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サイテーな奴

__話は道元とモテ太郎が喫茶店を出た時に遡る


ウチ九条るみかは目の前のイケメンに見惚れていた。

「やれやれ、お2人にはフラれてしまった様です。だが貴方は残ってくれた。1番美しい貴方が…お名前、未だ伺ってませんでしたね」


ボリョクは真っ直ぐな眼差しでウチを見つめてくる。

なんだろ、急に胸がドキドキして顔が熱くなってきた。

アイドルと言う職業柄同級生の中では男慣れしてる方だと自分の事思ってたけどそうでもなかったんだろうか。思わずウチは目を伏せてモジモジしてしまう。


「く、九条るみか…です。よろしく」

言い終わるやいなやウチは目の前にあった飲み物を一息に飲み込んだ。


「るみかさん…可愛らしい名前ですね。こちらこそよろしく。るみかさんは強力な魔法使いと聞いてます。是非私の仲間になって欲しい。お願いします」


「えっえっと?仲間って言われても…どうしたら良いかウチ良くわかんないし…」


「単刀直入に言いましょう。るみかさん、モテタローのパーティを離れて僕と行動を共にして欲しいのです」


「そ、それは凪沙ちゃんやモテ太郎、それに梅さんにも相談してから決めるね」


「他の人間はともかく、モテタローに相談するのはいけません。彼も戦力は多い方が良いでしょうから…しかし僕が見るに残念ながら彼は弱い。貴方の魔力をもってしてもカバー出来ない程に。他の国に乗り込んで魔王と戦えば彼は必ず敗れるでしょう。そうなれば貴方の命も危うくなってしまいますよ」

