ババア⁉︎
う…ん?
目が覚めると俺は部屋で寝ていた。
「うっ!」
起き上がろうとすると溝落ちが鋭く傷んだ。
見ると痣になってやがる。
そうだ…俺はあの女に溝落ちを突かれて失神したんだ…
るみか、アイツ上から殴ると見せかけて俺が腕でガードしたら、突いて来やがった。
今何時だ?
携帯で時間を見ると7時…
「未だ良いな」
布団に潜ろうとしたが、ふと日付けを見ると変わっているではなイカ⁉︎
俺はそのままカバンを引っ掴んで外に飛び出した!
「間もなくマリアンヌ学園前♡マリアンヌ学園前でございます♡」
呑気なアナウンスだ、イライラする。
駅を飛び出し学校へ向かうが、坂の中腹で俺の体力は尽きた。
「はぁっはぁっ」
思わず膝を地につける。
マジで脇腹が痛え…
ふと顔を上げるとお婆さんがヨタヨタと歩いていた。
そのままお婆さんはフラッと車道にはみ出した。
「危ない!」
俺は咄嗟に駆け寄りお婆さんの手を持ち歩道に引っ張り込んだ。
ブッブー‼︎
トラックが凄いスピードで走り抜けて行く。
間一髪間に合った…
「ひゃ〜死ぬかと思ったわい。お兄ちゃんは命の恩人じゃ」
「危ないですよ、ふらっと道路に出ちゃ」
「昨日の仕事がキツくてなー、まだ体中が痛いんじゃ」
ETの様な顔を更にしわくちゃにしてお婆さんは話した。
驚いた。この歳で未だ働いているのか。
「気をつけて下さいね。じゃっ僕は急ぐんでこれで」
「ちょっと待っておくれ!今ので足をくじいちまったんだよ。職場迄連れて行っておくれ!」
いやいや俺も急いでるんだが…まぁどうせもう遅刻だ。仕方ないな。
「しゃーないっすね。ほれっ乗って下さい!」
俺がしゃがんで背を向けるとババアはひょいと飛び乗った。
あれ?足…挫いたんじゃ…
「ほれっ!ぼやぼやすんな!わしの職場はこの坂の上じゃ!走れ〜‼︎」
幸い学校と同じ方向だ。
時間も今からダッシュすれば間に合うかもしれない。
俺はすかさず走り出した。
はぁ…はぁ
息がきれてきた
でももう坂も終盤だ。
「お兄ちゃんスピードがおちとるぞ!若いんだからドンドン行かんか!」
ババアうるせえ。
汗が目に染みる。酸素が足りない。
もう限界だ。
「お兄ちゃんよく頑張った!ここで良いぞ!」
ババアはひょいと飛び降りた。
「はぁ…はぁ…お婆さん…足は?」
「足?おかげで靴底がすり減らずに済んだわい。ありがとさん♪」
靴底?
だめだ会話が成り立たない。
ババア絶対最初から足大丈夫だっただろ。
ここマリアンヌ学園だ…
門が閉まっている!遅刻だ。
「ありがとなー、ほい飴やるぞい!お兄ちゃんも早よ自分の学校へ行きな」
飴いらねぇ…
「はぁ…はぁ…ぼ、僕の学校もここです」
俺が門に学生証を読み込ませると巨大な門が地響きをたてて開いた。
「ひゃーお兄ちゃん!あんたが今年ただ1人入学したって言うこの学園の男子生徒だったのかい!」
そうさ!俺はエリートなんだ!
驚いたかババア!俺は内心ほくそ笑む。
だがババアの反応は意外だった。
「あんたのせいで昨日の仕事がキツくてワシャ死にかけたんじゃ!御礼言って損した‼︎ 飴返せ‼︎」
そう言うと同時にババアは俺の手から飴をひったくり、スタスタ学園の中へ入って行った。
何言ってんだろう?この老害は。
痴呆なのかもしれない。よく考えたら本当にあんな高齢者がこの学園で働いているとも思えない。
警察読んだ方が良いだろうか?
いや痴呆のババアに何が出来るとも思えない。
それよりこれから教室に入る自分自身が心配だ。
とにかく喉が渇いた。
俺は手洗い場にすがりつき、水をがっつり飲んだ。