107話 聖奈の悪夢。
「やっぱり岩場か…」
俺達は6階層の岩亀を攻略して、今は7階層を目の前にしている。
5階層は2.5キロくらい。6階層は岩場で計れなかったが多分2.5キロよりは短くは無かった。つまりここは3キロくらいあるはずだ。
「岩場といってもさっきとは違うね」
「はい。岩のサイズが桁違いに大きくなっていますね」
先程はテトラポットサイズの岩がランダムに空から降ってきて出来ました!みたいな階層だった。今回の階層は岩山だ。所々に突き出た岩山がある。一つ一つの岩の大きさも大きいモノだと10倍くらい大きくなっている。
「ここは何がいるんだ?」
「ここは岩蠍ですね。岩亀と同じく岩と同じ色をしているそうです。魔法は使いませんが音もなく忍び寄り、毒のある尾を獲物に刺すという攻撃方法を取るようです」
「毒って、どんな?」
「石化毒のようですね」
あるのか石化…メデューサとかもいるのかな?もし美女なら抗えんぞ?
「じゃあ私達のチームの敵じゃないね!」
「そうです!そうです!セイさんの索敵とミランの視力があれば私達は無敵です!」
うん。役に立たない二人が一番偉そうだ。
ミラン。二人でがんばろうなっ!
「セイさんどうです?」
ミランが聞いてきたのは
「うーん。凄いな。確かにダンジョンの魔物は必要以上に群れないって聞いてたけど、コイツらは数が凄いな」
「そんなにですか…」
どうもコイツらは小さそうだ。それでも地球にいる蠍よりは大きいだろうが。
「ああ。群れているわけじゃないと思うがそこら中にいるな。多分陰にいて見えないんじゃないかと思う」
「虫がウジャウジャ・・・・帰ってもいいかな!?」
「バ○サンもアー○ジェットも沢山あるから頑張れ」
聖奈さんは苦手だからな。俺も別に得意ではないが。
大体蠍のような昆虫?に殺虫剤って効くのか?デカい飛蝗には効いたけど。
「岩蠍は音と振動に反応するようです。なのでここからあの辺りの岩場に石を投げてもらえませんか?」
「わかった。炙り出せたらみんなで撃ってくれ」
近寄らずにすむならそれに越した事はないからな。
『身体強化』
俺は手近にある石を掴み全力で投擲した。
「うぉぉおお!!」
ビュン!
バゴッ
「どうだ!?」
遠くの岩場に着弾したのを確認した。後は
カサカサカサッ
実際には聞こえないがそんな音が聞こえそうなくらいフナムシが集まってきた。いや岩蠍だったか…
「ひぃっ!?」
聖奈さんは遂にスコープから目を離してしまった。
「ここから見ると小さいが多分30cmくらいあるよな?」
「そうですね。あれなら当てられます」
「アイスブロックがあそこに落とせたらいいのですが…私の魔力だと無理そうです」
「ん?魔力と距離が関係あるのか?」
俺はどこに落としても変わらないからわからんなぁ。
あれ?エリーがアホな子を見る目で見てくる…
「そんな事も知らなかったのです?まぁセイさんには関係ない事ですか…」
「い、いやわからんぞ?流石にここから水都には撃てそうにないからな!」
待て!頑張って共感したのにまたアホな奴を見る目を…!!
「セイくんならすぐ終わらせられるよね!?」
「いや撃たんぞ?魔石を回収するのに氷が溶けるのを待つのはアホらしいからな。頑張って撃ってくれ」
聖奈さんはこの世の終わりのような表情をしているが知らん!
