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ゴミステーション荒らしは謎解きの始まり

作者: はなちる

確かに私は性善説で物事を考える癖がある。


今日も自宅の目の前にあるゴミステーションがカラスに荒らされている。


以前テレビで見たことがあるが、カラスは知能が高く、群れの中には順位までついているそうだ。

だが私が疑問に思ったことはカラスの生態についてではない。

なぜ4ヶ月前から定期的にゴミステーションがカラスに荒らされるようになったかだ。


というのも私はこのアパートに住んでから5年が経っているが、定期的に荒らされるようになる以前はカラスに荒らされた事はほとんどなかったといってもいい。


先生曰く、物事には必ず因果関係があるという。

カラスが突如荒らすようになったことには何かの原因がある。

定期テストから現実逃避したいと強く感じている私は、このことについて考えてみることにした。




考察すべきことは、この4ヶ月とそれ以前で変わったことである。

今は毎日サウナのように蒸し暑い7月末。であるなら荒らされはじめたのは3月末からだ。


少し考えれば簡単に結論が出てしまった。そう、新入生が引っ越してきたからだ。

というのも私が住む地域は学生の割合が非常に多く、毎年3月当たりに多くの学生が新しく移り住む。

新入生がゴミ出しの曜日を知らない、もしくは意図的に守らなければ、カラスにとって荒らすことのできるチャンスが増えるだろう。

ああ新入生よ、頼むからしっかりとしてくれ。



私はそう思いながら、この蒸し暑い中日課の散歩を始めた。

空を見上げると、憎たらしくも輝く太陽と共に、カラスの群れが目に入る。

そうだ、新入生が悪いかどうか以前に、カラスが一番悪いのではないか。

ゴミステーションを漁るのは新入生ではない、カラスだ。


そう思いながらも歩くことを続けると,外で和やかに雑談をする二人の老人を見つけた。

この地域には古くから住む人々と、新しく移り住んできた学生に分かれる。

二人の老人はこの地域に古くから住んでいる人々に違いない。


ここでふと、彼らが私のアパート前の惨劇を見てどう思うのだろうと考えた。

おそらくひどく怒りを感じているに違いない。

他所から来た人がゴミ出しのルールを守らないことで、街を汚くされているのだ。むしろ怒らないほうがおかしいだろう。


我々学生がご迷惑をおかけして申し訳ありませんという気持ちを心に秘めながら、私はその場を足早に立ち去った。




散歩から帰ってきたとき、相変わらず荒らされて汚いゴミステーションを見た。

いつもは気にしていなかったが、一枚の注意書きにふと目が止まった。

そうだ、4ヶ月前から変わったことがもう一つあったのだ。


それは「このアパートに住んでいる人以外の方はこのゴミステーションにゴミを出さないでください」と表記された注意書きがゴミステーションに貼られたことだ。

初めて見た時は何も感じなかったが、今思うと近隣の住民が近いからという理由でこのゴミステーションにゴミ出しをしていたに違いない。


そう思うと冒頭に出した結論にやや疑問を感じてくる。

というのも荒らされる以前の方が出されていたゴミの数は多く、ゴミ出しの曜日を守らない人も一定数いたような記憶があったからだ。

そう考えると新入生が悪いという結論も危ぶんでくる。

では急に荒らされ出した原因はどこにあったのか。

カラスが賢くなったから?それも可能性としてはあり得る。


というかここで結論が出たとして私が何かするつもりは全くない。

もうそれでいいのではないのか。

私はそのまま部屋に入り、日常へと戻ることを決意した。




変な考え事をしていた影響か、テストが近づいてきた影響か、特に理由もなく夜更かしをしてしまっている。

時刻は既に夜中の2時だ。

無音が嫌いな私は、BGM代わりにスマホでYouTubeを流す。そこから次のようなセリフが流れた。


「日本人は、性善説を信じる人が多すぎます」


なるほど、確かに私は性善説で物事を考える癖がある。

人間には悪意を持って行動することもあることを忘れがちである。

そんなことを考えていると、外から……例のゴミステーションから音が鳴った。

私は気付かれぬように様子を見た。








老婆がゴミステーションからネット外して去って行く姿。

その表情は笑みに近く、ある種の快感を感じているように見えた。

性善説で物事を考えがちな私にとって、一生忘れられない姿であろう。


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