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第2話 なくてはならないもの



 あたしには『なくてはならないもの』が2つあるんです。


 一つ目はごはん。お腹減りすぎたら死んじゃうからね。しょうがないね。



「……はらぺこつらす。ひぇーん!」



 もう一つは光。暗闇こわい。死ぬ。暗いと死ぬ。


 ただでさえ家で独りぼっちロンリネスなのに夜中真っ暗とか耐えられないんです。


 だから寝る時も必ずランプの火は絶やしません。


 そして、今日もいつもと同じように、壁に飾ってある妹の描いた家族の絵に話しかけるのです。



「みんな、おやすみ」











 ★ ★ ★ ★ ★










「おはよー!」


 誰も居ないレンガの家に響く朝のあいさつ。むなしす。


 あたしには寂しさのあまり独り言をしゃべる癖がありました。



「グゥ……」


 あたしの言葉に返事をしてくれるかのように鳴るおなかの音。


 昨日、泣きすぎて忘れてたけど、何も食べてないや。



「いろいろ辛くてもお腹は減るよ。しょうがないよ……仕事さがそ」


 あたしは妹と違って絵も描けないし、料理も下手だし、昔から忘れっぽいので仕事も全般的に苦手でした。


 出かける為に身支度をして、肩にかかるまで伸びた髪も整えました。



「……えーと、何だっけ? ああそうだ、仕事さがさなきゃ」


 そんなわけで、それからあたしは朝から仕事を探しながら街を徘徊することにしたのです。



「ひぇぇ朝日は気持ちがいいなぁ。ちょっと踊っちゃおうかな」


 あたしは無意味にクルクルと回って、スカートを開いた雨傘のようヒラヒラとさせて舞いながら、この時すでに目的を忘れていたのです。



「あ、エクレアちゃん。今日も元気そうで可愛いねぇ。今朝けさ収穫したばかりのチゴの実、食べるかい?」


 近所で同じように農園を営んでいるシュマロおばさんがそう言って赤くて甘い実を差し出した。


 あたしがいつもお腹をかせているのを知っていて、昔から良くしてくれる優しい人なんです。



「いいの? ひぇぇーたべるー!」


 まだまだ育ち盛りの16歳に断る理由はありません。


 自分で言うのもなんだけど、あたしは近所でも評判のぽっちゃり系美少女だったのです。



 でも、もちろんみんながみんな助けてくれるわけでもなく、ひとりで生き残るためには勉強と仕事は必要なのです。



(あ……この野草食べれるやつじゃない?)



 物心ついた頃から果樹園を手伝っていた事もあって、植物についての知識は豊富でした。


 そう思っていました。



「ひえぇ、くさ~。こっちも生えてる~! あ、こっちも! 生でもいけるかな? いけるよね?」


 あたしは空腹のあまり、ちょっと道をそれた野原でしゃがみこんで朝ごはんをいただくのでした。



「あんがい……食べれるっ。うま、うままー」



「ママー、あのお姉ちゃん何やってるの?」

「しっ! あんまり、見ちゃいけません」

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― 新着の感想 ―
[良い点] この頃から鳴きご…… いやいやいや、泣き声の予兆があるわけなのですね。 「みんな、おやすみ」がちょっと悲しいのです。 ランプの光が彼女の心も照らしてくれますように。
[一言] 果樹園が残っていれば、最悪食事はできたと思うけど…
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