襲いくる迷宮、デボン
俺はデボンの森に生い茂る厚いシダ植物やツタをブチ破りメナ共々落下した。
「っつ!」シールドを練っているとは言え庇い切れないダメージが俺を襲う。
いつの間にか背中にいたはずのメナがいない。
「メナっ!」
俺は目を疑った…。メナがいるであろう場所には大量のゴキブリが群がっている。俺はすかさず駆け寄りシールドを手に集中させて練るとゴキブリを掻き分けメナを助け出した。
「…痛っ!」
少しの集中力の欠け、即ちシールドの欠けた右脚の脛部分に鋭い痛みがはしった。このゴキブリ針がある…。良くみると腹にはスズメバチの様な気色悪い模様がある。
「ああああっ‼︎」
突然の目を覚ましたメナが絶叫を上げたかと思うと短剣を取り出し俺の虫に刺された場所を抉った!
「うっうわぁ!何をする!」
メナは答えず、傷口に口付けすると毒を吸い出した。
同時に左腕に括り付けていた盾の魔石が赤く光ると俺を炎属性のシールドが覆った。隙あらば食らいつこうと足元に大量にいたゴキブリスズメバチの群れが燃えてゆく。
「あ、ありがとうメナ、俺を助けてくれたんだね。大丈夫か?怪我はしてない?」
「それはこっちのセリフです。刺されたのはそこだけですか?」
「ああ、そうみたいだ。メナこそ本当に大丈夫か?」
「私の心配は無用です。それよりこの蟲達は迷宮最強の生物、ポイズンコックローチです。じきに仲間が来たらシー ルドでも防ぎ切れなくなります。早く森の海沿いを移動して軍勢を巻いたら海に出ましょう」
あれだけの兇悪な昆虫に覆われて無事な筈が無いのだが実際メナは怪我一つ無い様だ。しかし心配だしメナには聖剣を持たせて俺のシールドで守る事にした。俺が魔力を送ると聖剣の魔石が光り刀身が輝く。そのまま薄く魔力を広げるイメージでメナを包んだ。これは疲れる。鎧や盾とは違い聖剣はそのままでは身体を覆うシールドにはならない。相当な集中力が必要だ。しかも俺の右脛は時間が経つにつれて腫れて歩くたびに激痛がはしる様になってきた。
しかも森の地面は平坦では無く激しい起伏があり、足場もわけの分からない巨大な裸子植物の根がうねうねと占領している為何度も転びそうになりながもメナに支えられて何とか歩いている状態だった。
<ガサガサガサガサガサガサ>
その後ろを川の様にゴキブリスズメバチ改めポイズンコックローチの群れがついてくる。シールドが切れたらたちまち襲いかかるつもりだろう。その川は段々大きくなり時間が経つにつれ海の様にデカくなってきた。何故か奴等は明らかに俺のみに狙いを絞っている様だった。時々何匹か地面を離れて飛んでくるが全てメナが練ってくれた炎のシールドに焼き殺された。
「はぁはぁ…なぁメナ、君は確か水属性の魔女だったよな?何で炎属性のシールドが練れるんだ?」
「今まで隠していましたが私は全ての属性の魔法が使えます。ただこの森を出る頃にはもう炎属性の魔法は使えなくなってしまうと思います。私の魔力には限りがあり尽きると回復しないのです」
「俺の聞いた話しとは随分違う。魔力の属性は必ず1人一つと聞いているし尽きても十分な休養をとれば遅くても3日も有れば回復すると言う事をブルーミーでコッピから聞いたんだけど…」
「私は他の人達とは違うのです」
何故と言う言葉を俺は飲み込んだ。メナのシールドに痺れを切らしたポイズンコックローチが眼前で集結し、巨大なモンスターへと姿を変えたからである。




