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異世界で独りぼっち。

「久しぶりでしゅ!元気そうでしゅね。逞しくなりましゅたよ。どうやらムキダッテが貴方を殺そうとしているという予想は間違いだったようでしゅね」

その晩訪れたのは襲撃者では無くコッピだった。


「間違い何かじゃ無いですよ!散々メナに現状を伝えさせたのに何でフル無視なんですか⁉︎」


「だって大怪我した訳でも無いじゃないでしゅか。私は剣術や格闘技といった野蛮な暴力行為に関してはズブの素人なんでしゅよ?貴方が無傷なのにマギー様に訴えてもムキダッテに反論されて私の立場が悪くなるだけでしゅ」


「怪我だらけですよ!この前なんか些細な事で殴られて奥歯が吹っ飛んだし、身体中切り傷だらけです‼︎」


「見せてみなさい、なぁんだ親知らずじゃないでしゅか。それも一本だけ。ちょうど良かったじゃ無いでしゅか。切り傷だって10箇所程度4、5針縫っただけ。この程度じゃ訴えても無駄でしゅよ。腕の一本は切られてくれないと。貴方はそもそも軟弱過ぎましゅ。根性がありましぇんね」


俺はコッピの顎に渾身のアッパーを炸裂させた。

コッピは吹き飛び、地面に倒れると殴られた場所を押さえ信じられないという顔で振り返った。

「何をしゅる!」


「歯の一本でも抜けたか?…なんだ一本も抜けてねーじゃねぇか。こんぐらいでガタガタぬかすな根性無しが!」

瞬間足元から巨大なツタが生えてきて俺を吹き飛ばした。


「餓鬼が!舐めた真似しやがって!ドタマかち割るっしゅよ!」


「何事だ!」

塔を揺らす程の尋常ではない轟音に部屋外にいた見張りの衛兵がなだれ込んで来る。


衛兵達はツタでぐるぐる巻きの俺と杖を構えたコッピを見比べると呆れた表現に変わった。

「魔人参謀殿ともあろうお方が私闘ですか?」


「まさか!魔法の訓練でしゅ。…ねぇモテタロー殿」


「…」


「夜更けに我々の管轄の塔でですか?参謀殿の担当の魔法の訓練は明日花の広場にて1時間のみとの報告の筈でしたが…今日はその事も勇者殿に伝えにいらしたのでは?兎に角この事は近衛隊長に報告させて頂きます」


「待って!予行練習でしゅ!いちいち近衛隊長に報告しゅる事はありましぇん‼︎モテタロー、聞きましゅたね。明日昼食後花の広場に来るのでしゅ」

それだけ言うとコッピは杖を振った。たちまちツタは消え俺は床に倒れ込む。

コッピはそそくさと立ち去った。


俺はヨロヨロと立って監視役の衛兵に話す。彼らの内の1人はいつか岩を砕くのを手伝ってくれた兵士だった。

「ありがとう、助かったよ」


「別にあんたを助けた訳じゃないよ。お前のせいで俺は減給になったしな。俺達は近衛兵だし、縁故採用で無能なコッピが嫌いなだけだ」


衛兵と入れ替わりにメナが入って来て俺をベッドに座らせるとキズを見て薬を塗ってくれた。

「いつもありがとう。メナさんがいなかったら俺はとっくに死んでたよ。本当に何てお礼を言ったら良いのか…」


「仕事ですから」

メナは素っ気無く答えると散らかった部屋を片付け初めた。


「コッピは何で引き下がったんだろう?」


「城外の国民は暴力行為は勿論、ネガティブな感情を表に出す事も法律違反な位ですから。訓練でも無いのに暴力を振るえば例え魔人参謀と言えど厳罰になる恐れがあります。この国では現在近衛隊長と魔人参謀の権力争いが激化してますから、ムキダッテ様にコッピ様がモテタロー様に暴力を振るってしまった事がバレればお立場を危うくするかもしれないと危惧されたのでしょう」


「コッピの奴どこまでも自分の立場を守る事しか頭にねーな。しかし俺は何でお咎め無しなんだろう?」


「…おそらくマギー様が任命された勇者ですから。大抵の事は許容されるのでしょう」

メナは歯切れ悪く答えた。その乏しい表情の中に憐れみが浮かんでいる事を俺は見逃さなかった。

それ程潔癖な魔王であるマギーがただで俺の振る舞いを許す筈が無い。


やはり勇者は鉄砲玉なのだ。無事訓練を乗り越えて使命を果たそうとしても他国に乗り込んで王に決闘を挑む役割だ。無事に済むわけがない。どの道死んでしまうから多少の事は大目に見ているという事か。


多分コッピが俺を勇者に強く推したのもムキダッテの息子より俺を選んだ方がコッピにとって都合が良いからだ。


俺がムキダッテの訓練中に大怪我をすれば、コッピはムキダッテを責める格好の口実を得る。


魔王に倒されても素質はあったがムキダッテの訓練が悪かったと言う事が出来る。当然奇跡的に俺が魔王を1人でも倒せば「全てはモテタローを推薦した自分の手柄でしゅ!」とマギーに言うだろう。


となると本当に頼れるのは道元達しかいない。


「おやすみなさいませ勇者様」


「ありがとう」

メナですら仕事だから俺に優しくしてくれるだけなんだ。俺は孤独と布団をまとって眠りについた。

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