飛び込めばいいのか?」
目の前の穴は真っ暗で何も見えない。竜を倒してからはそのサイズが直径5mくらいに広がっている。
「なんか怖いからザイルでって思うけど、括るものもないんだよね」
「まぁこれも冒険だな。飛び込むぞ!」
「よっしゃ行くか!」
ライルが躊躇なく、元気に飛び込んだ。俺も後に続く。
「どこだ?…ってダンジョンか」
正面には何も無い暗闇が続いている。しかし足元には白い道?が続いていた。
後ろを振り返ると白い道はなかった。代わりに暗闇が視界一杯に広がる。
落ちて来たはずなのに、気付いたら立っているなんてな。
「進もうぜ」
横にいたライルが声を上げた。
「みんながまだだぞ」
「セイは後ろの穴から押し出されるように現れたからな。次が来たら邪魔になるぞ」
そうなのか…
この白道は幅が一メートルほどしか無いから邪魔になるな。
少し前に進んでから話す。
「この道から落ちたらどうなると思う?」
「さぁな。良くてさっきの後ろの穴からまた出てくる。他は…だいたい死ぬんじゃねーか?」
なるほど。そんなもんか。…こぇぇぇ!!
「何ここ!?変なとこだね!」
「後の邪魔になるからこっち来いよ」
次は聖奈さんか。てっきり最後かと思ったけど、これはエリーがビビってるとみたな!
「すごい所だね!真っ暗なのに道だけ明るいなんてね。道を外したら二度と出られなくなりそうだね」
「やっぱりそう思うか。それよりエリーがビビったのか?」
「わかっちゃう?そうだよ。エリーちゃんが怖がったから私がお手本として先に飛び込んだの。ミランちゃんが最後かな?」
俺もそう思ったが、答えは違った。
「ふえぇ!!?ここはどこです!?」
「大丈夫ですよ。ほら。セイさんがいますよ」
手を繋いで一緒に飛び込んだようだ。それよりもミランがこういう時はいつも俺の名前しか言わないから聖奈さんが泣きそうになってるぞ?面倒だから次は聖奈さんの名前を呼んであげなさい。
「道を踏み外さないようにこっちに来てくれ」
そこでみんなの予想を話し合ったり、弾丸を投げ落としてみたりした。
「やっぱりここはこの道しか通ってはいけないみたいだな。とりあえず先は長そうだから一旦帰ろう」
みんなの同意を得て、転移魔法を発動させる。
『テレポート』
しーーーん。
おいっ!初めて魔法を使おうとして失敗した時以来の恥ずかしさだぞ!
「出来ないのですか?」
「やっぱりこの空間はおかしいんだね」
「ま、魔法が発動出来ません!」
良かった。俺が恥ずかしい奴じゃなくて。
「だがどうする?このまま向かうのか?」
ライルの質問に俺は自信を持って答えた。
「帰る。食糧がないからな。こういうところはだいたいめちゃくちゃ長いって相場が決まっているからな」
「そうそう!多分蛇の道みたいなもんだよね!」
そう。ドラゴ○ボールで見た奴だな!落ちたら地獄行きかな?
「よくわからんが、セイが言うなら帰るか」
「どうやってです?」
「後ろの穴を通るのですよね?」
「そうだ。逆に行けば出られるだろう」
「でも出たら竜がいるよね?」
「どのみち、先に進んでも転移できるかわからんなら飢え死にしない道を選びたい」
作戦なんかない!思いつきだ!
「まっ!最悪俺とセイで時間稼ぐからその間にお前らは離れろよ」
「それしかなさそうだね」
待ってくれ。そのセリフは俺が言いたかった。
俺達は覚悟を決めて穴を潜った。
聖奈「えっ?アイスブロックってそんなに高くから落とせたの?」
聖「まぁ偶々だな。今までできた事ないし」
エリー「かき氷の元がないです!セイさん!次からは残るように落とすです!」
ミラン「シロップだけでは流石の私達でも無理ですね」
聖 (無理って知ってるって事は、試したな?)




