ゴーレム
さっさと出て行った道元凪沙を追って俺も慌てて店を出た。
「ちょ!待てよ」
やっとの事で道元に追いついて裾を引くと道元は鬱陶しそうに振り払った。
「なんだ?」
「い、いや何で断ったんだ?魅力的な誘いだったじゃねーか」
「あのボリョクとか言う男の連れ…リョナと言う名前だったかな?彼奴の様子見たからだ」
「小さくて可愛い娘だったな、それが?」
「オメーは上っ面しか見てねえな。あの女の首にはキスマークがあった。ありゃボリョクとか言う男と出来てる」
あんな可愛い娘が彼女とは実に羨ましい。
「いや、だからなんなんだよ!まさかお前ボリョクに惚れたとか?」
言い終わると同時に腹を殴られた。マジで痛い。
「いって!何だよ」
「なわけねーだろ!あの女、終始ボリョクの彼女の癖に挙動不審な程ビクビクしてた。自分の意見も一言も言わなかっただろ?ボリョクとか言う男は自分の女も大事にしてねー糞野朗ってこった」
「それは唯の人見知りだったんじゃないか?あんだけじゃわかんないだろ。」
「いや、間違いねーよ。アタシは自分の洞察力に自信がある。大体彼女が大事なら彼女の前で他の女に言い寄らない」
確かにボリョクは九条るみかに色目を使ってやがった!九条…そう言えばあいつ妙に静かだな。いっつもうるさいのに。
「身近な人間を大事に出来ない人間がぽっと出のアタシ達を大事にするとは思えない。獅子身中の虫とも言うしな。信用出来ない仲間程怖い者はいない。あんなカスと手を組んだ所で裏切られるのがオチだ」
「成る程良くわかったよ。ところで九条来てなくないか?」
「多分未だ店だろ。るみかの隣りにボリョクとリョナが居たしな」
「そんなカスと一緒にしちゃ不味いだろ!直ぐ店に戻ろう!」
道元はさっと俺を路地裏に引っ張り込むと言った。
「慌てるな。丁度良い。アタシの剣は詰めても2人乗りだしな。来い!ラファル‼︎」
空にキラリと光る物が有ると思ったら、その物体はもの凄い勢いで地面に突き刺さった。それは鳥の羽の様な形をしている道元凪沙の大剣だった。
道元はそれを地面から引き抜くと柄の部分に跨った。
「お前も後ろに乗れ」
言われるまま後ろに跨ったが俺の尻の後ろには薄くても切れ味鋭どそうな刃があるし、道元にくっついたら怒られそうなのでどうして良いか分からず遠慮がちに跨る。
「構わねーからアタシにしがみつけ!振り落とされねー様にしっかり捕まってろ」
お言葉に甘えて俺は道元の腰に手を回ししっかりしがみついた。道元の良い匂いがする。しかし次の瞬間そんな考えは吹き飛んだ。剣が物凄い勢いで空へ上昇しはじめたのだ。
「うわわっ⁉︎ちょいちょい高い早い!」
「落ちたらシールド練っとけ。強く練れれば死なないかもしれん」
チラリと下を見れば街は遥か下にあった。シールド練ろうが即死間違い無しだ。
「何処に行くんだよ。九条の所に行くには大袈裟過ぎるよ。もう過ぎてるんじゃないか?あっあっ落ちる!」
「うるさいな。男の癖につべこべ言うな。るみかの所何か行かないよ。城下町の外へ行くんだ」
道元はぐいぐい剣を上昇させて、ついに雲に突っ込んでしまった。
「うわっ!何も見えないよ!なのに飛ばし過ぎだ!」
「大丈夫だ。アタシの周囲100mシールドを薄く広げてある。シールドに接触する物全て感知出来る!」
「マジで⁉︎俺そんな事出来ないぞ。雲の中は見通し悪いし外に出ようよ」
「お前のレベルと一緒にすんな。アタシのシールドの中にいるからお前生きてるんだよ。じゃなかったらとっくに寒さやら高山病で死んでる。雲に入ったのは監視を躱す為だ。蟲の属性は無脊椎動物を操り、魔王は属性の意識を共有出来る。その辺の羽虫ですら油断出来ねぇぞ」
やがて雲を抜けると一面の畑が広がっていた。
静かに上空20m程まで道元は下降した。
見下ろすとワラワラと汚いボロ切れを纏った人々が働いている。ぶつぶつ言いながら一心に働いていて此方に気づく様子もない。
「ありがとう、ありがとう」
俺はその人々に見覚えがあった。
「ゴ、ゴーレム…」
「ゴーレム?ありゃどう見ても人間だ」




