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第六話 : あたし、頭の中がまっ白だ



 真犯人は二日連続で侵入したから、今夜も学校にくるかもしれない。



 だからあたしはお夕飯のあとに家を抜け出し、校門横の壁をよじ登って学校に忍びこんだ。そして開けておいた家庭科室の窓から暗い校舎の中にこっそり入る。



(誰もいないよね……?)



 時間は夜の九時すぎ。暗い校舎は静かすぎて、まるで森の中に迷いこんだような感じがする。どうしよう。ちょっとこわい。急に帰りたくなってきた。



(でも、せっかくだから、ちょっとだけ教室を見ておこう)



 そう思い、ドアをそっと開けてみる。その瞬間、廊下の奥に光が見えた。慌ててドアを閉めて耳を澄ますと、足音が近づいてくる。



(まさか見回り……?)



 すぐに調理台の裏に隠れたけど、心臓がバクバクしてる。ああ、やっぱりさっき帰っていればよかった。両手で胸を押さえても心臓の音が収まらない。しかも足音はどんどん近づいてくる。ドアガラスの向こうに懐中電灯らしき光がはっきり見える。



(おねがい……。早く通りすぎて……)



 しかし次の瞬間、心臓が跳ね上がった。ライトの光が家庭科室に射し込んだからだ。慌てて口を押さえて悲鳴を我慢したけど、心臓がうるさすぎてなにも考えられない。頭の中がまっ白だ。



(見つかったらどうしよう……どうしよう……)



 光はなぜか部屋の隅々を照らしている。


 ああ、あたしはバカだ。こんなところにいるのを見つかったら言い訳のしようがない。誰がどう見たってあたしが真犯人だ。なにも悪いことはしていないのだから、そのままなにもしなければよかった。バカだ。あたしは本当に大バカだ……。



(……え?)



 急にライトの光が消えた。しかも足音がだんだん遠ざかっていく。どうやら見つからずにすんだらしい。



(よ……よかったぁ……)



 体の力が抜けてへたりこんだ。でも、あまりゆっくりはしていられない。こんな時間に見回りをしているってことは、犯人が今夜もくるかもって先生たちも思ったのだろう。犯人だって見回りの先生を見たら、なにもしないで帰るはずだ。



(だったらあたしも、さっさと帰ろう)



 あたしは深呼吸して立ち上がり、急いで窓から外に出た。



 その直後、いきなりまぶしい光に襲われた。




「君。ここで何をしている」




 それは男の人の声だった。


 あたしの体はすくみ上がった。声が出ない。体中が震えている。あたしは懐中電灯の光に照らされていた。なんとか顔の前に手をかざして相手を見る、そのとたん、口の中がカラカラになった。



 その男の人は、制服姿のお巡りさんだった。




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