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6. 男は理屈、女は物理

 おとといのエッセイでは、男女の違いって何だろうというお話に見た目的な話とか好きなもの。行動様式的なお話をしましたよね。男と言えば力強い。女と言えば群れてタピオカ飲みがちとか。胸の有無とかまあ色々と。個人差もあるとは思うけどね。

 でも、そんな見やすいというか露骨な表現以外にもあるだろうって意味で「流血」って観点から話を展開しました。月経っていうことを毎月やっている分、女性のほうが血には強いんじゃないかなとかそういった話ですね。

 まあ結局これも個人差があるんで、正解って断言することは出来ないんですけどね。あくまで傾向として、そうなんじゃねーの? くらいで考えてくれるのがベターですね。


 というわけで前回に引きつづき、今回も男女の違いについてのお話です。ただ今回は血では無くて、ドラマ作品から切り込んでいこうかなっていうイメージで書いてます。


 前回さくっと触れた『おんな城主直虎』。

 大河ドラマって枠で放送されているので、もちろんあくまで話の本筋は歴史についてです。それも主人公が、静岡県西部。現在の浜松市にある小さな谷あいの領主ですので、東海地方の歴史にという部分が話のフォーカスになります。

 

 当然ですけど。、武将や戦国大名がわちゃわちゃ出てたくさん合戦をします。だから、TSって観点と一見するとそこまでつながりが無いように見えちゃうんですよね。……仮にも公共放送なので、こういうデリケートな話題には触れづらいというのもあるんでしょうけどね。


 ただ、この作品。戦国時代のドラマですが主人公は、あくまで女性です。それもお姫様という立場ではありません。領主――いわば城主。戦の最前線に出てはいないものの、準戦国武将と言っても過言ではない。いわば、女でありつつ男の世界を渡り歩いていった人の物語なのです。


 かといって、主人公直虎は、女だけどさも男として振る舞ったのか? いいえ、そんなことは全然無く、むしろ作中でも何度も女の武器を平気で使っています。

 ハニートラップって意味合いでは無いですよ? そうではなくて、尼僧を経験したり、女だからこそ気づく内容。普段は領主でも、尼という立場をフルに使って弱小国衆だった井伊家を立て直すべく様々な策を考えては実行しています。


 なので行動という意味で「あぁ、やっぱりそういうとこは女性よね」っていうところがかなり多い作中で描かれています。一方で、彼女の対になる存在。井伊家筆頭家臣の小野但馬は、論理的で緻密なロジックのもと、同じく弱小国衆だった井伊家を立て直そうと奔走します。


 直虎と小野但馬。女性と男性としての違いが時々浮き彫りになるのは、まさにこの作品の一番の見せどころともいえることです。


 では、具体的にどういう面でそうなのか。前回取り上げた『おなごは血など見飽きている』のシーンは、ワードセンスもそうですが直虎がどうしてそういう言葉を使ったのかという背景まで含めるとすごい分かりやすいです。


 前回軽く触れましたが、改めてシーンの背景を紹介しますね。

 直虎が治める小さな谷あいの地は山がちということもあって、他の領主との境界線が入り乱れています。そんなところに盗賊団が現れ、直虎の領地も他の領主も関係なしに木を切り倒していきます。当時の木は、建築資材にも燃料にも武具にもなることから極めて重要な資材。これを盗まれると非常に困るわけですね。というわけで盗賊を捕まえることになります。

 結局直虎側が盗賊を捕まえて、当時の法律にのっとって処刑することになるのですが直虎は彼と顔見知りということもあって処刑をしたくないと駄々をこねることになるわけです。


 この時、小野但馬は駄々をこねる直虎を無視して秘密裏に他の領主のもとへ身柄を預けて処刑する計画を淡々と進めます。

 人も殺してないし木を盗んだだけで処刑はやりすぎ――と直虎も、現代のわたしたちも思うでしょう。でも当時は、盗賊は処刑するというのがルールであり慣例でした。ここで盗賊を処刑しないと、武家として周囲に示しがつかないのです。


 しかしそれを知った直虎は大激怒。小野但馬をひっ捕まえて猛抗議をするわけです。

 もちろんそれは、理屈を考えれば的外れだし領主失格な行動です。犯罪者を処罰できない領主なんて、腰抜けも良いところですからね。まして戦国時代ですし。この行動ひとつで、周囲の武将から攻め込まれたり、統治能力が無いということで上司たる駿河今川家(=今川義元の一族のこと)に領地を没収されることもあり得るわけです。


 だからこそ、冷静に行動を起こす必要があった。小野但馬の行動は何も間違っておりません。あくまで論理的に、今の井伊家がやるべき統治行為をしただけのこと。それに感情的になる直虎。

