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10話 地球か異世界か。

 





 結局バレてはいなかった。そもそも流石(オタク)の長濱さんでも、俺が異世界に行ってるなんて頓珍漢な事は思わないだろうな。

 …頓珍漢ってなんだ?


「引っ越しは来週だっけ?私も手伝おうか?」


 休憩中、いきなり聞かれて戸惑う。


「見ての通り荷物は少ないから大丈夫だよ」


 俺の部屋は、今更だがワンルームで収納も少ない。


「そっか。でも引っ越したら一番初めに誘ってね?」


 何気に一番嬉しい言葉かもしれない。


「わかった。必ず誘うよ」


 正直、物で溢れかえる前に須藤を誘おうかと考えていたけど、長濱さんなら貿易品が増えても誘えるし、別に須藤はいいや。

 だって、川崎さんが付いてきそうだし……




 作業は終わり、長濱さんを駅まで送った俺は弁当を買って帰った。


「暫く、異世界行くのはやめよう…」


 なぜなら、宝石を売ったお金に税金が掛かる事が判明したからだ。

 身分証を提示していた時に気付くべきだった……


「明日からは税金の事を調べて、引っ越しの準備も進めよう…」


 さらば異世界…

 どうせ来週には行くけど。


 後、月の動きについても聞けたのは良かった。

 やっぱり月の出も月の入りも結構ズレるようだ。

 だいたい1日に30分くらいはズレる。多い時は2時間近くズレる時もあるそうだ…


 これからは月の出と入りを調べてから、転移することにしよう。

 調べたら普通にサイトに載っていたから、2ヶ月分くらいは常に携帯に保存しておこう。電源が切れたら見えないけど、そもそも向こうでは電源をつける事が無いしな。


 こっちに帰るのは何時でも良いんだけど、向こうの宿に泊まる時が困るんだよな…

 まぁ、引っ越したら布団じゃなくてベッドになるから泊まれなくてもいいけど…


 今は六月の終わりで、夏休みまではまだひと月以上もある。

 夏休みになれば長濱さんも朝から来てくれるって言ってくれたし、たくさん胡椒の瓶詰めを作れる。


 まあ、いざとなれば白砂糖をばら撒いても良いんだけどな。


「両方の世界で店を持つのが解決策っぽいよな」


 どちらにしても、もっと金がいるな。

 今の残金がだいたい百万で、後は今日手に入れたお金だな。


 目の前の白い封筒には大金が入っている。

 2,800,000円だ。

 これで合計3,800,000円になった。

 これから明日、税金を調べて引いた金額が使えるお金だ。


 税理士に頼めば税金を抑えれるかもしれないけど、内容が内容の為頼めない。

 わからないモノは雑所得で税率が高くても仕方ないな…

 後はどこまで経費で落とせるかだな。

 まっ、明日だな!

 後は1週間後にまた異世界に行けるように準備しよっと。







 1週間後、税金の事や引っ越しを済ませた俺は、新しい家で長濱さんを待っている。


 この部屋はマンションの三階だ。四階より上の階はファミリー向けの賃貸になっている。

 LDKは15畳もあり、逆に寝室は6畳しか無いが、元々6畳一間だった為、狭くは感じない。


 とにかく荷物を多く置けるようにLDKが広い物件にした。


挿絵(By みてみん)


 もちろん少し田舎に行けば同じ値段で3LDKも借りられたが、まだ車を持っていないので不便を感じて諦めた。


 後、税金だが、詳しくすると頭がパンクするから凡そにして、半額は収めなきゃいけないようだ。

 このまま行けば年収が1,000万を超えるからな。


 ピーンポーン


「開けたから入ってきて」


 ついにオートロックデビューだぜっ!

 後、大丈夫だとは思ったが、寝室にも新たに鍵をつけてもらった。

 移動はもっぱら寝室からだからな。


 ピーンポーン


 …2回動かないといけないのは面倒だな。


 ガチャ


「いらっしゃい」


「お呼ばれしちゃった!」


 とびきりの笑顔で入ってきたのは、もちろん長濱さんだ。

 あれからもう一度バイトをしてもらってから、ずっと機嫌がいい。何故かはわからん。


「聖くん。これ引っ越し祝い」


 長濱さんから紙袋を渡された。


「ありがとう。開けてもいい?」


「もちろん!喜んでくれるといいな」


 何だろう?結構重たいな。


「おっ!日本酒か!しかも俺が好きなやつだ!

 ありがとう!良くわかったな?」


「ふふっ。やっぱり喜んでくれた。最初アパートに行った時に、片付けていた瓶の銘柄を思い出したの!

 それの良い物を店員さんに聞いたんだ!」


 ありがてぇ。流石長濱さん!須藤えもんは解任して長濱えもんにしちゃうぜ!


「それにしても広いね!テレビもデカッ!」


 驚いてくれたようだな!ソファやテーブルはリサイクルショップの物だが、テレビは新品だ!


 引っ越しは意外に大変だった。大学に入学した時は運ぶだけだったが、こっちでは前の物を処分しなきゃいけなかった……

 さようならオフトゥン。


「聖くん。聞いていい?」


 あれ?さっきと違ってなんだか深刻そうな顔だな…


「ど、どうかした?」


「どうやって稼いでいるの?」


 ヤバい!やっぱり疑われてた!と言うかバレてんじゃね!?


