第3話 恐いお姉さん
そんな生活を送っていたあたしの所に、白い軍服を来た男の人が2人訪ねてきたのです。
「どうも、エクレア・フリッシュさんですね?」
「はいーそうですけど……何か?」
軍人さん2人は私より少し年上のようでしたが、まだ若い人達でした。
彼らの話で要約すると「軍の研究に協力してほしい」という事でした。
あたしは争い事は嫌いだし、軍人さんのやっている事に興味はなかったのですけれど、話の中で妹の事が出てきたのでそこで少し事情が変わってきました。
「妹が、シャンティがどうかしたのですか!?」
「先日魔獣と遭遇して亡くなられた妹さんですが、彼女の遺伝子情報(DNA)を調べた結果分かったことがあるのです」
妹は森で魔獣に襲われて死んだと聞かされていましたが、その亡骸と対面することも出来ず、しばらくその事実を受け入れられませんでした。
つい最近になって、やっと家に戻らない妹のシャンティの居なくなった事を……
居なくなったという現実を受け入れ「もう戻ってこないんだな」と理解しはじめた所だったんです。
「妹さんの事についてですが、これ以上は軍の機密に関わりますので……協力していただけないようでしたらお話できません」
「ど、ど、どういう事ですか!?」(ひぇぇーわけが分からないよー)
ようするに、妹のシャンティの事について知りたければ、戦争のお手伝いをしないといけないようです。
街の住人に軍人さんが話しかけてくる事自体が珍しく、怪しさがはんぱない雰囲気でしたが、自身の家族の事を知りたいという気持ちは抑えられませんでした。
あたしはその後すぐ「軍の研究に協力する」という条件をのみ、2人の軍人さんに連れられて、海を超えた先の研究施設へ行く事になったのです。
(ひえぇぇ、なんか恐いよう。どうなっちゃうんだろうあたし)
★ ★ ★ ★ ★
軍の研究施設に到着して驚いたというか、感想というか。
あたしてっきりこういう場所の軍人さんって武器とかみんな持ってて厳重に警備してて、施設は大砲とか爆弾とかいっぱい置いてあって怖い場所だと思ってたんですけど、特にそういう事もなかったのです。
何の表札もないシンプルで大きな四角くて白い建物内に案内されると、これまた無駄な物の無い机とソファーだけ置いてある応接室に案内されました。
そこには軍人さんっぽくない、一回り年上くらいの一人のお姉さんが座っていたのです。
そのお姉さんはスッと立ち上がると、女の人にしては低めのよく通る声でしゃべりだしました。
「うむ、来たか。私はバウム・アルバート。ここの研究所の責任者だの。聞いているよ、お主がエクレア・フレッシュ君かね?」
「……いえ、微妙に違いますー。エクレア・フリッシュですー」
軽い自己紹介をしてもらったのですが、もしかして人違い? かもしれません。
「うむ、そうだった、そうだった。まぁそこはどうでもいいの。エクレア君。まぁ、かけたまえ。何か飲むかの? コーヒーとかでいいかの?」
「は、はいー」(そこ適当でいいの? それに変なしゃべり方のお姉さんだなぁ)
どうやら人違いではなさそうですけど、不安でいっぱいです。
あと、軍の施設ってもっと厳格というか堅苦しい所かと思っていました。
よく見ると机もソファーも可愛らしい丸っとした梟の絵のデザインになっていました。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございますー」
すぐにさっきここまで案内してくれた男の軍人さんが、飲み物を用意して目の前に出してくれました。
ソファーに座って上目気味にチラッと正面に目をやると、めちゃめちゃ見てます。お姉さん。
(ひぇぇぇなんか凄いプレッシャーだよー)
その全てを見透かされているような鋭い目で瞬きもせず、じっとこちらを見つめていました。
バウムと名乗ったお姉さんは何を考えてるか分からない、正直ちょっと恐い感じの人だったのです。
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感想も待ってます。
この作品タイトルでネタバレしまくりだけど、まぁいいよね。