 今でも、女性はきゃんきゃんわめく。ヒステリーになりがちって世間的には言われますよね。その一方で男性は冷静で理屈っぽい。だけどもあんまり感情表現もしないしパートナーの女性の話もあまり聞かないとか……まあこれ、女性誌でよく書かれていることなんですけどね。ネットとかによくありますよね、こういうの。一概に言えんだろ、ってわたしは思うけど。

 けど、あながち間違いでもないことですしそう言った意味で男女の違いを象徴的にしているシーンだなって思うことはできないでしょうか。 


 とはいえ、彼女もただ感情的になっていたわけではないのがただの女性では無いというか領主として男性として振る舞っているところ。孫子(=当時の戦争に関するハウツー書)を引用して、むやみに人を殺さないほうがいいと言っています。

 ですが小野但馬は、彼女の言い分をしっかりと全部聞いてあげたうえで盗賊を処刑しないことで起こるリスクをしっかりと説明しています。そして盗賊を見逃すことによって井伊家の跡継ぎをさらわれたらどうするか? と直虎をたしなめています。 ただ理屈で動いているわけでは無い。論理もそうだけど、彼の言葉にはしっかり感情が乗っています。そういうところは男性の特徴だなって思ってしまいますね。


 実はこのシーン以外にも、似たようなところは数多くあります。

 直虎が領主として初めて家臣団の前に立った瞬間。「女が領主なんてありえねーよ」と家臣団に総スカン。その時はカッコよく男らしくさっそうと振る舞っていましたけど、自室に戻るなり荒れる荒れる。

 本社(=今川家)の意向に背いてばかりの直虎が歯向かってばかりなので、本社呼び出し命令が降りたときも政治的に極めてやばい状況なのにやりて女社長(=寿桂尼。今川義元の母で、時の今川家最高権力者)の前で弁解すれば何とかなるよ。女社長とは仲良しだし~って本社に凸っちゃうし。

 かつて将来を誓った幼馴染みが、よそで隠し子こさえた上にその隠し子が目の前に現れたときは直虎半発狂状態でしたからね。

 さらに、商業都市の視察に行ったときは視察そっちの気で南蛮伝来の服に(=ブランド物の服のようなものに)ハイテンションになると。


 くどいようですが、戦国時代の領主は原則として男性がやるものです(※1)。日々領地の取り合いを命を懸けてやっているぶん、女性が出る幕はまずありませんでした。戦争とかもそうですし一瞬の判断ミスが文字通り命取りになります。ゆえに、論理的な判断が最優先されましたし極めて男性的な世界観だったことが予想されます。

 しかしそんな世界に女性でありながら参加する直虎。そうはいっても完全に男性として同一化したわけでは無く、時に女性としての姿や価値観を見せるところもあります。


 なぜこの作品を取り上げたのか、みなさんもそろそろお分かりになったのではないでしょうか。実はこの作品は、こういう男女の価値観の違いや考え方の違いをかなり深く描かれているんですね。所作の違いもそう。

 いくら時代が違うと言っても、男女の本能はそう簡単には変わりませんからね。


 もちろん、男がスカートを履くことを恥ずかしがる。可愛い服を着せられてフリーズする。あるいはその逆を描くことを否定しているわけではありません。男女それぞれに与えられたもの。着るもの、振る舞い、感情――そこからわざと外れた様子を描くから面白いわけですし、その背徳感がTSの醍醐味ですから。


 でもそういう表面をなぞったものでも良いけど、元々は男だった。男ならではの考え方や行動。お元々は女だった。女ならではの考え方や行動。そういったところを深く描写した作品が増えるといいなって個人的に思ったりしてるので、こういうエッセイを書きました。

 まあね、長々くどくど書いちゃったけどね。とどのつまりこう言いたいだけなんです。


 つかね今どきのTSモノ、いくら何でもメス堕ち早すぎでしょ!


 以上。


※1 

 実は男性が領主ってルールが確定したのは、江戸時代のこと。それまでは、女性領主。最高権力者っていうのは意外に多くありました。

 有名な戦国大名駿河今川家も今川義元の時代の前後は寿桂尼という女性が当主を補佐するというかたちで政治に関わっています。実は『今川仮名目録』という分国法。今川領内での法律は、彼女によるものだとか。

このエッセイの方向性が固まりません。真面目路線がおふざけ路線で行くか。

「僕なり。」が真面目な作風だからこっちは多少雑でも良いかなって考えてるけど……一応次回は真面目に創作論にフォーカスを当てようかと考え中。

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