揃い踏み
(…っアタシもここ迄かよ!)
ボリョクが剣を振りかざし道元凪沙が絶望したその時疾走する影がボリョクに斬りかかった!
しかしボリョクは難無く片手で受け流して不思議そうに尋ねた。
「おや、貴方は…モテタロー君でしたか?」
「お前は…俺のこの世界唯一の仲間達を傷つけた。その罪この剣で償わせてやる!」
「…貴方はもっと酷い罪を犯しています。それは…」
ボリョクは言いながら一気に間合いを詰めて変則的に下から斬りかかってきた。
「僕より弱いという罪です」
悔しいが剣速、力、技、ボリョクは凄かった。カッコ良く登場したのは良いが俺は既に防御で精一杯だ。
「そろそろその罪を償わせてあげましょう」
剣撃を受けつつ下がる俺をボリョクが追撃する。
その時突風がボリョクを襲った。
「借りは返したぜ。モテ太郎」
道元凪沙の風魔法だ。
「くっ!この程度!」
チャンスだ。怯むボリョクに俺は斬りかかる。
しかし俺の上段からの渾身の一撃を受けつつボリョクは言った。
「やれやれ貴方は本当に弱い。僕のスキルも意味がありません」
「何?」
「私自体の素の力の方が上と言う事ですよ。私のスキル倍化を使うよりもね」
言いつつボリョクは攻撃してくる。
この糞野朗、さっきまでより強くなってやがる。
「ぐわっ!」
ボリョクの剣撃を盾に纏ったシールドで防いだ俺は2、3メートル吹き飛び地面に叩きつけられた。
「今度こそ止めです」
しかし今度はボリョクを雷撃が襲った。
「うおぁ!」
ボリョクは俺以上に吹き飛び地面に叩きつけられた。
「ウチの事忘れてんじゃねーよ」
九条るみかの電撃魔法だった。
「くっ!リョナの奴負けたのですか!」
「ウチの雷撃魔法くらってそこで気絶してるよ。まぁ中々強かったけどウチ程じゃないかな」
「どこ見てやがる」
俺の剣がボリョクを捕らえる。鎧ごと砕いてやる。抜き打ちで胴を撃たれたボリョクは再び地面に転がった。
「お前の相手は俺だ」
ボリョクは辛うじてシールドと鎧で致命傷を避けたらしくヨロヨロと立ち上がった。
「クッ…フハハッ‼︎」
「⁉︎」
劣勢の中突然笑い出したボリョクに俺はビクっと驚いた。
「モテタロー、魔女の魔法に庇われながらビクビクと奮う君の剣がこの僕をここまで追い詰めるとは」
言い終わる前に俺は斬りかかる。
ボリョクも剣を受け、鍔迫り合いになった。
「正直驚きました。おかげ様で新しいスキルに僕は目覚める事が出来ました。」
突如俺は背中を斬られた。
「何⁉︎」
火花が散り衝撃に吹き飛ばされる。驚いて振り返るとそこにはボリョクがもう1人いた。
「名付けましょう。新スキル影分身」
鎧の魔石が金色に光っている。九条るみかが俺にシールドを纏わせてくれたおかげで無事だった。
しかし、只でさえ厄介な奴が増えやがった。俺の額を汗が伝う。ボリョクの分身体は道元やるみかの援護魔法を尽く払ってしまう。分身体は防御に徹している様だ。本体は俺への攻撃に徹している。これで戦況は最初に戻ってしまった。
「やれやれ、やっと貴方を殺せます」
ボリョクの剣術に押され怯んだ一瞬、隙に吸い寄せられる様にボリョクの剣が俺の首を捉えた。ダメだ。シールドを練ろうにも意識が追いつかない。るみかや道元も同じだろう。
「ワシを忘れて貰っては困るのぅ」
一瞬で全てが真っ白になった。それによるボリョクの太刀筋の迷いを見逃さず俺は後ろに飛んだ。
「梅さんかっ!助かったぜ!何をしたんだ」
「何ってワシの属性は雲だぞ、雲を大地に降ろしただけじゃ。今どかしてやるわい。あいつの視界を塞ぐ分以外をな」
視界が晴れると顔面を雲で覆われたボリョクが立ち尽くしていた。俺はすかさず駆け寄り首を刎ねた。
血が噴き出しボリョクの身体が崩れ落ちる。
「モテ太郎!ソイツは分身だっ!」
道元が叫ぶ。成る程本体は分身の遥か後ろで視界を塞がれたまま周りの状況を探り探りこっそりと逃げようとしている。
俺が近寄るとボリョクは叫びだした。
「うおぉぉぉぉお!」
と同時に分身がボコボコと一気に増えていく。しかし増えた分身も本体と同じ様にババアの魔法で視界を塞がれた状況だった。
「「「「「「うおぉぉぉぉお!」」」」」」」
その分身も同じ様に叫び出したちまち増えていく。
増えたそばから斬り殺して行くが最早どれが本体なのかわからない位に増えていた。
「野朗タガが外れやがった。全員一気に消し飛ばす。アタシ達の魔力を重ねて極大魔法を撃つぞ。キリがねぇ」
「モテ太郎〜、ウチらの後ろ迄下がって!」
確かにキリがない。俺は10m程後ろで援護してくれていた皆んなの後ろに下がった。
ババア、るみか、道元が一斉に魔剣を構えて各自適当そうな自分が好きであろう呪文を唱えながら剣を振った。
町を消し飛ばすのでは無いかと思える程の風と雷、黒雲が合わさりボリョクを襲った。
極大魔法は立ち塞がる物を全て消し飛ばし、地面を抉り、遥か彼方まで一本の線を引いた様に同じ状況を作り出した。
いや、奴だけは消し飛ばされずに残っていた。もうもうと上がる土煙の中ただ1人ボリョクだけが…。剣を地面に突き立てしがみつき、辛うじて立っている。黒く汚れた姿を見ても生きているのか死んでいるのか俺にはわからなかった。
<<<パッパパパーン>>>
その時聞き覚えのあるラッパの音が近づいて来た。魔王ギータカ マーガレットのラッパ隊だ。




