07 蛇→レベルアップ
「【フライングキック】! ……おおっ?」
変わった感覚だった。一瞬身体が軽くなり浮遊感が襲った。その感覚に流されるように動くと、自然と斜めに飛び上がり突き出した右足が地面にぶつかるように当たった。衝撃でビリリときたが、痛くはないな。
振り返って位置を確認する。さっき俺が立っていた場所から三メートルくらい動いたか? 何にせよスキルで移動できるなら、いざと言う時の緊急回避に使えるかもしれない。
そういえば初期スキルの取れる枠はまだ二つあったな……。【アクセル】、【速度上昇】、そして【フライングキック】。まだ二つ取れるならもう一回見直してみるか。もちろん移動に使えそうなものを。
「んー、これは違うな。こっちはどうだ? ………いや使いづらそうだな」
色々悩んだ結果、新たに二つスキルを取った。
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【ターニングキック】
分類:戦闘スキル
効果:その場で横回転して回し蹴りを繰り出す
取得条件:初期スキルから取得
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【サマーソルトキック】
分類:戦闘スキル
効果:その場でバク転しながら空中蹴りを行う
取得条件:初期スキルから取得
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蹴り技としてはなんかやたら細かい分類なのが気になったが……見たところ魔法とかも細かく分かれているみたいだし、別におかしくないのか?
ひとまず二つのスキルも試してみた。ターニングキックは特に問題なかったが……サマーソルトキックは少々慣れるのに時間がかかりそうだった。バク転とか生まれて初めてだし、景色がひっくり返る感覚はなかなか慣れない。スキルの補正のおかげか、頭から墜落とかはならなそうだが……着地してすぐにパッと動き出すのは難しいな。
ともかくスキルは取ったし、練習もした。早いとこ次のクエストに移行するか。
★★★
「よろしくお願いしますね」
二番目のクエスト、オリエン村からオクシデ村への配達は野菜を届ける物だった。人の良さそうな村人のおばさんから、ぎっしり木箱に詰まった野菜を受け取る。両手で抱えないとキツい量と大きさだが、一瞬で魔法鞄に入ってしまう。あの有名な猫型ロボットの気持ちがわかる気がするな。
さて、早速移動するか。方角で言うと東側から西側への移動だ。となるともう一度森に入る必要がある。まさかあの蛇にもう一度出会うことはないだろうが。
「フラグ立てちゃったかなぁ……」
現在、森に入ってすぐスプリングサーペントにまた遭遇していた。
またしても喉を鳴らしながら威嚇してくる。なんとかすり抜けたいところだが……木や草が邪魔過ぎて抜き去るのが難しいな。左右にステップを踏むが、やはり俺の動きに合わせて動いてくる。
……覚悟決めるか。抜き去れないならここで倒すしかない。となると、先手必勝!
「【フライングキック】!」
決めたら躊躇はいらない。すぐさまスキル発動させ、真っ直ぐ飛び蹴りする。足裏が当たると同時にドン、と衝撃音が響く。
「シャア!」
「ちっ!」
しかし当たったのは蛇の体ではなく、森の硬い地面だった。攻撃が当たる前にシュルシュルと地面を這い回避されている。少し距離を取った蛇は、前に見たように体をバネ状に縮めて反発力を溜める。そして反動で勢いよく飛びかかってくる!
「甘い!」
直線的な攻撃で避けやすいのはこっちも同じだ。しかもこちらは機動力特化型。いかに勢いがあっても回避は難しくない。一歩引いて躱したところで、新たにスキルを発動。
「【ターニングキック】!」
「ギャ!?」
素早く回し蹴りでダメージを狙う。今度はタイミングがちゃんと合った。空中で避けづらかったのもあるだろう。蛇の体は縄みたいな物だから手応えと言うか足応えは薄かったが、少なくとも当たったのは確かだ。鈍い鳴き声が響く。
攻撃を受け地面を転がっていく。これはチャンスだ。すかさず追撃とばかりに、思いっきり踏みつける。
「ギャウウ……」
「おっと!」
踏まれながらも蛇は反撃として、体をくねらせ足に噛みつこうとする。咄嗟に大きく距離を取った。
蛇は少しフラフラし始めている。それでも戦意は衰えてないようで、頭を持ち上げて口を開き威嚇音を出す。だが、頭上のHPゲージは既に三分の一以下だ。もう少しで倒せる。
「ジャアァァ!」
濁った声と共に、突如蛇は素早く動いた。動き出しが速くて一瞬見失う。どこだ……いや!
「【アクセル】!」
だが俺も反射的に動いた。蛇と対峙していた状態からスキル発動。目の前の誰もいない方に瞬間加速して走り出す。そしてほんの数秒走ったところで、ブレーキをかけて振り向く。すると飛び上がった蛇が見えた。
直感的に気付いた。例え見失ったとしても、最終的に蛇は攻撃の為に飛びかかってくる。なら俺が素早く移動すれば、攻撃の軌道修正できずにその場に飛んでくる、と。
案の定、俺が目にしたのは飛びかかってくる最中の蛇だった。
「【フライングキック】!」
先ほどは避けられたが、空中なら当たる可能性は高いのは証明済みだ。やがて空中で交差するようにぶち当たり、キックの衝撃で吹き飛ばされて行った。
『レベルが上がりました!』
「おっ!?」
思わず声が出た。スプリングサーペントのHPがゼロになり、少しずつ消滅していくのを見て一安心……したところへの不意打ちだった。どうやらレベルが上がったらしい。ここまですっかり忘れていたが、まだ飛脚になってから、レベル上がってなかった。
確認すると一気にレベル5まで上がっていた。ステータスポイントが増えたのはもちろん、スキルも増えていた。
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【周辺視】
分類:補助スキル
効果:一定以上の速度で行動中、周囲の風景が明瞭に見える
取得条件:飛脚LV5で取得
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なかなか面白いスキルだな。高速で走っていると、どうしても視野が狭くなる。陸上競技みたいに決まったコースを走るだけなら危険は少ないが、俺みたいに道の無い場所を走る場合は前しか見えずにぶつかる可能性がある。だがこれがあれば、少しは危険が減らせるかもな。
ついでだからステータスポイントも割り振っておこうか。ちょうど50ポイント増えていたが、もちろん敏捷に全振りだ。
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ヨミジ 飛脚LV5
HP:35
MP:10
腕力:1
耐久:1(+1)
魔力:1
精神:1
敏捷:61(+25)
器用:1
スキル:【速度上昇】【アクセル】【健脚】【走法・地走り】
【フライングキック】【ターニングキック】【サマーソルトキック】
【周辺視】
頭部:
右腕:魔法鞄
左腕:(装備不可)
胴体:疾風のジャケット
脚部:旅人のズボン
履物:疾風のブーツ
装飾:
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改めてステータスを確認してふと思う。スキルは別にいい。少しずつ増えているしな。
問題は装備品だ。後回しにしてたが、どうも貧弱さが気になってきた。やっぱり敏捷を上げるような装備品が欲しいな。より速度を追求するにはステータスと俺の努力はもちろん、他にアイテムなどできることは全部やっておきたい。
「決めた。クエスト終わったら、装備を集めに行くか」
二番目のクエストが終わったら、どの道三番目のクエストを引き受ける為に王都に行かないといけない。ついでに装備の店を探してみるとしようか。
すみません、諸事情につき少し投稿が遅れます。
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