スウィートランド
「ようこしょおいでくだしゃいました勇者よ!」
ぴょこぴょこ奇妙な小男が丘を登ってきて挨拶してきた。何だかセントくんとキューピーさんを混ぜたような滑稽で少々気持ち悪い風貌だ。ハの字眉毛で笑っているのに口角が下がっている。舌も足りてないのか呂律もイマイチ回っていない。
「あ、貴方は誰です?ここは何処なんです?」
「よかった言語調整も出来てましゅね、しょれは我らの城に着いた後マギー様が説明してくれましゅ。お仲間はもうひと足先に着いてましゅよ!」
<パプパプー!>
左右の音楽隊が吹くラッパの音が俺をますます混乱させる。何だマギー様って、城って!なんなんだこの小男は⁉︎
夢かと思い何度も頬をつねったり叩いたりしてみたがどうやら現実らしい。
「異世界の人は奇妙な癖があるんでしゅね?なにかのおまじないでしゅか?」
「い、いえ別に…」
「さあ馬車に乗ってくだしゃい。スウィートランド首都ブルーミーまで直行でしゅ!」
しばらく馬車が走ると自分のいた場所の全貌が見えて来た。花畑の丘の南は青い海が広がっているだけだ。
それは絶景だったがそれを楽しむ心の余裕が全く俺にはない。街はどこに行ったんだ!
兎に角何かとんでもない事が俺の身に起こっている事は確かだ。
かれこれ半日は走った。外の景色は変わらない。目の前の小男はコッピと言うらしい。しかし質問すると「それはマギー様が答えてくれましゅ」と言うだけだった。
俺はイライラしてきた。思わず病院から飛び出してしまったがやはり夏姉の事が気になる。こんな訳のわからない場所で小男と馬車で揺られている場合ではない。
「あのー僕はもう帰りたいのですが…」
「帰る?ぶひゃぶひゃうひゃひゃw」
口角を下げたままコッピは不快な笑い声をあげた。
「もうゲートは閉じてるんでしゅよ?どうやって帰るんでしゅ?」
その馬鹿にした様な態度で俺の怒りは沸点に達した。
「うるさい!俺はこんな事してる場合じゃないんだ!」
そのまま馬車のドアを蹴り飛ばすと俺は馬車から飛び降りた。
「あっ!何て事をするんでしゅ!衛兵!奴をとりおしゃえろ!」
たちまち馬に乗った音楽隊兼衛兵に囲まれた。
一斉にラッパを背中に背負い代わりに剣を向けてきた。
「あーあ、魔術もまともに知らない野蛮人はこれだから嫌なんでしゅ、ぴぷでぽぷぷぷぅ!」
信じられない事にたちまち足元の草が伸びツタとなり瞬く間に俺を縛り上げた。
「馬車に運んでくだしゃい。全く手間でしゅね」
俺は観念して黙りこくっていたが、考えるのを辞めたわけじゃなかった。兎に角帰らなければならない。夏姉だけじゃなく、行方不明の皆んなも気になる。しかしここは何処なのか?一連の不可解な出来事はなんなのか?幾ら考えてもわからなかった。
日も落ちかけた頃コッピが口を開いた。
「そろそろつきましゅ」
シュルシュルとツタが解けた。
「マギー様の前で縛ったままだと怒られましゅからね、ブルーミーの偉大さをみなしゃい」
馬車の窓から顔を出した俺は驚愕した。
草原に突如現れた現代日本の建造物に勝るとも劣らない巨大な白い城壁と西洋風の城!
「この城壁の向こうがスウィートランドの首都ブルーミーでしゅ!」




