ケツを拭く紙
俺はトイレで踏ん張ったまま固まっていた。
取り敢えず落ち着くんだと自分に言い聞かせる。
落ち着く為には先ず深呼吸だ。
「すぅー…ッ⁉︎…ごほっごぼっ!」
クセェ!自分の大便の余りの臭さにむせてしまった。
とは言え打開案が幾つか脳内に浮かんできた。以下の3つである。
①手で拭く
②トイレの壁のきったねえムシロで拭く
③こっそり紙を探しに行く
③だ!
俺はトイレから顔を出した。
「⁉︎」
外では今朝のババアがテッシュを差し出していた。
「千円だよ!」
俺はババアの手からテッシュを引ったくり再びトイレへ引っ込んだ。
無事外へ出ると今度はババアが手を差し出していた。
「カネ!」
俺は10円ババアの手の平の上に乗せた。
ババアは素早い動きで懐に10円を入れると又手を出した。
「あと990円!」
「ちょっと待って下さい!一体どうしてポケットティッシュが千円もするんです?」
全くがめついババアだ。
「かばち垂れんな!千円だって言っただろうが!誰がこのトイレを作ってやったと思っとる!テメェが糞ひれるのもワシのおかげなんじゃぞ!」
ババアはいきなり目をひん剥いて怒鳴ってきた。
「おい」
「なっ凪沙お嬢様!」
ババアが驚愕した表情で飛び上がる。
いつの間にか道元凪沙がババアの後ろに塗り壁の如く立っていた。
ババアが小さいせいか道元が余計に大きく見える。
「あこぎな事してんじゃねーぜ、そいつにやった分のティッシュは後でのしつけてやるから失せな」
「ひゃっ、ひゃははい」
道元が凄むとババアはたちまち退散した。
「あっありがとう助かったよ」
俺が礼を言うと道元凪沙は少し頬を赤らめ、顔を少し背けポケットティッシュをぶっきらぼうに渡して口を開いた。
「ああ、先ずはコレでケツを拭いてパンツを履け…」