俺も撃つから頑張れ。
その後、この階層に銃声が響き渡った。
「どうですか?」
ミランが確認してくる。
「うん。反応は無いな。全滅だ」
どうやらこの辺りの岩蠍を討伐出来たようだ。
岩亀の階層から撃った為か1匹たりとも来なかったな。
まぁまだ7階層は始まったばかりだからわからんが。
「じゃあ回収に行きますか!」
「イヤー!」
俺は嫌がる聖奈さんを抱えて岩蠍が大量発生していた現場に向かった。
「そう言えば魔石になるんだったね!」
この子は時々バカだよな。まぁそれだけ虫が嫌いなんだろうけど。
「多分上のレベルの奴らはこの辺の魔物には見向きをせずに駆け抜けていくんだろうな」
「そうですよね。この数をいちいち相手にしていたら時間がかかりますから」
恐らくBランク相当の俺でも身体強化魔法を使えば戦わずに駆け抜けられる自信がある。
もちろんこの面子なら聖奈さん関係なく無理だが。
「いや…ミランと二人きりなら出来るか?」
ミランは体力があるし、目も良い。目が良いのは強くなる為に必須なくらい重要な事だと爺さんも言っていたし。難しい場面だけなら俺が抱えれば良いしな。
「ん?」
なんかミランが顔を真っ赤にして熱い視線を向けてきている。それは良いんだ。それよりも…
「何で二人は睨んで来るんだ?」
聖奈さんとエリーが睨みをきかせてくる。俺はヤンキーじゃないから物語は進みませんよ?
「ミランちゃんと二人っきりで冒険する気なの!?」
「私達は置いてけぼりですっ!?」
ん?
「もしかして口に出ていたのか…?」
「はぃ…」
いや、ミラン。顔を赤くして俯かなくていいから助けてくれ。
「あれは他の冒険者がどうしているのか考察していただけだ。俺達には俺達のペースがあるから気にするな。これからも四人で頑張るぞ」
「それなら良いけど…」
「わかりました!」
うん。エリーは良い返事だ!返事はイエッサーかイエスだけだぞ!
俺の心の中の鬼軍曹が出たところで魔石の数を数えた。
「52個か。何とか5階層の分を取り返せたな」
「はい。ですが集めた情報との違いが気になります」
それはダンジョンの魔物が群れないってやつか。
「別に群れてたわけじゃないからな。コイツらは集まってきただけだ。それにここの階層はみんな通り抜けるだけかもしれないから、聞いた相手がそう言う認識だったのかもよ?」
「はい…その可能性は捨てきれませんね。しかしその習性は利用したいですね」
この後この階層に再び聖奈さんの悲鳴が木霊した。
「もう…いや…」
聖奈さんの名誉の為に言うが、ギリギリ漏らしていない。
「もう終わったようだぞ?良かったな」
「森、草原、岩場の次はこれですか…」
まだ少し先のほうだが、どうやら次は砂漠らしい。
「セイくん。もう夜になるから一度帰ろ?」
「そうだな。砂漠の手前まで行ってから帰ろう」
「結局、鉱石はどこにあったのでしょうか?」
そういやそうだな。
「岩って言えばここら辺がそうなんじゃ無いか?それ以外だと見当たらなかったな。もしかしたら鉱石ゾーンみたいなのが探したらあるのかもしれないけど興味ないからな」
「それもそうですね」
うん。誰も金に興味ないとは…ある意味では健全で、ある意味では不健全なチームだな。
目的の場所に着いたら転移してリゴルドーの家へと帰った。
俺と聖奈さんは地球へと戻り、各々の役割を果たす。それが済むとみんなで仲良く寝た。
「じゃあ今日も元気にいきますか!」
俺達はダンジョンへと転移した。
エリー「ホントですか!?」
ミラン「ホントですよ」
聖奈「ホントにセイくんはしたんだね?」
ミラン「はい。してくれました」
聖(えっ?何の話し?寝てて聞いてなかったんだけど…このまま狸寝入りするか…)
エリー「凄いです!でもずるいです!」
聖(なんだ?俺はいったいミランに何をしてしまったんだ!?)
ミラン「絶叫マシンは凄かったです」
聖「えっ?なにそれ?」(あっ…寝たフリしてたんだった…)




