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116話 挫折。その先に。





共闘で快勝した俺達は15階層に来ていた。


「やはり岩場か。足元が気になって戦いづらいんだよな」


「そうだな。敵を見たら驚くぞ」


「どんな魔物なんだ?」


「今回は教えない。見たほうが理解が早いからな」


なんじゃそりゃ?説明しづらいのか?

俺達は岩場を進む。だがおかしい。魔力波に何も引っかからない。


「なぁ。気配が掴めないんだが。どうする?」


「ここは一体しかいないからな。仕方ない」


なに?!そんな階層が有ったのか…

しかも、その一体はライルじゃ倒せないと…一体どんな敵なんだ?


「見えたぞ」


ライルの視線を追うが何も見えない。


「見えないぞ?」


「よく見ろ。あれは岩じゃない」


ん?どうみてもい…動いてる…


「何だ…あのサイズは!?」


「あれはジャイアントロックタートルだ。この階層を隈なく探したけど洞窟はなかった。多分アイツを倒さないと次の階層にいけない」


視線の先の魔物は10m以上のサイズだった。確かに短剣が主武器のライルには倒せないだろう。

全身が岩で覆われている上に手足も岩がこびりついているし、それを突破出来ても短剣じゃたいしてダメージは通りそうもない。


「アイツは動きは遅いけど、魔法を連射してくる。その魔法の岩が大体30cmくらいのサイズだから……当たった時の事なんて想像したくないな…」


「それは厄介だな…わかった。遠距離で攻撃しよう」


遠距離で高火力を出せたら敵じゃないな。確かに俺なら簡単だ。

俺はRPGを取り出して一応追撃の準備をした上で詠唱を始めた。


『アイスブロック』


魔物とほぼ同サイズの氷の塊が重力に引っ張られて落下してくる。


バゴーーーーンッ

パラパラッ


小石が辺り一面に降り注ぎ、それが終わり土煙が消えると…


「やったな!消滅してるぞ!」


どうやらホントに魔物だったようだな。あまりのサイズ感に幻覚かと思ったぞ。


「よし行こう」


俺達はアイスブロックの所まで急いだ。




「なぁ。これって」


着いた矢先にライルが聞いてくる。俺は言葉の先を予想して答えた。


「溶けるまで消えない」


「どうすんだよ?」


亀は消えたけど氷は消えない。俺達の視線の先にある魔石と洞窟は氷の下だ。


「壊すぞ」


「どうやってだ?まさか剣で削るのか?」


まさか。せめてツルハシがいるぞ。


「これを使う。ダメならあの爆発する魔法だ」


俺はRPGを手に取った。




シュンッ

ドガーンッ


パラパラ


「やったぞ!」


粉々にはならなかったが割れて良かった。


「お前何でもありだな。何だよその武器。卑怯だぞ」


「物は使いようだからな!さっ!行くぞ!」


フレアボムとどっちが威力あるのかわからんが、爆発力なら流石に現代兵器か?

まぁ、突破出来たらなんでもいいか。


俺達はライルがソロでクリアできなかった階層も難なく突破した。ついに情報が全くない階層だ。気を引き締めてかからんとな。


続く16階層もやはり岩場だった。


「新階層だけど、どんな魔物だと思う?」


「わかんねぇな。気配はどうだ?」


魔力波の事か。


「バラけているがいるぞ。一先ず単体ではないな」


「そうか。ならあたるしかねぇだろ」


まぁ、少ない所からやってみるか。


「こっちだ。1匹だけ離れている」


「よし!いこーぜ」


俺が先導して向かった。





「拙いな…」


魔物を視認した時にライルが呟く。


「何がだ?蟻の魔物だろ?どう拙いんだ?」


「他は知らねーが、ダンジョンの蟻の魔物は殺したらそいつ目がけて全体が襲い掛かるって聞いた。ここだったとは知らなかったがな」


なるほど。ここでもBランク殺しがあったか。やはりAランクは近いようで遠いな…


「魔法で殺してもか?」


「そこまでは知らねーな。そもそも魔法使いの冒険者が少ないからな」


「もしくはこれでやるか」


俺は銃を取り出した。


「それもわかんねーな。ただ言えるのは、奴らは俺達より遅いって事だな。ここで死んだ奴らは逃げ時を誤ったか、囲まれたかだろう。その点セイには相手の居場所がわかる魔法があるし、俺が時間を稼げば転移も出来る」


「そうだな。試さずに逃げる理由はないよな。ただ俺の索敵の魔法は障害物が無くても500mくらい先までだ。過信は出来ん。ま、最悪囲まれたらライルに時間稼ぎをして貰えば問題ないな」


意見が一致したところでまずは


「これから試す。いいか?」


俺はライフルを掲げた。これは対物の大口径じゃなく、普通に持ち運べる物だ。これの弾なら腐るほどあるからな。


「リーダーはセイだ。かまわねぇよ」


えっ!?俺が!?どう考えても冒険者の先輩のライルだろ!?


「いつから俺がリーダーに?」


「別にいつからとかはねーけど、元のパーティでリーダーだったんだろ?じゃあリーダーじゃねぇか」


名前だけのリーダーでした。とは言えず。


「まぁ別にいいけど…とりあえず試すぞ」


「おう」


俺はライフルを構えて発砲した。


パァンッ


ビシュッ


「倒せたな」


銃弾は蟻の頭に当たり、一殺出来た。


「そうだな。とりあえずこれで仲間が来るか…」


複数の反応が反応外から入ってきた。


「来たぞ。どうやらあの飛び散った体液に反応して集まるみたいだ」


昔何かの番組で、集団で暮らす虫は体液を何かしらの目印にするって見たな。蟻の行列はまさにそれだし、多分、今回のこれは敵対反応だろう。


「剣で斬らなくて正解だな。ここに来る度に寄られちゃ敵わん」


「そうだな。俺達は風上にいるから背後からは来ない可能性が高い。油断は出来ないけど。俺はあそこに集まる蟻を処理するから背後の見張りは頼む」


「おうよ。任せとけ」


蟻のボディは岩みたいだったが、頭はそうでもないから撃ち抜けたのかな?大きめの蟻で助かったな!


