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逆襲のモテ太郎

茂木モテ太郎…。彼は助平なナルシストでキモい男だけど根は良い奴なのではないかとウチ、九条るみかは思い始めていた矢先だった。奴は豹変した。


あいつと距離が縮まったきっかけはあいつの従兄弟平松夏美のおかげだ。彼女とは直ぐに意気投合し今はなっちゃん、るっちゃんと呼び合う中だ。


なっちゃんはモテ太郎が高校で孤立していないか心配し、ウチにモテ太郎を気遣ってくれる様重ね重ね頼んできた。


出会って間もない頃ストーカーだと決めつけて殴った後ろめたさもあったし部屋が隣りと言う事もあり、登下校は付き合っていたが、アイツは「俺みたいな冴えない男といると九条さんまで周りに誤解される」とか「九条さんに悪いよ」とか言って萎縮していたのでその度にウチは「周りの目何か気にすんな」「ウチはやりたい様にやってるだけだし」と励ましていた。


ところがこの所「行くぞ!」とか「出発の時間である」とか段々セリフが偉そうになって来て一昨日に至っては「くるしゅうない」とか抜かしやがったんで蹴りとばしてやった。ガタガタ文句抜かしていたが「うるせーもうお前1人で行けっ!」と言って走って離れた。


しかしなっちゃんに悪いと思い次の日も行くと何と引越していた。駅でも見なかったが学校へ着くとムカデの様に長いリムジンが5台程止まっていて赤い絨毯が引かれたと思うと澄ましたモテ太郎が出てきた。


門を開くとSP、メイドを数十人従え学校へ入っていった。


奴に何があったのか?この期に及んでは考えざる得なかった。


ちらっと大きな女生徒が目の前を横切った。

「よ、よお…」

ウチの挨拶に対してギラリといちべつして道元凪沙が通り過ぎた。


道元凪沙…日本最大世界有数の財閥道元グループの1人娘だ。この学園も理事長である引退した彼女の祖父が彼女の為に凪沙が生まれた時設立したらしい。


ちゃっかり一族の権力を行使しつつ不良な彼女は教師を含め誰からも畏怖されている。


モテ太郎に金を握らせ変貌させたのはコイツではないか?刹那そういう考えが頭をよぎった。

「ど、道元、あんたもしかしてモテ太郎に何かした?」

道元凪沙は一瞬怪訝な顔をして振り返ったがフッと笑って言った。

「別に。それより担任の三木元多分面白い事になるぜ」


「え?なんで?」


「モテ太郎だよ。あいつ三木元を恨んでるからな。トイレの件で」

言い終わると道元はスタスタ行ってしまった。


モテ太郎が誰から聞いたのかは知らないが用務員のケチババアに頼んで裏庭に粗末なトイレを作らせたのは三木元なのは周知の事実だった。


三木元は何故かは知らないが極度の男嫌いでモテ太郎の為に女性用トイレを男性用に変更する事に強いヒステリーを起こしていたらしい。それで用務員のお婆さんに強引に頼み込み裏庭に粗末な男子便所が出来たと言うわけだ。


この綺麗な学校に相応しくない汚いトイレの存在は余りにも周囲から浮いていた。否応なしに目立つ男子便所、その誕生過程は誰が言いだしたのか学校中の人が知っていた。


「あれ?」


昼休みトイレに行くとどの個室にも人が入っている。

幸いそこまで急を要する程でもない。また違う時行こうと思った時だった。


ドドっと凄い勢いで三木元が飛び込んできた!

もう顔色どころか形相まで変わっている。

そのままトイレのドアに齧り付く様に次々とノック(殆ど殴りつけていた)した。


「ここもっ!ここもかっ!もう学校中のトイレに誰か入ってるじゃない!もうあそこしかないっ!」


そのセリフの途中で三木元は疾風の如き勢いで出て行った。


あそこ…?まさかと思い中庭を見るとほったて小屋の男子便所に駆け込む三木元が見えた。


<ピンポンパンポーン>

「皆様中庭をご覧下さい。面白い物がみれますよ」


突如学校中に放送が流れた。モテ太郎の声だ。

ほぼ全ての校舎の廊下から中庭は見える。言われる迄も無く誰もが窓から顔を出した。


<パタン>

瞬間ほったて小屋の壁が全て外に倒れた。そこには哀れ三木元が下半身を露出して踏ん張っていた。


「きゃー‼︎」

三木元が悲鳴を上げる!


「ふっふっふ…ババアは上手く支えを倒せた様だなぁ」

いつの間に来たのかモテ太郎が隣りで双眼鏡片手にほくそ笑んでいた。


「よしっお前らもういいぞ」

モテ太郎がトランシーバーでそう言うとゾロゾロトイレからメイドが出てきた。


「モ、モテ太郎、あんたまさか三木元に復讐する為にこんな大掛かりなことをしたわけ?」


「ふっふっふ…そうだ!俺はもう以前の俺では無い。金と言うチートアイテムを大量に手に入れたのだ!この力で俺は全てを手に入れるっ!邪魔する奴は全て葬ってやる」


「なっちゃんが悲しむぞ」


「何を言う夏美も金の魅力には抗えまい。今日にも俺の妻にしてくれるっ!」


魔王風の口調に変わったモテ太郎は高らかにそう宣言すると身を翻し颯爽と去っていった。

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