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遅刻⁉︎道元凪沙現る!

 そっと教室のドアを開ける。しかしそんな努力も虚しく一斉にクラス中の視線が俺に注がれる。


「又遅刻とはどういう事ですか!」


先生…怒ったら美人が台無しだぜ。何て言える訳ない。


「すいません…色々トラブルがありまして…」


「言い訳は結構!」


ガラガラッ‼︎


馬鹿デカい音をたてて誰か入ってきた。

現れた女はミニスカートでヘソ出し短ラン、明らかに不良、しかもふた昔程前のやつだっ!


そして兎に角胸がデカい。


スポブラみたいなタンクトップを着てその下にサラシを巻いているが胸の主張は隠せていなかった。


身長はそれ以上に大きく185cmはありそうだ。


真っ直ぐな黒髪を腰の辺りまで垂らしている。

目も負けじと大きく切長でやや吊り目、精悍な顔付きだ。


長いまつ毛が優雅で顔や鼻や口は小さくて、ダサい格好に関わらず品の良い印象を感じる美少女だ。



「道元さん!貴方も遅刻です!それになんですか⁉︎その態度は!」


「は?文句あんの?」


おいおい滅茶強気だよ…


「と、とにかくこの事は理事長に報告します!」


「勝手にしろや、んな事より早よ授業始めろよ」


「何て言う口の利き方…ま、まぁ良いでしょう授業を始めます」


なんてこった…先生が引いた⁉︎

道元は確かに凄い迫力ある女だが生徒相手にそれで良いのだろうか?


「モテ太郎さん!貴方は後で職員室に来なさい!」


えっ!何で俺だけ⁉︎

この先公、不良に強く出れないからって俺に八つ当たりかよ。


その時道元がドスの効いた声で発言した。


「おい先公よー差別は良く無いぜ、許してやれや」


先生は怒りで震えつつ顔を赤くしている。

しばらく間をおいてようやく絞り出す様に一言発言した。


「席につきなさい…2人とも次遅刻したら赦しませんよ…」


_その後しばらく授業は滞りなく進行した。しかし…


ううっ

汗が引くと教室は暖房が効いてるとは言えまだ4月で肌寒い。


さっき水をがぶ飲みしたせいもあって猛烈に小便がしたくなってきた。


さっき遅刻しといて更に授業の進行を中断させるのは些か気が引けたが、もう膀胱は限界だった。


「すいません!」


俺はオズオズと手を上げ尻すぼみな声で発言した。


「トイレに…行きたいんですが…」


先生は片眉上げ怪訝な顔つきだ。


おもむろに先生は勿体ぶった口調で話し出した。


「モテ太郎さん、貴方はこの学校でただ1人の男性です。なので貴方の為に昨日用務員さんが中庭にトイレを作ってくれました。これからそこを使いなさい」


先生が言い終わらない内に俺は猛ダッシュで中庭に向かった。


中庭にはこの優雅な学園には似つかわしくない汚い小屋が建っていた。


この形はあれだ、工事現場とかにある仮設トイレだ。


しかし仮設トイレよりみずぼらしい、廃材みたいな木とムシロで作られていた。


中に入ると地面に直接穴が掘ってある。


色々な考えが頭をよぎったが尿意が勝った。


俺はションベンはしゃがんでする派だ。


ふぅ…小をしたら今度は大がしたくなった。


…しかしこの扱いは酷いな、今年から共学の筈なのに男子は自分1人、こんな場所で用を足す事を強制されている。


用を足して一息つく時は煩悩も遠ざかり頭も冴え渡る。

いにしえの賢者と呼ばれた人々の頭の中は常時こんな感じだったに違いない。

つまり今の俺は賢者だ!


「…⁉︎‼︎」


賢者と化した俺は大変なことに気付いてしまった。


紙がない!


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