ちなみにサイズは全長1メートルくらいある。キモい。

鋭そうな嘴?牙?と掴まれたら痛そうなギザギザが付いた脚がある。


処理と言ったように殆ど作業と化して蟻を撃ち抜いていった。





「なぁ。おかしくないか?」


15分後。かれこれ200体以上のヘッドショットを決めたが、同じペースで魔力波の反応外から魔物が入ってくる。


「おかしいな。もしかして元を叩かないと終わらないタイプか?」


「それかもな。ならコイツらの発生源に向かわないか?」


「それしかねーな」


同意が取れたのでここは放置して向かう事にした。

魔石が200個以上あるけど取りに行けないから諦めた。



岩蟻(ロックアント)がやって来ている方角に向かう事5分。俺達は発生源を視認した。


「あれはどうしたらいいんだ?」


「あん中に入れるか?」


大岩、と言うより断崖絶壁。高さが50mくらいはあり幅は一キロはありそうな壁が有る。そこに高さ6m、二階建ての家がギリギリ入りそうな穴が開いている。そこから岩蟻が2分おきくらいの間隔で出て来ていた。


岩蟻達の目的地はさっきの屠殺場だろう。


「俺は入りたくないな…大体入ったところでどうするんだ?発生源を叩けば止まると思うが…」


余りにも未知数だ。大体無限に湧いて出てくる敵をどっちが足止めするんだ?

ライルなら体力の持つ限りだし、俺なら弾の補充が間に合うまでだ。


「その武器はどれくらい連射できるんだ?」


「弾を込めているストックが7つある。一つに30発弾が入っているが、あまり連射向きじゃないな」


所謂アサルトライフルだからな。セミオートで使っているけど、短い時間で100も撃てば銃身が熱を放出しきれなくなるだろう。


「限界で200くらいか。拙いな」


やはり同じ答えになった様だな。俺が出来る限り岩蟻を止めて、ライルが多分いるであろうボスをその間に討伐する。

まぁこれが現実的だよな。


「二人ではここが限界みたいだな」


「諦めるのか?」


舐めてもらっちゃ困るぜ…

諦めの悪い漢、セイさんと言えばこの私よ!


「諦めるわけないだろ。ただ時間が欲しい」


「時間か。どうするんだ?」


そんなの決まってるだろ?


「俺達のパーティは二人きりじゃないだろ?」


俺の言葉だけはカッコいいけど、やはり他力本願な想いを残してダンジョンを後にした。





「ライルはどうしてダンジョンに拘るんだ?」


戻った俺達はする事もないので聖奈さんの残してくれた食事を摘みながらお互いの事を話した。


「仲間を殺しちまったんだ。俺だけ逃げるわけには行かねーよ。せめてみんなの目標だったAランクになるまではな」


「そうか。じゃあならないとな。だが、とりあえずは今の仲間が戻ってくるまでは中断だ」


初めはリリーや爺さんに頼もうかと思ったけど、なんか違うんだよな。

ライルの想いを聞いて、ますます違うと思ってしまった。やはり仲間を信じて待たなきゃな。


「今の仲間っつっても、二人とは話もした事ないけどな。まぁセイがそういうなら待つよ」


「悪いな。だが最善の案だと俺は信じてる」


そうは言ったけど…ミラン達何してるか知らないんだよな…


「それまではどうするんだ?まさか食っちゃ寝か?」


「そこに酒があれば俺の理想の生活だが、そうじゃない。ライルを完全に俺達の仲間にする」


俺の言葉にライルはよく分かっていない表情をしていたが、俺も逆ならそう思う。直にわかるさ。






ライルをエトランゼの家において、その日の晩に地球に戻った俺はマンションにいた。


「おっ。ホントにメールが来てるぞ」


何何〜


『これを聖くんが見てるって事は私はもうそこにはいないんだね…』


おい!死んだみたいに書くな!


『私は今海外にいるよ。何をしてるかは秘密だけど、絶対ダンジョンで足手纏いにならないようになって帰ってくるから待っててね!

ミランちゃん達も同じく頑張っていると思うから聖くんも頑張ってね!

仕事の予定は別途メールするからよろしくね』


結局何をしているのか、いつまで掛かるのかわからんな。まぁ待つけど。俺は忠犬ハチ公だからな!


「次のメールが仕事の内容か…げっ!?」


そこには大量の輸送予定が書いてあった…

人使い荒いよ…



聖「ライルにも地球の土産を買って帰ってやるかな」


ティロン


聖「メールか。何何?『このメールを見ているって事は聖くんは地球にいるんだよね?一つ忠告があるの。絶対に寝室のチェストは開けないでね?』なんだ?気になるんだけど。まさか危険物をマンションに!?」


ガチャ


聖「この中に何があるんだ?まさか薬物?いやいや、聖奈さんに限ってそれは…じゃあなんだ?まさか警察がこの部屋に調べに来たら爆発させて色々な証拠を吹き飛ばすとかじゃないよな!?」


俺は怖いもの見たさでチェストを開けた。

そこには


『やっぱり見たんだ…そんなに私の下着に興味があるなら言ってくれればいいのに…

でもそれだと聖くんの性癖とは違うんだよね?下着はこっそり盗むに限るんだよね?』


聖「あのアマァァ!!」


聖は紙を破きかけて、そっと元に戻した。

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