危険人物
時は少し遡る_…
モテ太郎が逃げた直後ムキダッテは我に返った。いない。モテ太郎の姿が何処にも無いのだ。メナもいない。何故…?一歩ムキダッテが踏み出すと肩の肉が弾け飛んだ。斬られている…それもダメージが後で来る程の速さで。
「ぬうっ!」
ムキダッテは剣を落とし肩の傷を抑えた。考えられる事はただ一つ、モテ太郎…奴のスキルが覚醒した。
それも極めて強力なスキルに違いない。
「近衛隊長!大変です!モテタローの奴が逃亡しました!奴は厩舎の馬を全て解き放ち城は大騒ぎです!」
「直ぐに馬を捕獲しろ!俺はマギー様に申し開きせねばならぬ」
謁見の間には既にコッピがいてマギーにムキダッテの更迭を訴えていた。
「でしゅからムキダッテに近衛隊長と言う大任はおもしゅぎましゅ!これ程の失敗の連続、許されましぇん!」
「許すか許さぬかは魔王であられるマギー様がお決めになる事、控えられよコッピ殿」
執政官の老人が諫める。
「近衛隊長スチル・ムキダッテ、マギー様に拝謁願います」
ムキダッテは睨めつけるコッピを尻目に扉の前で平伏す。
おもむろに扉の左右にいる衛兵がラッパを吹き鳴らし執政官
が叫ぶ。
「魔王マギー様御登殿!魔王マギー様御登殿‼︎」
階段上にある謁見の間の重い扉が開けられ魔王ギータカ・マーガレットが姿を現した。
「ハロハロー☆」
皆平伏し唱和する。
「「「ハローでございますマギー様‼︎」」」
マギーが玉座に座った直後ムキダッテが厳しい顔のまま報告する。
「畏れながら申し上げます。モテタローがメイドの1人と共に逃亡致しました…」
「わぁ〜それって駆け落ちってことすご〜い♡」
マギーは無邪気に目を輝かせた。
コッピが堪らず早口で捲し立てた。
「畏れながら申し上げましゅ!2人の逃亡はムキダッテによる訓練中に起きた事であり、ムキダッテの責任は重大でしゅ!軍規を明らかにし、兵を引き締める為にも早急にムキダッテを厳罰に処すべきだと思いましゅ!」
マギーは返答せず手遊びしている。
沈黙を破ったのはムキダッテだった。
「全てこのムキダッテの責任、直ちに兵を率い全力でモテタローを連れ戻します」
「全力はだめ〜☆2、3名の弱兵に食料、金銭を持たせて追わせる事♡」
常に寡黙にマギーに付き従うムキダッテも不可解な命令に困惑の色を顔に浮かべた。
「し、しかし今のモテタローは力をつけております。それでは捕らえられぬ所か支援する事になりかねません」
「私は愛する2人の逃避行を見たいー!乙女心は敏感なんだぞ♡」
困惑する臣下達を置いてマギーは音楽と共に重い扉の向こうへ消えた。
しかしモテタローが北の国境、赤道付近のデボン周辺に現れた頃マギーは自ら全軍を率い待ち構える体制をとらせた。
「2人の愛をこの目で確かめるぞ♡」と言う理由らしい。




