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04 転職→新装備

「ふう、やっと着いたか」


 気を取り直して門の方へ向き直る。なんにせよ、ようやく到着だ。紆余曲折あったが、これで一段落だろう。


 大きな門を潜り、王都の内側へと入る。受付というか門番みたいな兵士がいたが、俺が異邦人(プレイヤー)だとわかるとあっさり通してくれた。悪さをするなよ、なんて釘はさされたが。


「おお……」


 門の内側を見て思わず声が漏れた。映像でしか見たことなかったような、石造りの建物に石畳が広がっている。ヨーロッパに来たようだ。改めて最近のVR技術の進歩を思い知らされた気分だ。


 一分くらい呆けていたが、改めて思い出す。王都に行こうというクエストの途中だった。着いたけど次はどうすればいいのか……? メニューを開くとクエストが変化していた。


─────

【クエスト:職業に就こう!】


ギルドで話すことで職業に就くことができる。

より専門的なスキルが身につけられるぞ。

やりたいことに合った職業を見つけよう!


─────


 なるほど、そういうことか。ひとまずギルドを探すとしようか。


 とりあえず門から入って真っ直ぐ進んでいた。横幅の広い大通りを見回しながら歩く。本来なら思いっきり走りたいところだが……。


「流石に人混みが多過ぎるな……」


 頭上に名前が浮かんでいる人と浮かんでいない人……すなわちプレイヤーとNPCが目まぐるしく行き交い、滅茶苦茶賑わっている。いくら俺でも、ぶつかる危険と迷惑を考慮しない訳にはいかないからな。それくらいの常識はある。


 マップで確認したが、街の主要な建物の位置くらいは表示されていた。教会とか王城とか、もちろん目当てのギルドの位置もだ。そこに最短ルートで向かっている。


「っと、ここか」


 ようやくマップで表示されている場所に着いた。真っ白な石壁の三階建ての建物た。ギルドというと酒場のようなイメージだったが、第一印象は区役所のような郵便局のような感じだ。ドアも大きくて綺麗な木の板だし。ドアの真上には看板が掲げてある。


「! おお……」


 びっくりして声が漏れた。看板の文字が見たことない文字だなと思い数秒見つめていると、看板の真下に日本語で【戦闘ギルド】と文字が浮かんで見えた。視線を外すとパッと消えてしまったが、もう一度同じように見つめると、三秒程で文字が出てくることがわかった。なんとなくだが、これはゲームの仕様によるものだと感じた。雰囲気、世界観を壊さずなおかつ不便にならない為の配慮だろう。


 中に入るとますます区役所っぽいと思えた。奥の方に受付カウンターがずらりと横並びになっており、軽く二十は窓口がありそうだ。入口側の壁には待合所っぽく座席が並び、一部は丸テーブルと椅子のセットになっている。


 なんにせよ、俺の目的は職業に就くこと。歩きながら空いてる受付を探し、そこに飛び込む。


「いらっしゃいませ。ご用件をどうぞ」

「職業に就きたいんだが」


 対応してくれたのは眼鏡のお姉さんだった。スーツっぽい服を着ており、いかにも大企業の受付って感じだ。この辺りは世界観の割に進んでいる気がする。


「異邦人の方ですか? ……かしこまりました。ではこちらの水晶玉に手を置いて下さい」


 端に置いてあったソフトボール大の水晶玉に手を乗せると、すぐに白く光り始めた。少しの間光ったままだったが、やがて光が消える。そしてどこからかカタカタと小さな音が聞こえてきた。


「お待たせしました。こちらから職業をお選び下さい」


 お姉さんはカウンターの下から数枚の紙を取り出し並べた。さっきの音はこの紙を印刷していた音だろう。……印刷と言う表現が正しいかはわからないけど。中世っぽい世界観だしな。


 とにかく並べられた紙を見ると、そこにはデフォルメされた人間のイラストと職業名、そして説明が書かれていた。ふむ、盗賊……剣士……なんかピンとこないな。俺は戦闘したい訳じゃないし、興味を惹かれない。どうしようか、このまま無職でゲームを進めることも考えるか……なんて思い始めたところで、最後の一枚を確認する。


「お? これは……」


─────

職業:飛脚

特徴:移動速度と腕力に補正が入るが、その他の能力が減少し上がりづらくなる。専用の戦闘スキルはない。


─────


「これでお願いします!」


 見た瞬間、すぐさま迷わずお姉さんにお願いしていた。これだ。これこそ俺にピッタリの職業だ。


「え、本当によろしいんですか?」


 と思ったら、なんか驚いたようなリアクションを取られた。NPCだし、これって誰にでも同じ反応するのか? ……まさか俺が飛脚を選んだからじゃないよな? そうだよな?


 結局お姉さんは何度か心配そうに確認してきたが、俺の意思は変わらなかった。


「……はい、登録が完了しました」


 よし、これで飛脚として活動できるようになる。どんなスキルが手に入るか楽しみだな……ふふふ。



『スキルを習得しました』


 興奮しているとどこからか女性の声が聞こえてきた。もしかして、飛脚になったから新しいスキルが手に入ったのか?


─────

【健脚】

効果:移動による疲労を常時二割軽減する

取得条件:職業『飛脚』に就くこと


─────

【走法・地走り】

効果:陸地を移動中のみ、常時疲労を三割軽減する

取得条件:職業『飛脚』に就くこと


─────


 ほう……この二つはつまり、陸上を走っている時は疲れが半分ということか? 逆に言えば体力二倍、本気で走れる時間も伸びるってことか。最高じゃないか。


「こちらが支給品のアイテムになります」


─────

【疾風のジャケット】

分類:胴体装備

効果:敏捷+10

   耐久+1


─────

【疾風のブーツ】

分類:履物装備

効果:敏捷+10

   移動による疲労度5%減少


─────

【革の魔法鞄】

分類:右手装備

効果:アイテムを四十点まで収納可能 (生物は収納不可)

   収納中は内容物の重さがゼロとなる

   装備時、左手は別アイテム装備不可となる


─────


 渡されたのは、明るい青緑色の上着とショートブーツだった。上着は腰までの短い丈の物で、ブーツは足首まで覆うくらいの長さだ。


 そして魔法鞄だ。全体的に灰色のショルダーバッグで、腰の辺りに鞄本体がくる仕様になっている。そして大容量のアイテム収納が可能だ。最初からプレイヤーの機能として存在するアイテムボックスは、アイテムを最大二十点まで収納可能だから、大幅に効率アップと言えるだろう。


 これで一通り装備は揃った。なかなか着心地、履き心地も上々だ。鞄も体に密着させやすい様に紐の長さが調節できるようになっている。これなら走る時に揺れを感じにくいので、邪魔にはならないだろう。


 職業には就いた、装備も揃った。となると次は……天日を誘ってみるか? いやいやまだ俺はひよっこも同然だ。誘うには早過ぎるだろう。となるとやっぱりやることは決まっている。クエストをこなしてレベルを上げることだ。今の俺はレベル1。天日のレベルがどのくらいか聞き忘れたが……流石にこの状態で一緒に遊ぼうと言っても足手纏いになるだけだろう。天日なら笑って、『わかった。じゃあレベル上げに行こっか』なんて言うかもしれないが。


「ゲーム世界でまでお守りされるのはごめんだしな」


 ただでさえ現実世界では俺の保護者みたいに思われてる訳だし。それは置いといて、ひとまずクエスト探しからだな。そう結論付けた俺は、受付のお姉さんについでにクエストの事を聞いてみることにした。

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