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108話 苦き思い出。





「それにしても暑いな…」


俺達は砂漠エリアに足を踏み入れた。

何もないとは言え流石に何キロも続いているからゴールは見えない。

起伏はあるが本物の(テレビで見た)砂漠ほど激しくはないな。


「そうですね…魔物の反応はありますか?」


「あるけど…これは地面…砂の中か?」


反応は全て地中だ。もしかしなくともここの魔物は奇襲特化のようだな。ほぼ無限に魔力波が出来る俺には通用しないけど。


「では私では役に立ちませんね。セイさんには悪いですけどよろしくお願いします」


「いや、気にしないでくれ。元々何もしない後ろの二人より遥かにミランは役に立っているからな」


「うっ…」


「わ、私も魔力波しますよ?」


いや、魔力の無駄だからやめてくれ。そもそも探知範囲が違うしな。

どうやらエリーの使う魔力波は俺より効果範囲が狭いみたいだ。やはり魔法には出力での威力の違いがありそうだ。

上級魔法になると違いがわからんから全てが全てではないのだろう。


「それよりも聖奈とミランは銃の準備だ。どうやら向こうのテリトリーに入ったようだぞ」


砂の中の反応がこちらへと向かってくる。どうやらここは聞いていた通り3体未満のグループ?らしい。


「じっとしていると足元からガブっといかれそうだ。幸い早くないから少し移動しながら指示を出す」


ここの魔物は砂蛇(サンドスネーク)。もし名前の通りだと身体に砂を纏っているか、異世界の不思議パワーで身体が砂で出来ているかだな。


「ひぃっ!私爬虫類も苦手なのっ!?セイくん!!」


「いや、頑張れ。もしかしたら楽しいかもしれないぞ?」


「な、何が!?」


聖奈さんのテンパっている姿は楽しいけど、そうじゃない。普通なら怖い奇襲もわかっていたら…


「ミラン!右後方2メートルだ!」


「はい!」


ミランの右後方2メートル辺りの砂が凹んだ。


パァンッ


蛇が顔を出した瞬間ミランの銃が火を噴いた。


「聖奈!右前1.5mだ!」


「う、うん!」


パァンッ


こちらも顔を出した瞬間に吹き飛んだ。

最後の1匹は俺が倒して、ここでの第一ラウンドは終了した。


「どうだった?」


少し砂をかぶった魔石を拾いながらみんなに聞いた。


「的確な指示のおかげで問題なく倒せましたね」


「ははっ。ありがとうな。向こうの移動速度が歩くのとほぼ変わらないから良かったよ」


ミランは何かにつけて褒めてくれる。ありがとう!調子に乗るぜ!


