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一発逆転

九条るみかは仏頂面で玄関につったっている。


「九条さん、何の用?」

「今日お前、ウチの握手会に来たっしょ」

「あ、ああ…」

「ウチがアイドルやってる事、マジで誰にも話すんじゃねーぞ。話したらコロス!」


「いや〜俺口軽いからなー、ちょっとその約束は難しいかな。」

「はっ?」

「何しろキミに殴られた場所が未だに痛くてさー。やっぱ誠意って物を見せてくれないと」


「アレはアンタが怪しい行動して来たからでしょ!あんなん誰だってストーカーか誘拐犯だと思うわよ!」


「はーでも俺どっちでも無いんだよね。つまり俺は自意識過剰の勘違い暴力女の被害者ってわけだ。大体キミのその態度は他人に物を頼む態度じゃないよね?」


「〜ッ‼︎」


九条るみかは唇をギュッと噛んで涙目で此方を睨んだ。


「ぐへへ、本気で謝るんならおっぱい揉ま」


「あらあら〜喧嘩かしら?モテちゃん駄目よ〜女の子泣かせちゃ!」


「‼︎」


「なっ夏姉!」


九条るみかの後ろからひょっこり現れた小さな女性、彼女こそは俺の従姉妹、平松夏美である。


「上がって良いかしら〜」

「ほら、お客さんも!」

「え、い、いやウチは」

返事もして無い内に九条るみかを押して2人一緒に家に上がってきた。


「モテちゃんもうご飯食べた~?」

「あ、いや、まだ」


そしてもう台所に立っている。


俺と九条るみかはいつの間にか、ちゃぶ台がわりの小さなコタツを挟んで座らされている。


「…」

「あの人は俺の従姉妹だよ、平松夏美って言うんだ」


「ふーん、優しそうな人だな。お前随分可愛がられてんだな」


「ああ、俺んち俺が物心ついた時には母親が蒸発しててさ。親父は不器用でつまんねー男で家の事なんかなんも出来ないから5才年上の従姉妹が昔から世話してくれてんだ」


「羨ましいな。ウチの実家は由緒あるデカい家だけどウチ自身に目をかけてくれる人は誰もいなかった」


「そう…なんだ」


「ウチはアイドルになりたいんだ、それが子供の頃からの夢。だけど家族は家と世間体しか気にしない。」


「で、でも九条さんはモデルで有名じゃん。何でアイドルになりたいのさ?」


「小さい頃、日曜の朝やってたブリキュアってアニメあったじゃん、ウチあれに憧れてたんだよね。何かキラキラしてて、いつもニコニコしてて可愛くてさ…」


「そう言えばやってたな、俺その前にやってた仮面編隊ポンチコマン好きだった」


「ふふっ」

るみかは少し笑った。

「それで辛い時、寂しい時もブリキュアを見てる間は忘れられたんだ。でも現実には魔法少女なんていないじゃん?」


「わかんねーぞ、いるかもしれん」

俺は道元凪沙を思い出していた。彼女が変な形のシャボン玉作ったり、それに乗ったり、屋上から飛び降りて無傷なのは魔法としか思えなかった。


「冗談きついっしょ、まあそれでキラキラしていつも笑ってて、誰にでも優しいアイドルにウチはなりたくなったって訳」


「普段からそうしろよ、ギャップありすぎだろ」


「ウチがずっとそんな良い奴でいられる訳ねーじゃん。アイドルるりるりはウチの変身後の姿ってわけ」


「すき焼き出来たわよー♪、コタツの上の物どかしてね〜、モテちゃんの彼女も一緒に食べてって」


「か、彼女じゃねーし」


俺はコタツの上にあった山盛りの宝くじをどかした。

道元凪沙に貰った物だ。


その後も色々話した。夏姉と九条るみかは気が合ったらしく、いつの間にかピーチクパーチク話し込んでいた。俺は黙って飯を食べる形になったが不思議と悪い気はしなかった。


夜も深けて九条るみかが隣の部屋に帰った事にはすっかり俺は眠くなった。


朝起きると置き手紙と朝食が置いてあった。

「ちゃんと掃除と自炊するんだぞか…」


その時インターホンが鳴った。

こんな朝から誰だ、学校へ行かにゃならんのに。


「遅いぞお前、早く支度しろよ」

「えっ何でお前が」

九条るみかだった。


「夏姉からお前の面倒見てやってくれって言われたからな。又遅刻したら校庭に男子トイレ作られる位の嫌がらせじゃすまねーぞ」


「えっアレ嫌がらせだったの?」


「鈍いなーお前、担任の三木元は大の男嫌いで有名なんだから。お前最初から嫌われてんだよ。早く着替えろ!」


一緒に九条るみかと通学したが、冷やかされる事は無かった。ヒソヒソはされたが…女子は陰険だ。

学校では九条るみかはいつものギャルグループに混ざり、話してくる事は無かった。


学校で話しかけてくるのは…「おい!焼そばパン!」舎弟扱いしてくる道元凪沙だった。

無口で表情に乏しい癖にたまに口を開けば命令しかしてこない。

毎日昼にはこうやって俺の分も含めた焼そばパンの代金を渡してきて買い出しに行かされるのだった。


屋上で焼そばパンを2人で無言で食べていると唐突に道元が沈黙を破った。

「今日発表だぞ、折角アタシがやったんだ。一枚残らず確認しろ」


「えっ?何を?」

すかさず頭を叩かれた。


「宝くじだ!無駄にしたら承知しねぇぞ…」

「は、はい…」


俺は涙目でうなづいた。


帰りは1人だった。宝くじの当選番号はネットで見れるらしい。どうせ当たってないと思いつつ一枚一枚確認してしまった。


「ん?」

当選番号が一致してる紙がある。


何度も確認したが全く同じだ。

当選番号は…2000億⁉︎


俺は一夜にして億万長者になった!

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