告白
「人間⁉︎」
道元の返答に俺は驚愕した。
「ああ、ゴーレムってのは泥人形を依代に魔力を吹き込んで力を与えた物だ。ありゃマギーに蟲を植え付けられた人間だな」
「で、でも城下街の人達とは全然違うじゃないか!」
「確かに街の人間と違ってぶつぶつ言ってるが、表情が同じだ。より強い蟲を植え付けられてんのかもな。他に違うのは健康状態、清潔さ、着ている服…どれも後天的な物だ」
「ッ⁉︎…オエッ」
反射的に俺は胃の中の物を全て地上に向かってブチまけた。
道元は驚きつつ、地上の奴隷にバレない様に急いでその場から離れた。
「何してんだお前⁉︎」
「…ううっ…御免なさい」
「お前顔真っ青だぞ。酔ったのか?」
「いや…違うんだ…」
いつの間にか地上は奴隷がいた畑を遥か離れ見渡す限りの草原になっていた。
「…しょうがないな。そこの小川に降りる。少し休め」
草原の中にある小川は流れがあり澄みきっていた。俺はゲロ臭い口をゆすぎ、顔を洗った。少し冷えた風が頬を撫でる。
心に反比例するかの様な穏やかな景色を見ている内に心中の波も穏やかになってきた。
その様子を見て少し安心したのか道元が沈黙を破った。
「お前どうしたんだ?風邪か?」
「風邪じゃないよ…あの人達を俺は…」
俺は今までの修行の一切を道元に話した。
胸の中から熱い物が込み上げ俺はいつの間にか涙を流し嗚咽していた。
どれくらいたっただろう…いつの間にか小川を照らす光りは赤い夕日に変わっていた。俺はふと自分の状態を恥ずかしく思い、再び小川へ行き顔を洗った。
道元は何を言うでも無く黙っていたが俺が落ち着いた様子を見て再び口を開いた。
「帰るぞ、取り敢えず今日は国境付近まで確認出来た。スウィートランドのヤバさもな…これは大きな収穫だ」
再び道元の剣で上空迄行き、北の方へ目を向けると彼方に富士山の様な山があるのが目に入った。
「あの山の麓が国境だ。フレイムキングダム…炎の魔王ファイドンが治める過酷な北国らしい」
「道元、あの国へこのまま逃げないか?この剣の飛ぶ速度ならあんな場所すぐだ」
「いや、九条やババアを置いて行けない」
「お前の剣なら直ぐ2人を連れて脱出できる!取り敢えず俺をあの国で降ろして後で2人を連れてこればいい!この剣は2人乗りだし。なっ?」
「モテ太郎、お前がスウィートランドに留まりたくない気持ちはわかる。もう人を殺したくないんだろう?だがアタシ達は元の世界に帰る事も考えなきゃダメだ」
道元の言う通りだ。
夏姉の事も何とかしなきゃいけないし、皆んながこの世界に迷い込む原因を作ったのはこの俺だ。
全てを解決する手掛かりはマギーの言う大魔王の力しか今の所無い。何より魔王の影に怯えてネットも無いこの世界で一生を終えるなんてまっぴらだ。
「今の所は波風立てずに言いなりになるしか無い。アタシ達の後ろ盾はマギーしかいないんだからな」
「で、でも次又ゴーレムが来たらどうすればいい?」
「今まで通り斬り殺せ!」
「出来ないっ!そんな事!」
「他人の命の心配出来る身分か?所詮この世は弱肉強食。生き延びる為には犠牲も必要だ」
「…」
非情な台詞を力強く話す道元は俺を励ましたかったのかもしれない。その強さが夕陽より俺には眩しい。
「あれが最初の店だな。降りるぞ」
道元の驚異的な移動速度で地平線の果てに沈んでいたスウィートランドへはあっと言う間についた。未だ夕陽も没していない。店の裏の路地に静かに降り、店先まで回ると思わぬ出来事が俺達の目に飛び込んできた。
〈ボコォ❗️〉
突如店先を吹き飛ばし地面に女が転がった。
「ッ!いってーな!アンタだけは、アンタだけはマジで殺す!」
素早く立ち上がりサーベルを構えた女性は九条るみかだった。




