魔法、その性質
「あーあ、モテタローの所為で顎は痛いし筋肉バカにはマギー様の前で責められるしで最悪でしゅた!」
ようやく現れたコッピはわざとらしく顎を押さえ顔をしかめて俺を見つめてくる。
「魔人参謀様お待ちしておりました。モテ太郎の所為とはどう言う事ですか?」
道元の口調は学校にいた頃とはうって変わって丁寧だ。
「昨日の夜モテタローがいきなり殴ってきたのでしゅ。私は非暴力主義者で優しいのでマギー様には魔法の練習だったと言ってあげましゅた!」
自分の為だろうが!コッピは実に恩着せがましい目で俺を見つつ母親や先生に子供が訴えてる様な調子で道元凪沙に話した。
道元は剣を柱に立てかけ椅子に座って紅茶を一口飲み、カップを置くと俺の方も見ずに口を開く。
「それは大変だ。モテ太郎、魔人参謀様に謝りなさい」
「はぁ?何で俺が」
道元は澄ました顔でもう一口紅茶を飲むともう一度繰り返した。
「自分の立場を考えろモテ太郎。謝りなさい」
「やだ!」
コッピは俺を捨て駒の勇者として使うつもりのクソ野郎。そんな奴に下げる頭何かないしコイツらに媚びても無駄だと言うのが自分の立場を考えた末の俺の結論だ。
「申し訳ありません、魔人参謀様。
コイツは元の世界にいた時から頑固で助平でナルシストなどうしようも無い可哀想な奴でした。
どうかアタシに免じて彼の無礼を赦しては頂けませんか?」
道元は口調こそ丁寧でコッピに媚びている様であったが態度は椅子に踏ん反りかえって相変わらず紅茶をチビチビ啜り、傲岸不遜だった。
「道元殿の程の魔女がそう仰るなら仕方ありましぇんね寛容な私はゆるしましゅ!どうせ短い命でしゅしね」
コッピどころか俺以外誰もまるで道元の横柄な態度に気づいていない。何も知らず2人を見たら偉そうにお茶してる道元が主人でチビで卑屈な態度のコッピが従者に見えるだろう。
多分地位や魔力以上に人間としての威厳に差があり過ぎるせいだ。道元凪沙は意図せずとも自然他人より強い立場になってしまうタイプらしい。
「聖剣の修理が終わりましゅた」
コッピお付きの従者がおずおずと俺に聖剣を差し出す。
「私が遅れた分魔法の練習は延長しましゅ。さあモテタロー、聖剣を受け取りなしゃい」
「これポンコツですよ。刃もついてないし」
「ひゃあ〜⁉︎マギー様が下さった聖剣に何て事を言うんでしゅか!
聖剣がなまくらなのは貴方の使い方が悪いからでしゅ。
普通は鎧も剣も異なる属性の魔力を同時に送れないんでしゅ。
だから援護する魔女も剣士と同じ属性じゃないと同じ剣を強化できましぇん!