「な、なにを?」


「誤魔化さないで。もちろん聖くんの稼ぎ方を聞いて、真似しようとかじゃないの。

 おかしいよね?胡椒を瓶に詰めて、銀細工や革製品をネットで売るだけで、こんなところに住めるなんて」


 もしかして心配しているのか…?


「聖くんが何かやっちゃいけない事をしていたとしても、私は味方だよ!

 貴方だけに危ない事はさせない!」


 やっぱり心配のほうだったか……


「答えて」


 うーん。ヤバい事はヤバいけど、違うんだよな…

 それに多分ヤバい事だと思っても俺から離れないって言ってくれてるのに、これ以上嘘はつけないよな。


「ごめん。けど、嘘はついてないよ。実際には胡椒は売っているけど、それ以外は嘘じゃ無い」


「何で教えてくれないの?私は別にお金なんかいらないよ!

 ただ、悩んでいた私の話を聞いてくれて、支えてくれた聖くんを私も支えたいの!

 お願い!嘘はやめて!」


 涙を流しているけれど、決してヒステリックにはなっていない。

 未だにこんな俺を信じて、助けようとしてくれている目だ。


「俺はこれからは長濱さんには嘘はつかないと誓うよ。

 それでさっきの質問だけど、胡椒を売っている」


「なんで……

 胡椒なんて売ったってお金に・・」


「最後まで聞いて!」


 俺は長濱さんの言葉を止めて続ける。


「砂糖も売ってるんだ。ここまで言えば、答えはもう長濱さんならわかるんじゃない?」


 急にクイズを出された長濱さんは思案顔だ。


「えっ…砂糖や胡椒が何かの隠語?」


 ホントにヤバい答えが返ってきた。


「ち、違うわい!前に言ってたじゃん!」


 慌てた俺は心の声が漏れた。


「えっ……まさか…異世界?」


 やっと答えに辿り着いたか。


「そうだよ。俺も前に言われた時は、バレたかと思って焦ったよ。

 今までの事を説明するね・・・・・・」


 俺は大まかな流れと、異世界の情報を細かく伝えた。

 異世界の情報を細かく伝えたのは、長濱さんなら何かアイデアが出るかもと期待しているからだ!ビバッ!他力本願っ!!


「信じられないよな?言っている俺でも信じられないもんな……

 転移するところを見せてもいいけど、人が近くにいるとどうなるかわからないから難しいな」


「見たい!」


 そこには幼子の様に目を輝かせる長濱さんの姿があった。


「いや、待ってくれ。他の方法で証明できるやり方を考えよう。流石に何が起こるかわからない事を、試す事は出来ない」


「えー!もしかしたら私も行けるかもしれないのにぃ!!」


 駄々っ子がいる。


「ダメだ!長濱さんに何かあれば俺は生きていけない」


 こっちの世界ではな。異世界に逃亡生活とかまだ無理っ!


「えっ!?」


「ん?」


 長濱さんの顔が赤くなってる…はて?

 …ヤバい!そう言うことか!


「ち、ち、違うんだ!大切な友達を最悪殺す事になるんだぞ?そんなのみんなそう思うだろ?!なっ?!」


「う、うん!そ、そうだねっ!!」


 暫くして落ち着いてから、話を再開した。


「ごほんっ。兎に角、別の方法を検討しよう」


 仕切り直した俺は意見が無いか聞いたが……


「?大丈夫だよ?だって聖くんは嘘をつかないよね?

 それに今までの事を思い出してみたら、逆になんで気付かなかったんだって自分を殴りたいくらいだよ」


 問題ないようだった。


「ホントは白砂糖を売りたいんだよな。何かいい考えない?」


 長濱さんは問題ないようなので、こっちの問題を聞く。


「考え過ぎだよ。普通に売ればいいよ」


「えっ?だって貴族とかやばそうじゃね?」


「確かに何の力も後ろ盾もない聖くんが狙われたら危ないかもね。

 でも組合を通せばいいんでしょ?多分だけど、その職員さんじゃなくて、上の人に話を通せば組合で売ってくれると思うよ。

 何故かはわからないけど、担当のハーリーさんは一人で聖くんの商品を売ってるんじゃないかな?

 もしかしたら知らないだけでそういうルールになってるのかも」


 えっ?ハーリーさんが一人で?なんで?


「ハーリーさんが悪い人なら、自分の利益や成績の為に聖くんを隠してるかもね。

 逆に良い人ならトラブルに巻き込まれないように、聖くんを隠しているのかもね。

 どっちにしても商人組合の規定とかで担当者が売るとかの規定があるかもしれないから、大量に売りたいから上の人に頼みたいって伝えればいいと思うよ」


 なるほどな…だが…


「断られたら?俺には今のところハーリーさんしか売り口がないんだ」


「それこそ簡単だよ。他の街にいけばいい。

 別に実際行かなくとも、断るなら他の街で売るって脅せば通用するでしょ」


 たしかに……俺に足りないのは行動力か…


「そうだな。せっかく異世界に行ける能力があるのに、何故か縮こまった考え方をしていたよ」


「ふふっ。でもこっちでは異世界産のサファイアを売ったり、行動的だよ?

 まさか逆に考えてたの?」


 ん?逆とはなんぞ?


「いざとなった時の居場所の話。

 地球じゃなくて異世界の方を選ぶつもりだったんじゃないかな?無意識に」


 っ!!

 そうだな……俺はこの世界から逃げたかったのかもな。



 残金

 3,800,000-380,000(家具家電)2,150,000(納税予定額)=1,270,000円

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