殺したい〜修業の日々〜剣術編
スチル流剣術は剣を片手に半身に構え小さな鎧についた盾で防御しつつ敵に斬りかかる戦法が基本である。
攻撃、防御の基本の型は80ある。俺はこれを体力錬成後に何度も繰り返し体が覚える迄教え込まれ反復練習する日々だ。
同時に修業はいよいよ激しさを増してきた。筋肉馬鹿のムキダッテは「敵は此方の都合に合わせて等くれぬ、いつ如何なる時も戦え無ければならん」等と言いだし、寝ている時迄棒を持った衛兵に付け狙わせてくる。気持ち良く寝ている所を思いっきり棒でぶっ叩かれる苦痛は寝込みを襲われた事の無い人間にはわかるまい。
そのせいでぐっすり寝る事も出来ず俺は憔悴しきっていた。
<コッコッコッコ>
素振りしていると足元をひょこひょこと鶏が走り回っている。何だこれ?
「素振りはもういい。この鶏の首を斬れ」
「えっ…何でです。可哀想じ」
その瞬間もの凄い衝撃が脳を揺らした。俺は吹き飛び地面に叩きつけられ2秒程たった後殴られた事に気づいた。
「斬れと言われた物は直ちに斬れ。斬れぬなら手段は問わん!殺せ‼︎…戦闘の極意を忘れたか?2度は言わぬぞ。次少しでも躊躇えばお前を斬る」
何が斬る!だ。偉そうに。その前にお前を殺してやる。しかし未だ正直不意討ちしてもコイツに勝てる気がしなかったので保留するしかない。
その日から1週間程練習の合間に鶏の屠殺を命じられた。普通に鶏を捌ける様になったある日、屠殺対象の鶏は豚に変わった。鶏も豚も衛兵含め俺の晩飯になると言うので渋々殺したが俺は少し肉が嫌いになった。
その晩俺は何故か見知らぬ太ったおっさんの首を刎ねていた。おっさんは血を吹き出したまま走り出す。刎ねられた首は叫んだ。<ブヒィ〜‼︎>
「うわぁぁ‼︎」
俺が悲鳴を上げベッドから飛び起きると正に衛兵が俺の寝込みを木剣で襲おうと側に来ているではないか。
たじろぐ衛兵の隙をつき俺は枕元の剣で衛兵の一撃を練習した型通り受け流し刃を向けた。
「お、お見事です」
衛兵は驚愕の表情でそう言うと部屋から出ていった。
悪夢のおかげで初めて俺は不意討ちに対処できたが、この日以降襲撃の頻度が増した。トイレや風呂にいる時まで突然襲撃してくるので俺は常に剣を携帯せねばならず、聖剣を修理に出す間借りている魔剣を錆びつかせてしまい、ムキダッテに又拳をお見舞いされた程だ。しかし何となくタイミングがわかる様になり、反撃できる事が少しずつ増えてきた。
10回中9回反撃出来る様になった頃、衛兵の木剣は真剣に代わり必死な俺は衛兵に軽い怪我を負わせる事も度々だったがいつ襲われても防御し反撃出来る様になった。
この日いつもの様に豚を屠殺し終わると突然2人に襲撃され、俺はいつも通り防御し反撃する。
「ありがとう、ありがとう、ありがとうございます」
相手はニコニコしたまま、うわごとの様にお礼を繰り返し刃を向けられても構わず襲ってくる。
妙だ。いつもの衛兵ではない。ガシガシに痩せていて肌は日焼けの為か赤黒く、剣以外にはボロをまとっているだけだ。
「斬り捨てろ!モテタロー」
ムキダッテに言われる迄も無く弾みで俺は1人斬ってしまった。そいつは尚もニコニコしながら血を吹き出して倒れこんだ。やっちまった。俺は人を殺してしまった。残る1人は尚もお礼を言いながらニコニコして攻撃してくる。
「そいつらは練習用のゴーレムだ。人間ではない!遠慮なく斬れ!」
ムキダッテの声に安堵した俺は残った1人も本気で攻撃するとソイツは呆気無く斬られた。お礼を言いながら血を流しコトきれる様は実に気味が悪い。
「はぁ、はぁ、はぁ」俺は荒い息を吐きながらゴーレムを見ていたが突然強い殺気を感じ剣を受けた。
「ほう、見事だ。俺の本気の一撃を咄嗟に受けるとは」ムキダッテ…いきなり何なんだ。
「何をするんです!」
「忘れたか?俺は言った筈だ。躊躇えば斬ると!これからはゴーレムが四六時中お前を殺す気で付け狙う…覚悟するんだな」
こいつ、いよいよ俺を殺す気だ。殺されてたまるか!その前に貴様を殺してやる!