しかしマギー様が下さった剣は違う属性の魔女の魔力も同時に送って強化する事が出来るんでしゅ」
コッピはドヤ顔で胸を張る。
「それ凄いんですか?」
「はぁぁぁあ〜⤴︎」
コッピはバカに説明するのは大変だ、信じられないと言う感じで巨大な溜息を吐いた。腹立つわコイツ。
「人は魔石を使えば誰でも魔法を使えましゅが、生まれ持った魔力の属性は変えられましぇん。
魔力属性には相性がありましゅ。例えば火属性は水属性に対して強いでしゅ。水属性から見れば火属性は倒しやすい相手と言えるでしょう。だからこれを『抜群』と言いましゅ。
貴方の光の属性は影の属性と対を成す属性で2つの相性に優劣はありましぇん。この様な関係を『相剋』と言いましゅ。
魔王は自らの持つ属性に対しての『抜群』か『相剋』の属性の魔法攻撃しか一切受付けましぇん。だから魔女の援護と聖剣が必要不可欠なのでしゅ」
「へぇ…」
結局何が凄いのかイマイチピンとこない。
「さぁまずは貴方の魔力を聖剣に送ってご覧なしゃい」
俺が又刀身に集中すると聖剣の魔石が光り、光の刃が現れた。
「しょぼいでしゅね〜。九条殿魔力を送ってやってくだしゃい」
「はーい」
九条るみかがサーベルを握るとサーベルの魔石が黄色く光り俺の握る聖剣の光りの刃の外に電撃がまとわりついた。
「モテタロー、九条殿と心を1つにするんでしゅ」
「えぇ⁉︎そんなん無理ですよ」
俺の意識が逸れた所為か聖剣の光の刃は消え、雷撃が刃の様に刀身に直接生えている。聖剣の魔石もいつの間にか九条るみかのサーベルと同じ色に変わっていた。
「あーあー、もう九条殿の魔力しか聖剣に通ってましぇんよ。貴方も刀身に魔力を送った上で九条殿と心を1つにすれば聖剣は貴方の魔力も九条殿と同じ属性に変換してくれて、もっと強い電撃の刃が出るはじゅなんでしゅ」
「心1つにするとか無理ですよ」
「難しく考え無くても良いんでしゅ。例えばそこの花を斬ろうと2人とも考えて下しゃい」
俺は花をムキダッテの首だと思い剣を握りしめた。
途端に聖剣の魔石の光りは2割ほど増し電撃の刃も強く光り輝く。
「あたぁ!」
ブルースリー風に俺が気合いをいれて剣を振ると斬撃が雷撃となって剣から放たれ辺り一面の花を地面ごと抉り消し飛ばし、遥か彼方の城壁にぶち当たりやっと消えた。
「ああ〜‼︎誰がそこまでやれっていいましゅたか!」
「魔法で直したら良いじゃないですか。しっかし凄い威力っすね。これが聖剣の真の力ってわけですか」
岩ぐらい簡単に切り裂けそうだ。
「8割はウチの魔力だけどねー」
九条るみか。…このギャルどうして他人の喜びに水をさすかね。
「魔法だって万能じゃないんでしゅよ!私の魔力ではこんなにも抉れた地面はなおしぇましぇん!」
道元凪沙がカップを置き立ち上がると大剣を手にしてコッピに言った。
「アタシも手伝いましょう」
道元が杖の様に剣の切先を振るとそよ風が地を撫でる。
「な、なんだ⁉︎」
みるみるうちに抉れた地面が元通りになった。
「しゅっ…しゅごいでしゅ!流石は道元殿!最早私の魔術など足元にも及びましぇぇん」
コッピは平伏する勢いで道元を褒め称え驚愕する。
「道元ってそんな凄いんですか?」
「凄い何てもんじゃありましぇん。あれ程のレベルの魔女は今の時代には魔王以外にはいましぇん。伝説の英雄ゴルドに匹敵する素質があると思いましゅ」
「へぇ…僕も頑張ったら道元レベルになれますか?」
「無理でしゅね。魔法のレベルを馬鹿そうな貴方にも理解出来る様に説明してあげましゅ。
自分の属性の物質をどの程度操れるかで大体魔力のレベルが分かるのでしゅ。
LV1.目の前にある物質を操る事が出来る
LV2.自らの肉眼で見えない距離にある物質を操る
LV3.何も無い場所から物質を生み出す
これを全て魔石有りで出来るのが、私…つまり魔人参謀レベルなのでしゅ。魔石無しでこれが出来る者は魔王レベルでしゅ。
魔王は更に物体を自分の属性の物質に置き換える事が出来ましゅ。
貴方LV1の事象を起こせましゅか?」
「多分無理です。いきなりそんな事出来ないですよ」
「貴方のお友達は全員最初からLV3迄の事象を起こす事が出来ましゅたよ?」
ほほう…じゃあ俺にも出来るかもしれん。
コッピは地面に丸を書いた。
「この中から光を消して真っ暗にして下しゃい」
「⁉︎」
無理だろ…と思ったが一応強く念じてみた。
1分程経過した後、コッピがせせら笑った。
「なーんにも変わりましぇんね」
腹立つ野朗だ。
「そもそも男で最初からLV1すらこなせる者なんて滅多にいましぇん。私だって無理でした。先ずはシールドを練る練習をしましゅ」




