荒海での死闘
波を越えて襲いくる人喰いアメンボ、キライヤ。このしつこい巨大昆虫を海賊を追跡し初めて俺は何匹斬り殺しただろうか?
こいつらは波間に浮かぶ弱った生物に毒のある針の様な口を突き刺して体液を吸うらしい。一匹斬るとたちまち他の個体が群がり斬られた仲間の血を吸う為しばらく時間がかせげる筈だが、だんだん数が増えてきて今はたいした時間は稼げなくなってきた。
「向こうからお出迎えが来たぜ」
カトルもオールでキライヤをぶっ叩いて呟いた。
巨大な軍船だった。
その軍船から小舟が出てきてこちらに近づいてくる。小舟は異様な船だった。船頭と船尾に女がくくりつけてある。女に近づいたキライヤは必死で身を捩る女のシールドに弾かれ道を空けていく。
「成る程、女の強い魔力で船を守ってるわけだ」
俺は船底を蹴ってキライヤの背に飛び乗ると剣の鞘でキライヤのけつをぶっ叩いて敵の小舟のそばに寄ると一気に飛び移った。
呆気に取られる男達に聖剣から魔力を込めた光の斬撃を浴びせ海に叩き落とした。
「うぎゃゃゃゃあ!」
悲鳴とともにたちまち海は血にそまり男達は骨になっていく。
「俺の光の魔力の斬撃で吹き飛ばされても怪我はしてない筈なんだがな」
目を凝らすと小さなヨコエビの様な物がいて海に落ちた人間の肉を喰らっている様だ。男達の弱い魔力ではシールドも練れなかったらしい。キライヤも群がりあっという間に見えなくなった。
そのすきに俺は船に括り付けてあった女2人を解放し、ひっぱり上げた。
女たちは言葉を話す力もなく、弱り切ってぐったりしている。無理もない。女性の魔力は男性より強いとは言っても絶えず魔力でシールドを練るのはとんでもなく集中力がいる。しかも普通の人間はメナや道元、九条やババアより遥かに魔力は弱く、女性でもシールドを練れるかどうかくらいの魔力しか無い。
俺は背後から忍び寄り斬りかかろうとしている男に声をかけた。
「お前!死にたくなきゃ俺の言う事を聞け」
<ガシャーン>
男はびびった拍子に剣を落としたらしい。
「な、何故わかった」
「当たり前だ。お前はあえて残したんだからな。さっさと母船に案内しろ」




