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チェンジ ザ ワールド〈クロノスタシス〉− Change the World〈Chronostasis〉−  作者: めがわるいあきら
第一部 クロノスタシス〈Chronostasis〉編
11/33

間章 別れ際、門前にて

普段より少し短いですがご容赦ください

 七年前。

  初夏、蝉時雨せみしぐれにはまだ早く、けれど連日うだる様な暑さが続く、ある日の朝方であった。

「「いっぱいお世話になりました!」」


 あどけなさの残る快活な声が二つ、同時に響いた。

 片や人間離れした容姿の少女、片や帆布の竹刀しないぶくろを持った少年。

 まるでチグハグな組み合わせだったが、彼らの息はぴたりと合っていた。


「はい、また来てね二人とも! おばちゃんいつでも待ってるからね!」


 薄紫色の着物を着た女性が、彼らに向かって笑いかける。


「「わかりました!」」


 またも声が重なった。


「はっはっは! 貴己たかみくんと果琳かりんちゃんは元気一杯だな。ウチの子達も見習わせなきゃだ」


 今度はこんの着物に黒羽織くろばおり羽織はおった男性が、闊達かったつに笑いながら言った。


「「ありがとうございます!」」

「うん、元気一杯だ!」


 それは京都南禅寺(なんぜんじ)近くに位置する老舗旅館しにせりょかんの門前。

 その旅館を切り盛りする女将おかみや亭主、その子供達が、さる少年少女を家族総出で見送るところであった。


「大丈夫? 二人だけで帰れる? 送ってあげようか?」

「大丈夫です! お迎えが来てますから!」


 少女が思い切り後方を振りむき、鮮やかな緋色ひいろの髪を振り回した先、街路樹の濃密なアーチが数百メートル続くその出口には、送迎車であるホンダのニューヴィーが見えた。

 そうしていよいよお別れ、となった時、眼鏡をかけた青年が二人の前に歩み出た。


「果琳ちゃん、貴己くん、またね」


 その背後には半ば隠れるような形で双子がいたが、どうやら隠れている訳ではなく、別れるのがさびしくてねているようであった。


「また……来てくれる?」


 双子の片割れである乳白色の髪色の少女が、涙ながらに問う。


「来るよ! 約束したじゃん!」


 その問いに、少年は竹刀袋を背負い直して、決然と答えた。


「ほんとのほんと……? きっとだよ? 望と、お兄ちゃんとの約束も叶えなきゃダメだからね?」

「わかってるよ! だからそれまで希も望も元気でね!」

「「……うん!」」


 今度は双子の声が重なる番だった。


「じゃあね、静くん! 次会った時はきちんと勝負しようね! 私も強くなるから!」

「うん、できるように僕も頑張るよ。それと……貴己くん」


 少年が、緋色の少女と青年が次こそは、と正々堂々の再戦を誓いあう様子を眺めていると、声をかけられた。


「僕との約束、覚えてくれてる?」

「当たり前だよ。どっちが先に使えるようになるか、競争だね!」

「ああ。それで使えなかった方は、使えるようになった方のお願いを聞く」

「お互いが使えるようになったら、お互いのお願いを聞く!」

「忘れちゃダメだよ。僕、頑張るからさ。貴己くんも頑張ってね」

「うん!」


 と、そこまで話したところで、緋色の少女が話に割り込んでくる。


「なになに〜なんの話〜?」

「男の約束!」

「なにそれ〜! 私も知りたい〜!」

「教えないよーだ!」


 それは、遠い日の約束。

 胸に抱かれた約束への期待は、遠く彼方から近付いてくる入道雲の様に(ふく)らんでいった。


入道雲を見て、あなたは期待と不安のどちらを胸に抱くでしょうか。

次話より二章となります。ご期待ください

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