第四話 : あたし、悪いことなんてしていない
二度目のシャッフル事件のあと、あたしは大人たちに囲まれて応接室に連れていかれた。
寿々木さん。
どうしてあなたの机に端末があったのかしら?
ロッカーを開けたのは誰か、心当たりはある?
脚立がどこにあるか知らないかしら?
学園長の声はとても優しかった。校長先生、三沢先生、お巡りさんもみんな優しく微笑んでいる。だけどこわい。こわくて手が震えてくる。どうしてあたし、こんなところにいるんだろ……。
「わかりません……。あたし、悪いことなんてしていません……」
どうしてかというと答えは明白だ。
誰かが二日連続でロッカーを勝手に開けて、中の端末をシャッフルしたからだ。だから昨日はこなかった学園長も駆けつけて、こんな大騒ぎになったのだ。
「そうですか。分かりました」
学園長は優しく微笑んで、あたしを解放してくれた。応接室にいたのは十分ほどだったけど、ものすごく疲れた気がする。だけど本当に疲れるのは教室に戻ってからだった。
「先生になに聞かれたの?」
「寿々木さんがロッカー開けたの?」
「なんでシャッフルしたの?」
教室に入ったとたん、みんなが波のように襲いかかってきた。しかも質問の中にはあたしを犯人だと決めつけている声もある。あの甲高い声は山森さんだ。あたしは答える間もなく壁際に押し込まれ、おしくらまんじゅうにされてしまった。
ああ、このままだとつぶされちゃう――。
そう思ったとたん、急に隙間ができた。さらに一人、また一人と宙に浮き上がり、横に移動していく。見ると、真歩ちゃんが一人ずつ持ち上げてどかしながら近づいてくる。
「だいじょうぶですかぁ~?」
短い赤毛の真歩ちゃんがまるで天使に見えた。まあ、正体は正反対に近いけど、このさいそれは忘れよう。
あたしはお礼をいって席に戻った。すると今度は祈里ちゃんが電子端末を差し出してきた。
「見てみて」
なんだろ? と思いながら画面を見たとたん、呼吸が一瞬止まってしまった。
そこには学校全体のメッセージアプリが表示されていて、あたしがいない間に数え切れないほどのメッセージが書きこまれている。そしてそのほとんどに、シャッフル事件の犯人はあたしだと書いてあった。