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105話 ダンジョン潜入!





翌朝、俺たちの姿は第一防壁の入り口にあった。


「凄いな。まるで洞窟だな」


第一防壁はどうやって作ったのか、洞窟のようになっている。つまりそこに小さな岩山があるのだ。


「あそこから入るんだな」


「はい。入り口は狭いですが、中は広いようなので簡単にすれ違えます」


「よし、じゃあ俺を先頭にミラン、聖奈、エリーの順番で行くぞ。もし、魔物に挟まれたら聖奈とエリーの位置を入れ替えるんだ」


昨日話し合った布陣でダンジョン内へ向かう。

入り口は全然混んでいない。聞いていた通り、ダンジョンに昼も夜もないようだ。その為二万人もの冒険者が使用しても混む事はない。24時間営業だ!

唯一混む可能性があるのは入り口付近にある買取所だ。


第一防壁の中に入ると薄暗かった。そして先に明かりが見える。あれがダンジョンの入り口だ。ダンジョンの不思議な灯りが漏れている為、迷う事はない。まるで誘蛾灯に誘われる蛾のように冒険者達が光に吸い込まれて行く。俺達も例に漏れず。




「ここが2階層か…整備された森のようだな」


俺の視界一杯に森の景色が…ここ洞窟内だよね?


「不思議です。天井はかなり高い所にあるはずですが見えませんし」


「サングラスしたら見えるのかな?」


空は白い灯りに包まれていて天井を目視できない。周りは平坦な森のようだ。ようだっていうかそれにしか見えん。


魔力視(マジックアイ)』『魔力波(マジックウェーブ)


いつもの索敵コンビ魔法を使い周囲の状況を把握する。

後ろは階段だ。簡単に言えばダンジョンを逆走すれば必ずここへ辿り着けるようにここだけが狭くなっている。


「200m先までは反応がないが、それより先にはたくさんあるぞ」


「戦闘は避けられないみたいだから情報通りだね。じゃあ行こう?」


「はい」


「ふー。ふー」


エリー。慣れるんだぞ。その内慣れると思うから。


少し緊張しているエリーを後方に俺達は慎重に進んでいった。




「右前方に二体の気配がある」


俺がみんなに伝える。


「見えました。150mほど先です。右の敵は任せてください」


「見えたよ。左は私だね」


挿絵(By みてみん)


ミランは裸眼で、聖奈さんはスコープで捕捉した。

今日は二体までなら最初の攻撃は2人に任せることにしている。聖奈→ミラン→エリー→俺の順番に戦闘に参加だ。俺が最後なのは撃ち漏らせば必ず俺が相手をする為だ。

そしてエリーは暫くは銃ではなく魔法で対応してもらう。まだまだ先のことだが銃が効かない相手には魔法を使うしかない。それに慣れてもらう為だ。


パァンッパァンッ


森に銃声が鳴り響いた。かなり木と木の間が空いている為、遠くまで狙撃できる。俺の対物ライフルであれば有効射程はこの階層の殆どだと思う。もちろん木がなければの話だ。

他のメンバーが使っているライフルもそこそこの距離は射程があるはずだ。異世界で使用すれば最長距離の攻撃手段になるくらいにはな。


「やりました。ストライクです」


「やったね!所詮ゴブなど私達四天王からすれば雑魚なのだよ」


ごめん聖奈さん。何の引用かわからんわ。

ミランは俺が教えた言葉を意味もわからず使っている風だな。


「ナイスヘッドショット。2人ともこの距離なら外さないな」


「凄いです!私も魔法をぶちかましたいです!」


エリー。使い方は間違ってないけど、汚い言葉だからやめなさい。


俺達は問題なくこの階層(フィールド)を突破した。唯一の予定外な事は…


「ありました!」


「そうか。まぁ次からは見つからなければ諦めよう」


魔石を見失う事だった。

ゴブリンの魔石は小さく、また複数のゴブリンに遭遇すれば必然的にエリーの魔法が使われる。エリーには中級、上級魔法を満遍なく使ってもらっている為、魔石ごと吹き飛ばしてしまう事がある。

なまじ遠距離の為、見つけるのに苦労する。

ちなみにリポップは魔力波で判明した。倒したところとは場所が違うが、反応がいきなり現れた。

そうじゃないと2万人の冒険者で一瞬で狩り尽くしてしまうからな。




「雰囲気が変わったね」


「そうだな。森は森だけど、木の枝がかなり高い位置にあるし、木と木の間隔が広がったな」


どうやらオークの住みやすいエリア…フィールドに来たようだな。

二層では人とかなりの頻度ですれ違ったが、奥へ進むにつれて頻度が減ってきた。ここは森だから無限のルートが存在してるからな。奥の方が入り口より広ければ、進む角度が一度違うだけで二度と会わないな。


「どうしますか?このまま進みますか?」


「一当てしませんか?」


ミランが聞いてきて、エリーが提案してきた。


「一当てしてみよう。問題無ければ帰ろう。問題があれば改善させてから帰ろう」


「そうだね。そうしよう?」


「「はい!」」


聖参謀が話を纏め、聖奈総督が決定を下し、我が隊のアイドル達がいい返事をする。

完璧や…




「いました」


ちょっと待て。俺が言う前に見つけないでくれないか?


「左前方220m先です」


木が少ないし敵がゴブリンより大きいから見つけやすい。もはや俺がいらない人に…

もちろん俺には見えない。


挿絵(By みてみん)


「じゃあ撃つね」


パァンッ


「お見事。やはり一撃ですね」


うん。俺はホントにいらんな。まぁもう少ししたら活躍するからいいよ?