ボリョクのこのセリフを聞いた時、何故だかどこか浮かれてたウチの心はスッと冷静になった。


「もしウチや凪沙ちゃん達が皆んなモテ太郎から離れてちゃったらアイツどうなるの?」


「彼には城に留まってもらうしかないですね。ついてこられても足手まといなだけですから。しかし彼の命を守る為にもその方が良いでしょう」


モテ太郎を嘲笑うボリョクに何故かイラッときた。

「あいつ不器用だけど弱虫じゃないよ。ウチのダチを悪く言うな」


ボリョクは今度はすました顔で飲み物を一口飲んでから静かに話した。

「お気を悪くされたら申し訳ありません。しかし僕は事実を客観的に述べた迄です」


「ふーん、ちょっとウチ、トイレ行ってくるわ」

ボリョクは親切心から話してくれた事なのにカッとなって言い過ぎた。ちょっとトイレで頭を冷やそう。


トイレで手を洗っているとリョナが後ろから現れた。

なんだかジトッとした嫌な目つきで睨んでくる。塩をかけられたナメクジみたいな表情だ。


「良い気なもんね。貴方何様のつもり?」


「はぁ?何が?ウチが何かした?」

言い返すとリョナは凄い形相で一歩じわりと近づいて来た。


「何が?貴方はボリョク様の温かい心遣いを踏み躙ったのよ!今すぐボリョク様に謝るべきよ‼︎」

最初の可愛らしい顔は何処へ置いて来たのかリョナは目を見開き一気にまくしたてた。


「ウチも言い過ぎたかもしれないけどアンタにキレられんのは意味わかんねーし、マジムカつくんだけど?」


リョナはスッと無表情になると、ローブをはだけて腰の剣に手を置いた。剣の魔石が赤く光る…コイツの属性は炎か。


ウチもアクセサリー気分で偶然持って来た魔剣、ライジングサーベルの柄をそっと握った。ウチの剣の柄に埋め込まれた魔石が黄色く光った。


切れる間合いは上背のあるウチの方がある。しかし狭いトイレでは不利かも…静寂の中ウチの脳裏を色々な事がよぎる。そのまま2人はジリジリと間合いを詰めていく。

緊張が頂点に達するかと言うその時、リョナを呼ぶボリョクの声が聞こえた。


「リョナ!何をやってる!早くコッチへ来い!」


リョナはハッとした表情で構えを解いた。

「は、はい!ただ今!」


ウチの方を一瞥するとリョナは舌打ちをし、捨て台詞を吐いて出ていった。

「ちっ!運の良いアバズレね」


「…フぅ〜」

緊張感が一気に解けたウチはその場にへたり込みそうになったが気を取り直してトイレから出た。


席に戻るとボリョクもリョナもいなかった。飲みかけのカップもそのままだし、その内戻ってくるだろう。もっともリョナには戻って来て欲しくは無かったが。


暫くすると二人が戻ってきた。リョナは涙目で鼻を押さえている。ボリョクは険しい顔をしていたがウチに気付くとスッと爽やかな笑顔に戻った。

しかしウチはボリョクが慌てて右の拳をズボンの尻で拭いたのを見逃してはいなかった。


「リョナがルミカさんに大変ご迷惑をおかけした様で申し訳ありません。もう2度とこの様な事が無い様よく言い聞かせました。どうかお許し頂きたい」

ボリョクは申し訳無さそうな表情で深々と頭を下げた。


ボリョクはリョナの方をチラリと見ると刺々しい口調で怒鳴った。

「リョナ!君もルミカさんに謝罪するんだ!」


「やめなよ。鬱陶しい。それに謝られてもウチはもうアンタ達とは旅に出る気は無いし」

自分でもビックリする程冷たい声だった。


「リョナには僕が良く言って聞かせました。もう一度考えなおして頂けないでしょうか?」

ボリョクは懇願する様にチラリとウチを見た。


「リョナの事だけじゃないし。アンタこの子殴ったでしょ?態度で解るわ、2人ともカップルだよね?彼女殴る男とかサイテーなんだけど」


「それは誤解ですよ。それにもし貴方の言う通りだとしても斬り合う事と比べたら躾の範疇でしょう?」

その時店のドアを勢いよく開けて梅子が怒鳴り込んで来た。


「モテ太郎〜!貴様マギーから金貰ったらしいな!ワシにもよこせー!」


梅さんはウチに気づくと老人とは思えないスピードでボリョクの背中に飛びかかった。

「モテ太郎ー!貴様幾らせしめたんじゃ、わしは急な変更だからとか言われて一円も貰えなかっだぞ!るみか!お前も幾ら貰ったんじゃ!」

このババァ完全にウチの前に座っているボリョクをモテ太郎だと勘違いしてやがる。ボリョクは柔和な表情のまま片手で梅さんの襟首を掴み引き剥がした。


「ありゃ?モテ太郎じゃない?」

梅さんが惚けた台詞を言い終わるや否やボリョクはその顔面に鋭いパンチを叩き込んだ。

無言で吹き飛ぶ梅さん。


「やめろー!」

ウチは慌てて向かいのテーブル席に突っ込んだ梅さんに駆け寄る。脈はあるが気絶している様だ。


「アンタッ‼︎いきなり何て事するんだよ!」


「失礼、まさかその薄汚いババアが貴方のお知り合いとは思わずつい暴漢かと思った物で」


ウチは梅さんを抱えると出口を目指した。

「もうウチは城へ帰る。日も暮れてきてるし梅さんの手当てもしなきゃだし」


するとボリョクがウチの前に立ちはだかった。

「僕の仲間になると言うお話しはOKと言う解釈で良いですね?」


「マジで頭おかしいんじゃないの?アンタらみたいなサイテーな奴の仲間になる位なら死んだほうがマシだし」


ボリョクはとても爽やかな笑顔で言った。

「残念です。では本当に死んで頂きます」

刹那ウチはハッとして倒れたテーブルを盾に後ろへ飛び退いた。


次の瞬間テーブルは音も無く真っ二つになっていた。


「何をする⁉︎」


「貴方や道元さんの様な強力な魔女に敵対されると厄介ですから仲間にならないならここで死んで頂きます」


ウチは梅さんをそっと下すとボリョクに斬りかかった。

「雷撃千連斬!」

回すサーベルの軌跡を電撃がなぞる。電撃とサーベルの刃が同時にボリョクに襲いかかる。


「ッ⁉︎」

気づくとウチは梅さんを飛び越え強力な雷の魔力攻撃をくらい店先を破り外の通りに叩き出されていた。

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