恐怖されし迷宮
崖下では突如モテタローの聖剣から発生した大水で馬は暴れ兵は混乱の極みにあった。
「マッ、マギー様!ここも危険でしゅ!退却すべきでしゅ!」
暴れ馬以上にトチ狂ったコッピがマギーに進言する。
マギーは黙って立ち上がり両手を交差させ開いた。するとたちまち押し寄せる水は羽虫に変わり飛び去った。
「ムキダッテ、全軍の指揮を任せる〜↗︎迷宮、デボンの森を焼き払ってでも2人を捕らえなさーい☆」
「はっ!承知致しました」
それを見てコッピはほくそ笑んだ。デボンの森は迷宮と言われる難所だ。簡単に焼き払えるならとっくの昔に焼き払われている。これでムキダッテが失敗すれば流石に奴は失脚するだろう。
「コッピ☆貴方もムキダッテに続くのです。魔女を率いて魔法で兵士を援護しなさーい♡」
「ふっふぇぇ〜!まって!まってくだしゃい!デ、デボンのデボンの森に入ったんでしゅよ‼︎もうモテタローもメナも死んでいるに決まってましゅ!今頃森の猛蟲に骨まで食われて死体も無くなってましゅ!無駄!無駄でしゅ!兵士や魔女も無駄死にでしゅ〜‼︎」
余りのコッピの取り乱し様に慌てて執政官がコッピを諫める。
「コッピ殿!魔王様の御前であるますぞ!控えられよ」
しかし執政官の位は魔人参謀より下である為か控えめなのは執政官の諫言であった。コッピはますます泣き喚く。
「僕は森で死ぬ位ならここで死にましゅ!無理、無理でしゅ〜!」
散々ましくしたてると地面に伏して号泣しだした。
マギーはその様を見て爆笑している。
ムキダッテが険しい顔をますます険しくして衛兵に命令した。
「この乱心者を後方に連れてゆけ」
「はっ!」
2人の逞しい衛兵が遠慮がちに左右から愚図るコッピの手をとり、後方に連れて行こうとした。
「さわるな!自分で行く‼︎」
コッピはその手を振り解くと足早に涙も拭かずしゃっくりをしながら後方へ消えた。
ムキダッテが全軍を率いて進軍を開始すべく前方へ向かうと執政官は深い溜息をついた。魔人参謀の代わりを自分が務めなければならない。恭しくマギーに平伏するとささやかな抵抗を試みた。
「畏れながら申し上げます。乱心なさっていたとは言え魔人参謀殿の仰られた事、一理あると私も思います。あの2人は最早骨も残っていないでしょう。何故この様な命令を下されるのでしょうか?」
「がんばれぇ〜♡」
「承知致しました…」
執政官は鎮痛な面持ちで前線に向かった。
軍勢を指揮するムキダッテだけはいつもと同じ険しい顔つきだ。モテタローと剣を交えた彼だけは知っていた。モテタローは死んではいない。そして眼前に立ち塞がる迷宮以上の脅威を彼に感じていた。ムキダッテには確信があった。マギー様は魔王の本能でそれを嗅ぎ取ったのだと。ムキダッテに迷いは無い。どれ程の犠牲を出そうとモテタローとメナを抹殺しなければならない。




