Replete
とある鉄格子の中。
私は、次の言葉を待っていた。
「お前は世界の理を知らない。」
あまりにいきなりすぎて、頭がおかしくなったと思ったのだが、
そのときから数年。未だに、夢から覚めないでいる。
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始めに空。
次に太陽。
そして、緑豊かな草原。
「これは、異常だ」
私は思わず声に出ていた。
灰色の壁に薄暗い照明。
その照明の電気を発電するために毎日モーターを回さなければ光はない。
食べ物だけは定期的に鉄の入れ物の中にあるものを飲み込んでいた。
「きれいだろう。今日からここで暮らそう」
金色の瞳と長い手足の少年は笑っていた。
私は、少年がこの世のものとは思えないという感情だけはそのとき何となくわかっていた。
ただ...
「きれい?よくわからない...」
今、目の前に広がる景色が本当にきれいなのかは自分には全くわからなかった。
すると、少年は
「そうか。君にもいずれわかるときが来るよ」
そう言って、私を強く抱きしめた。
とても懐かしいと思ったのと、頬の部分が濡れてきていることに罪悪感のようなものを感じていた。