アイドル九条るみか
見てはならならい物を見てしまったと本能的に思った俺はそそくさと帰る事にした。
しかし、人混みは前へ前へと押してくる。流れに逆らって下がるのは難しい。
やっと人混みから逃れたと思ったらガシッと誰かに腕を掴まれた。
「どこへ行くんじゃ?」
「徳川さん⁉︎いやもうライブも終わりそうだし帰ろうかと思いまして」
「馬鹿言っちゃあいかん!歌の後は握手会‼︎これからが本番じゃ!さあさあ一緒に参ろう♪今なら直ぐるりるりちゃんのオテテ握れるぞぃ☆」
徳川の爺いは老人とは思えない力で俺を引っ張った。
もうこうなったら俺も腹を括って握手するしかねえ。
「いつもるりるりを応援してくれてありがとー♡この前のライブも来てくれたよね♡いつも見てるよー⭐︎」
「はっはふっ!拙者は生まれた日は違えどるりるり様
と同年同月同日に死すべき事を誓いましゅ!」
俺の前にいたファンはそう言ってSPみたいな奴に引き剥がされていった。
徳川の爺いの言う通り直ぐ俺の番が来てしまった。
「ど、どうも…」
俺がおずおずと手を差し出すと、るりるりこと九条るみかはそっと手を取り上目遣いで口を開いた。
「来てくれてありがとー⭐︎又来てくれると嬉しいな♡」
な、何だコイツ。普段の仏頂面からは考えられない位かわいい。しかし俺に気付いてないのか?
「時間です」
ぼーっとしているとSPに引き剥がされた。
「るりるりちゃん!ワシは命ある限り君を応援するぞぃ♪」
「もう時間です!早く離れろ!…くそっ老人とは思えない力だっ!」
爺いがSPに対抗してる間に俺はそっと離れた。
家に着いても俺は未だ今日の事を考えていた。ふーっるりるりちゃん可愛いかったな。
俺は洗濯しようと思って服を脱いだ。ポッケに何か入っている。
見れば道元がくれた宝くじの束だ。
道元に担がれたな。こんなもん一等が当たるわけがない。俺は無造作に宝くじをコタツの上に投げた。
カップ麺を食べてTV見ながらそろそろ風呂に入って寝ようと考えていた時、インターホンが鳴った。誰だこんな夜更けに。
「はーい」
ドアを開けると立っていたのは…るりるりこと、九条るみかだった。