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チェンジ ザ ワールド〈クロノスタシス〉− Change the World〈Chronostasis〉−  作者: めがわるいあきら
第一部 クロノスタシス〈Chronostasis〉編
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17/33

間章 前夜、ある者たちの問い

 夜更けのことだった。

 紺碧《こんぺき》の天蓋《てんがい》の元、風が吹いている。

 涼しいとは言い切れない、肌に纏《まと》わりつく温《ぬる》い風の中。

 そ(・)れ(・)は巍々(ぎぎ)堂々(どうどう)と構える旅館の屋根の一角にいた。

 縁《へり》で器用にしゃがみ込む姿は、時代錯誤《じだいさくご》な忍者の姿を思わせる。

 忍者と見紛《みまが》う理由はもう一つ。

 猫のように丸めてなお大きな上背から、更に大きく突き出て天を衝《つ》く、刀の柄《つか》だ。

 鞘《さや》に収まった刀を背に掛けたそれは、西側にあるはずの角部屋の方を見つめていた。

 そこからは見えないはずの場所を、ただ凝視《ぎょうし》していた。


「−−−−良かったのか」


 不意に、それは嗄《しゃが》れ声で独《ひと》り言《ご》ちた。

 自問、のはずだ。

 けれど、それは誰かに問い掛けているようで。


「…………」


 それきり、それは何も言わなかった。

 肯定の意の沈黙か、それとも深淵《しんえん》なる意図による黙秘かは分からない。

 ふと、それは上を見上げた。

 そこにあるはずの空は無く、〈世界〉がその身で黒にも近い濃紺《のうこん》の蓋をしているだけだ。

 瞳を凝《こ》らせば、それでも大陸のようなものは見て取れる。

 天を覆《おお》うほどのものが上空に来れば、それは新月の時よりも暗くなる筈《はず》なのだが、〈世界〉に限ってはその限りでは無かった。

 光を透過《とうか》しているのか、自身で照らしているのか。

 どちらでも無いように思えるのだが、そうでなければなおも変らぬ明るさを説明する事ができない。

 幾度《いくど》と無く議論を呼びながら未だ解かれぬその問いを思い出しつつ、それは再び西の方を見た。

 もう一度、風が吹く。

 舜転《しゅんてん》。

 それは煙のようにたち消え、その場には誰もいなくなっていた。

 か細く、何処かでひぐらしの鳴く声がした。



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