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不思議の国のアリス  作者: 大橋むつお
8/28

8『アリスのミッション・奮闘編』

日本語はむつかしいから間違うてばっかりやねん!

不思議の国のアリス・8

『アリスのミッション・奮闘編』    




 日本でむつかしいこと(アリスの日記より抜粋)


 ☆ピストルを手に入れること(だから、この大阪でも、たいがい気楽に歩いていける)

 ☆日本人の気持ちを正確に知ること(「結構です」はほぼ否定の意味。「びみょう」の意味が微妙に分かりにくい)

 ☆日本人に正確に気持ちを伝えること(なんせ、わたしの日本語は半世紀前の大阪弁。他にも理由いろいろ)


 で、二番目と三番目の問題が、アリスのミッション遂行の壁になっている。

 まず、直球であたってみた。


――ちよこが すきなひとてだれ?――


 テストの最終日、ホームル-ムの時間にメモを回した。ちなみにアリスは、漢字が、ほとんど分からないため、誤解したり、されたりしないために、文章のやりとりはヒラガナを使っている。

「そんなん、言われへん!」

 あとで、あっさり千代子本人に言われてしまった。

 そこで、クラス一番の情報通と言われるマユに聞いてみた。

「うちらのクラスのソシオメトリーについて聞きたいねんけど」

「なに、そのソシオ……とか言うもんは?」

「ああ、つまり……だれが、だれと仲がええとか、気いが合うとか……ええと、こんなん」

 アリスは、クラスの人間全員の名前をざら紙に、ばらばらに書いた。

「たとえば、クラスで一番好かれてる人間を、好いてる人間から線ひくねん」

 で、サンプルに、アリスは、自分の名前から、千代子とマユに矢印を引いた。

「あ、そういうことか」

 自分に線を引いてもらって気をよくしたマユは、なんとクラス全員の名前からアリスに矢印を引いた。

「あ、国際親善してくれるのは、うれしいけど……もっと、なんちゅうか……」

「あ、ラブラブ関係!?」

「声大きい!」

「……まかしなさ~い! 人に見られても分からんように、出席番号でやろか……」

 マユは、またたくうちに、暗号表のようなソシオメトリーを完成させた。

「この色の違いは?」

「ああ、青の方の矢印は淡い片思い。両矢印は淡い両思い。赤は強烈な片思いと両思い」

「この外に向こてるのは?」

「それは、クラス外の子との関係」

「この大杉クンはおかしいやろ!?」

 大杉からは、極太の方矢印がアリスに向けられていた。

「大杉クンて、ウチに一番冷たいよ。なんか無視されてるしい」

「それて、愛情の裏返し。でも言うたら、ブロンドコンプレックス。大杉は、いまだに昭和を引きずっとる」

「マユ、あんたのは、あれへんね?」

「よう見てみい」

 よく見ると、マユの出席番号の真ん中に小さな点が打ってあった」

「この点……なにい?」

「ここから矢印が、はるか空の上、宇宙に伸びていってんねん」

「ええ……?」

 アリスは、マユといっしょに天井を見上げた。

「星の王子さま~な~んてね!」

 煙に巻かれたアリスだが、千代子と東クンが太い青線で結ばれていることが意外だった。

「この太い青線は?」

「ほんまは赤で書いてもええねんけど、この二人は、互いに気持ちがありながら、絶対気持ちを伝えよらへん。で……」

「え……?」

「アリスは、なんで、こんなもん知りたがるわけ? 冷静になったら、ちょっとギ・ワ・ク」

「ああ、シカゴ帰ったらレポート書かなあかんねん。それで、日本の若者の愛情表現をテーマにしよ思て……」

「ああ、留学生いうのんも大変やなあ」

 マユは、意外にあっさりと、この苦し紛れを信じてくれた。アリスは、自分の演技力に自信も持ったが、日本人は、アメリカを簡単に信じすぎるとも思った。


 おっと、問題は千代子と東クンだ。アリスの奮闘は続く……。



アリスは奮闘中!

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