カンブリア外洋へ
出発してから4日目ようやく陸地が見えてきた。逆風の中カトルは小さい帆を畳み全力でオールで波を漕ぐが距離もあり中々つかなかった。一昼夜過ぎようやく陸地に着く寸前舟は何かに乗り上げた。
「やばい!ウミサソリだっ!」
カトルが叫ぶと同時に舟が持ち上がった!
小舟は岩の様な巨大なウミサソリの背に乗り上げ今は怒ったウミサソリのハサミに挟まれ捕獲されている。
俺がすかさず聖剣を抜くと魔石が俺の魔力で白く光り光の刃が聖剣を包んだ。
俺は息を飲むと修行の日、岩をバターの様に切り裂いたムキダッテをありありと思い出した。出来る!今の俺ならば!何故か確信があった。
「ハアッ!」気合いと共にウミサソリの背に飛び一太刀入れると刃の触れていないところまでバックリ割れウミサソリは背中から真っ二つになった。
俺は沈みゆくウミサソリの背に降り立つと舟に飛び移った。
「すごい‥」
カトルが息を呑む。
「これぐらいモテタロー様なら当たり前です。なにしろ選ばれし勇者なのですから」
何故かメナは自慢気だ。
俺は焦げ臭い匂いに気づきカトルに島をみる様に促した。島からはもうもうと煙が上がっている。
「あれはっ!父さん!」
カトルは疲れを忘れた様子で舟を陸につけると慌ただしく火の手ある方へ走って行った。
遅れて着いた俺とメナの目に飛び込んできたのは凄惨な光景だった。黒焦げになった小屋の周りに複数人の死体が転がっている。どうやらカトルの親父は何者かとひどくやり合ったらしい。
カトルは1人1人の死体の顔を覗きこむとポツリと言った。「父さんがいない‥攫われたんだ、あんなに病んでたのに戦ったんだ」
カトルは涙を拭うとまだ燃えていなかった物資をもの凄い勢いで集めると舟に乗せ出した。
暫くして少し冷静になったカトルはキッとこちらを睨むと突っ立っている俺たちを怒鳴りつけた。
「何をぼさっと見てる手伝え!直ぐ出立だ!」
ため息混じりに俺は言った。
「冗談じゃない。直ぐだと?俺は病み上がりでお前も疲れてる、この状態で訳のわからない連中に攫われた生きてる可能性も低いお前の親父を助けに行く為に直ぐまたあの荒波の向こうへ行けってか?海の藻屑になりに行く様なもんだ」
カトルを凄い形相で俺の目の前までくると噛み付いてきそうな顔を近づけて言った。
「ペラペラ喋りやがってそんだけ喋れりゃ充分元気だろ‥テメー本当に玉ついてんのか?」
少女とは思えない言葉遣いだ。
「追うのはいいがお前一人で行け、俺達はこれ以上面倒事に巻き込まれるのはごめんなんだよ」
「いいのかよ?私が居なけりゃお前らはこの島から一歩も出れりゃしないんだよ?」
「はぁ?金は払っただろ。気が済んだら戻ってこい。料金分の働きはしろ」
カトルは巾着袋を出すとそれを俺に突き出して振り絞る様な声で言った。
「2万マギーだ。あんた達も親父を取り戻すのに協力してくれ」
「チッチッチ!」
俺は舌打ちしながら指を振ってカトルを素通りして海とは逆の方へ歩きだした。
メナが俺の後をついてきながらチラッとカトルを振り返りながら言う。
「ちょっと依頼額の桁が違うんじゃないですか?」
「わかった!20万マギーだ!これが私の全財産だ頼む」
俺はニヤリと笑うと振り返って言った。
「10万マギーと2日のこの島での休息だ。それで引き受けてやる」




