乱戦
「ひゃ〜⤴︎あぶな〜い⭐︎」
マギーが間抜けな悲鳴を上げる。俺は目を疑った。ボリョクの剣は確かにマギーの首を刎ねた筈だ。しかし剣は煙を裂く様に虚しく素通りした。
「成る程、それが魔神の加護ですか」
ボリョクには動揺する素振りはない。
「魔神の加護…マジで自分の弱点である魔法攻撃以外は全て無効か」
道元凪沙が独り言の様に呟く。
「ボリョク‼︎」
その時ムキダッテが怒声を上げボリョクに斬りかかった。
ムキダッテ渾身の一撃をボリョクは軽く受け止めると腹を蹴りとばした。ボリョクより2回りは大きいムキダッテが吹き飛び地面に叩きつけられた。
「魔王交代の儀の最中ですよ?邪魔しないで下さい」
「貴様…スチル家を師父であるこの私を裏切るのか!」
「…裏切る等とんでもない。私が魔王になる事でスチル家も王族になるのですよ?寧ろ親孝行でしょう」
コッピが叫ぶ。
「皆の者!あの乱心者を斬りすてるのでしゅ!」
その時次々とボリョクが奴の影から湧いてきた。
奴の新しいスキル影分身だ。
「ありがとうモテタローと魔女達御一行。君達のおかげで覚醒したスキルで僕はようやくマギーに挑めます」
大量のボリョクは誰彼構わず斬り掛かってくる。
たちまち辺りは血飛沫が飛び交う凄まじい乱戦となった。
「うわっ!」「ぐえっ!」負けた者の断末魔が辺り一面に響く。しかし大半は、いや全てと言っても良いだろう。ボリョクの分身が勝ち兵士が断末魔を上げていた。
「ここは危険です!お下がり下さいムキダッテ様!」
「ぐぬぬ…」
ムキダッテは歯軋りしながら衛兵達に庇われ後退していた。
「やばいでしゅ!やばいでしゅ!」
コッピは誰よりも早く馬に乗って逃げている。
まぁ無理も無いだろう。兵士の大半は今や俺より弱い。
ボリョクの分身はスキルまでは使えない様だが身体能力や魔力は本人と同等の様だ。悔しいがボリョクは剣術だけ見ても俺より強い。分身とは言え並の人間が敵う相手ではないのだ。
襲いかかってくるボリョクの分身と打ち合い早々にそれに気づいた俺は自分の魔力を防御、すなわちシールドを練る事に
集中し1人も倒さない内に逃げ回っていた。
小学生の頃俺はドッチボールで逃げるのだけは上手かった。ダサいがこれが生き残るには一番の得策だ。異世界の奴らの内輪揉めに巻き込まれて無駄死にしたくはない。
だが例外もあった。
「ふんっ!」
羽の形をした風を纏う大剣ラファルを道元凪沙が振るうたびボリョクの分身が5人纏めて吹き飛んだ。
「オリャリャリャリャ!」
九条るみかはライジングサーベルを目にも止まらぬ速さで奮って次々と分身を斬り殺している。
ボリョクが弱い訳では無い。腕力や剣術と言った純粋な身体能力なら道元や九条よりボリョクは遥かに上だろう。
しかし莫大な魔力を自由自在に操り類まれな戦闘センスをもつ2人にはスキルの無い分身体のボリョクなど敵ではない。
女性の魔力は男より強い。ボリョクも男にしては強い魔力を持っているが女性の中でも別格の魔力を誇る2人には到底及ばない。
しかしアイツらの強さは人間離れしている。とても俺と同い年の女子高生とは思えない。
ボケっと見てたら分身の1匹に斬り殺されそうになり慌てて俺は逃げ回る。
「はぁー、無様じゃのう」
声のする方を見上げるとババアが寝そべりながら雲に乗って低空飛行していた。
「いつの間にそんなとこに行ったんだ!俺も乗せて下さいよ!」
「1000マギー払えば乗せてやる」
この守銭奴は異世界の金まで集める気か。
「払う!払う‼︎」
すると足元に小さな雲がスゥ〜と寄って来た。
俺が慌てて飛び乗るとみるみる上昇し、戦場の中心部が見えてきた。