「モグラ叩きみたいだね!それに砂っぽい感じだから嫌悪感も少ないしね!」


「だろ?これならここも問題なさそうだな。群れられたら拙いが」


群れられたらミラン以外は魔力視魔力波を使わないと間に合わん。多分攻撃方法は噛みつきだろうが蛇だからどんな毒があるかわからんから怖い。


「では!このままの調子で行きましょう!」


アンタ何もしてないやん?いいんだけどさ。


俺達は同じ方向に真っ直ぐと進んだ。このダンジョンではそれが最短だからな。そしてそれが出来るのもこの階層の敵が俺達の敵じゃなかったからだ。





「多分階層が変わったよね」


「そうだな…」


約3キロ以上の砂漠を越えて迎えた砂漠は俺が知っている本来の砂漠の形をしていた。

砂山で先が見えない…高低差10m以上はありそうな砂山が点在していた。もちろん先など見通せない。登れば見えるかもしれないが…とりあえず真っ直ぐだ。


「かなりきついですね…」


「そうですね。歩く事がこれだけ大変だとは思いませんでした」


エリーの泣き言にミランが同意した。


「9階層の魔物は砂鷲(デザートイーグル)だったよな?ならゆっくり歩こう。さっきまでの速度は必要ないからな」


「そうですね。辛くても足元ではなく上を見なくてはいけないですが頑張りましょう」


さすリダ!自分も辛いのにみんなを励ますとは…


「とりあえず俺の魔力波には反応はないからこのまま進もう」


「「はい!」」「うん」


500mも進まない内に異変が起こった。




「敵だ!かなり速い!戦闘態勢を取れ!」


こまめに魔力波を使っていたがこんなに速いとは…もう目視出来るぞ…


もう距離は100mを切っている。聖奈さんとミランが銃を構えて撃った。


パンッパンッパンッ


ライフルは重たい為、俺の魔法の鞄に仕舞っている。二人はガンベルトからハンドガンを抜くと躊躇なく撃った。


「やりました!」


どうやら当たったようだ。

砂鷲は空中で消えていき、魔石を落とした。


「ふぅ。危なかったね!でもハンドガンで倒せて良かったよ!」


「そうだな。まだ次が来るかもしれないから弾切れを起こさないように気をつけていてくれ」


倒した時には敵との距離は20mを切っていた。かなり危なかったな。俺でも砂地ではそんなに速く移動出来ないからもう少し固まって歩かないと。


「みんな。敵が予想以上の速さだったから索敵が間に合わない恐れがある。もう少しくっついて移動しよう」


「うん!わかったよ!」がしっ


俺の提案に即座に聖奈さんがおぶさってきた。


「ず、ずるいです!」


「ミラン。こいつは歩くのが面倒だからこうしてきたんだ」


俺はそう言うと聖奈さんを脇に抱えた。


「そ、それでもずるいです!」


「えっ?こんな物みたいに抱えて欲しいのか?」


聖奈さんは普通の現代人だからこの階層はきついだろうから仕方なく抱えたけど。


そんな事がありながらも9階層を俺達は進んだ。俺は身体強化に魔力視、魔力波を常に使い続けたが特に魔力に問題はなかった。

俺の魔力チートはどうなっているんだろうな?





「も、森が見えました!」


何故か先頭になりたいと駄々をこねたエリーがこの階層の終わりを告げた。


「ここまでは情報通りだな」


「はい。10階層までの情報は組合でも開示されていましたからね。この先は秘匿されていますが…」


「じゃあここがボス戦ね?」シュタッ


森が見えたと聞いて元気になった聖奈さんが腕から降りて気をはいた。

気をはくのはいいけど…アンタあれから役立たずだからな?


「遂に私も見られるのね!オーガを!」


「そうだな…」「そうですね…」


「?お二人は落ち込んでどうしたのです?」


聖奈さんは会えなかったからな。俺とミランはあの苦い思い出が蘇るから会いたくないが…

エリーは知らんから仕方ないな。知らないって幸せだね?




「そんな事があったのですか。でもここでは魔物は消えるから大丈夫です!」


エリーに苦い思い出を伝えたら前向きなお言葉を頂いた。


「そうだな。まぁ思い出は苦いが、オーガの強さはホンモノだぞ?記憶通りなら今の俺より少し遅いくらいの速さはある。力は向こうが圧倒しているだろうし、タフさもな」


多分身体強化3倍程度の速さはある。よく勝てたな…

まぁハメ技みたいなもんだったから…


「どうする?前と同じ作戦でいくの?」


「うーん。多分俺一人でも倒せると思うからここはギャンブルしないか?自分達の経験の為にもな」


「ギャンブル?」


多分愛剣を使えば問題なく倒せると思う。


「そうだ。みんなで倒してくれ」


「「「えっ!?」」」


「セイくんは…?」


「俺は見ている。危なくなったら介入するけどどうだ?」


「私達だけでBランク級ね…わかったよ」


聖奈さんからは了承を得た。


「い、いいのですか!?」


「エリーちゃん。多分だけど私達だけで倒せないとセイくんはこの後のダンジョン探索に連れて行ってくれない気だよ?」


「そうですか…わかりました。私達だけで倒します」


ミランは覚悟を決めたようだ。流石聖奈さん。察しがいいな。無理ならもちろん今後は一人で転移して潜るつもりだ。二人は草原から先に進めないから三人で追ってくる事も出来ないだろう。


「ミランがやるのにお姉さんである私が引くわけには行きません!やるですっ!」


お姉さん?

それは無理があるよ。見た目的にも精神年齢的にも。


「じゃあ作戦を立てましょ!」


「「はい!」」


遂にダンジョンでも保育士と園児の関係が…


「そんな事が出来るのですか?私に…」


「大丈夫!ミランちゃんの目なら出来るよ!」


「わ、私も責任重大ですぅ」


どうやら作戦は決まったらしいな。

この三人でオーガくらい倒してくれないとこの後必ず死人が出る。

俺は所詮身体能力(魔法使用時で)は並か底辺のBランク程度だ。この先の階層では守れない。むしろ援護してもらわなきゃならん。

それを考えたならせめて共倒れにならないようにここで一つのオーガを乗り越えてくれ。



エリー「そんなに酷い臭いなのですか?」


聖「エリー。あれはう○こだぞ。う○こ」


聖奈「セイくん。それはあんまりだよ」


ミラン「そうです。う○ちに失礼です。あれはこの世のモノではありません」


エリー「そっち!?」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] タイトルの終わりに 。 が付く時と、つかない時がありますが使い分けって何かあるのですか? もちろん ! とかが最後に付く時は別にして。 具体的には107話と108話のタイトルの造り…
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