オークを問題なく討伐した所で帰還することにした。

今日はお試しだ。初日にみんなの緊張がとれて良かったんじゃないか?

お前は戦闘に参加したのかって?




「お疲れ様〜!今日はみんな活躍したね!特にエリーちゃんの魔法は凄いね!セイくんと違ってもう暗唱出来てるし」


宿に戻り、俺は転移で荷運びを行い、聖奈さんはリゴルドーの家で料理、エリーミランはそれぞれの店に。

そしてご飯が出来たので一同が会して夕食に。


「そうなんです?確かに覚えにくいですが無理というほどではないですっ!」


くそっ


「ミランちゃんも索敵が凄いね!3階層だとセイくんより早い時があるもんね!」


くそっ


「セイさんは私が見える位置まで来てから教えてくれるのでそんな事はないですよ」


さすリダ。ちゃんと部下の気遣いに気付いてくれる。それに比べて聖奈さんは…


「セイくんは暇でしかたなかったでしょ?」


くそっ


「いや、俺は最後の砦だからいいんだ」


「そう?じゃあこれからも今日と同じでよろしくね。まだまだセイくんは戦闘お預けだけどごめんね」


そう。俺は一度も戦っていない。ダンジョンは階層主(フィールドボス)やエリアボスと言われるレアキャラに出会わなければ基本は三体以下の敵しか現れない。

エリアボスは基本4体以上の集団で現れるみたいだ。もしそれ以下の数で出会えばそれは他の冒険者に仲間を討伐されて逃げたか、逆に仲間は犠牲になったが冒険者を倒したかだ。


「まぁダンジョンが新鮮だからいいよ。次からは泊まりがけだしな」


そう。明日からはダンジョンに泊まり込む。これは何もおかしなことではない。浅い階層ではかなり珍しいが10階層以上潜るときには大抵泊りがけのようだ。


「そうだね。もし明日の朝が成功したら違うけどね」


聖奈さんの意味深な言葉を後に俺達は地球へと向かった。

ミランとエリーはこっちでお留守番だ。





地球には貿易の為帰った。異世界のモノを会社に、会社のモノを異世界へ。それにしてもリゴルドーの家にあるドリトニーの遺産(死んでない)はいつか盗まれそうだな…財宝に対してセキュリティのレベルの低さよ。

しっかり睡眠を取った翌朝、俺達はダンジョンに行かずに宿の部屋にいた。


「今日でこの部屋ともお別れだね」


「いや、言い方。別に最後かわからんだろ?」


俺達はダンジョンに泊まり込む為、宿を引き払う。まぁ元々荷物もないし寝るだけの場所だ。


「よし。宿の人にも伝えたし、試すか」


「うん!これが出来たらもう宿どころかこの街はおさらばだね!」


もちろん


『テレポート』




今日もマイナスイオンが凄いな。


「成功です!」


「これでお泊まりは無くなりましたね」


昨日のオークの森に転移した。俺は出来ると思っていなかった…

普通こういうのはゲームでもアニメでも制約という名の謎の力で出来なくなるもんだろっ!

ありがとうっ!


「まさか出来ちゃうなんてね」


聖奈さんも同じ気持ちのようだ。

昨日の夜にエリーが転移を使わないのかと言ったことが発端だが、俺と聖奈さんはこういうのはズルせずにクリアしたい派だから触れなかったのだ。

しかし2人が気付いたのなら試さない理由は弱い。

そして今に至る。


「これは私達が初めてダンジョン攻略しちゃう奴だよね?」


「いや、それは無理だろ?ドラゴンとか出てきたら間違いなく即死だぞ?」


俺達は貧弱だからな。


「じゃあ強くなる為に頑張ろっか!」


「「はいっ!」」


「…」


俺は何をする事もなく、3階層を突破した。

続く4階層は草原だった。


「見通しは良いけど足元は悪いな」


「そうですね。石でもあれば転びそうです」


「たしかワイルドウルフっていう魔物だったかな?」


「そうです。狼さんです」


狼さん…俺から見えるのはそんなに可愛らしい見た目じゃないぞ?


「とりあえずやっちゃうね!」


パァンッ


「なぁ。瞬殺が過ぎないか?」


「良いんだよ。これはバトルモノじゃないんだから」


ワイルドウルフは魔石へと変わった。


「いや、どうやらバトルモノになりそうだぞ?」


「どうして?」


「20くらいの反応がこちらに向かってきているからだ。どうやら音か硝煙の匂いに反応したようだな」


距離はばらつきがあるがこちらへとそこそこの速さで向かってきている。


「とりあえずみんなで迎撃だな。俺はアイスバーンを唱えるから後は任せた」


「はい!私はウインドカッターにするですっ!」


エリーはやはり風魔法と相性がいいのか、ウインドカッターの扱いが一番うまい。俺には出来ない連発が出来るし…


何はともあれ漸く出番だ!


聖奈「索敵はミランちゃんだね!」


ミラン「魔法はエリーさんですね」


エリー「初撃はセーナさんです!」


女性三人「いらない人が『いるね』います」


聖「こうして俺は捨てられたとさ。なんでやねん!」


ミラン「これがコントと言うものですか?」


エリー「よくわかりません」


聖奈「ちゃんとオチがあるから成立してるよ!やったね!」


聖「コントに現実を混ぜるのはやめないか?」




聖はいじられキャラなのにツッコミが弱い!


異世界モノの短編小説を投稿しました。

良ければ作者ページから読んで頂けると幸いです。

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