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蠢く蟲

カトルと拠点の島に上陸したが、島の小屋にはオルカの姿は無かった。

「あいつあんな状態で移動しやがった!」

カトルは泣きそうな顔で吐き捨てた。父親が心配なのだろう。カトルは船の上の冷静沈着な様子とは打って変わって狼狽え焦っている。


「おい次の島へ移動するぞ!チンタラしてんじゃねえ!」


「ちょっと!いくらなんでも休憩もせず移動なんて無茶です!水も食料も尽きかけてるんですよ!」


「食料なら小屋の床下にある!水は川から汲め!直ぐにだ!」


メナとカトルが激論を交わすのを傍観していた俺は急に腹が痛くなり倒れこんだ。何かが俺の皮膚の下を這いずり回っていやがる!


メナが駆け寄ってくる中、俺の意識は急激に薄れていった。


‥気付くと俺は小屋の囲炉裏の横で寝かされていた。いつの間にか夜もふけ、メナとカトルは囲炉裏を挟んで火を囲んでいる。俺が上体を起こすとすかさずメナが支えて心配してくれた。


「随分惚れてんだな、その男に」

昼間とはうって変わって静かにポツリとカトルは呟いた。

メナは無視している。


「移動しなくてよかったのか?昼間はあれ程焦ってたじゃないか‥」


「移動したかったがその女がお前を庇って断固抗議のしてきたからな、負けたよ‥。それに私も確かに焦り過ぎてた。自然を前に平常心を失うのは危険だった。すまない」


「あんがい素直なんだな、あんた」


「まあね。あんた達、スウィートランドから逃げて来たんだろ?私の両親もそうなんだよ」


「‥この前のお前の話じゃスウィートランドから逃げてフレイムキングダムを目指す様な奴は凶悪犯じゃなかったのか?」


俺の問いかけに対して黙って火を見つめていたカトルだがふと俺に目を向けて答えた。


「マーガレットのマインドコントロールに逆らって打ち消したと言う点では大罪人だな。でも私は両親が間違っていたとは思わない。‥確かにスウィートランドは世界一治安の良い国さ。でも自由は無い。選ばれし城の人々以外は全てマギーの蟲を植え付けられ、感情も行動も支配されているんだ。奴隷と変わらない」


パチパチと薪が爆ぜる音が静寂に響いた。


「スウィートランドの一般市民は全てをマギーに管理されている。それが国や他の人々にとっては正しい事なのかもしれないが、それに抗って自分の人生を生きようとした私の両親を私は否定したくない」


急に吐き気がした俺は用意よくメナが差し出した桶に胃袋の中身をぶちまけた。薄明かりの中目を凝らすと何かゲロの中で弱々しく蠢いている。小さいポイズンコックローチのようだ。

「薬草が効いてきたようですね。きっと直ぐに良くなります。」


「デボンの森を突っ切った事も驚きだが、その程度で済んだ事も驚きだ。あんた余程入念に魔力でシールドを練っていたみたいだな。男にしては中々の魔力だ」


「でも未だ3日は安静が必要です!ニクバエや、シードアブの被害もあるんですから!」

メナがきっとカトルを睨んで言った。


「2日だな。彼女に鍋をよそって貰え。さっさと食って回復しろ」

呆れた様にそう言うとカトルは文字通り匙を投げてきた。

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