6『OH MY POOR 千代子!』
バレンタインデーが近くなってきたよ。
不思議の国のアリス・6
『OH MY POOR 千代子!』
日本で、笑っちゃうもの(アリスの日記より抜粋)
NHKのアナウンサーの顔(証明写真の動画版みたい。民放でもたまにいる)
キンタローのAKBのモノマネ(彼女六頭身はあるのに、どうして四頭身と言うのかな。立派なダンサーだ)
選挙の演説(ムツカシイ日本語で、半分は意味分からないけど、きっと分かっても分からないだろう)
選挙演説を聴いてる人(エキストラかと思った。大人に聞いたらサクラがいるとか。サクラって何?)
大阪の整列乗車(電車が来たとたんに列が崩れる。千代子は「なんちゃって整列」と言ってた)
ママチャリの3人乗り(ほとんどアクロバット。でも、ホンワカして笑っちゃうんだよね)
ケイオンというポップスのクラブ(なんで、演奏中に観客見ないでノレるのかなあ?)
赤ん坊の笑顔(世界共通。でも、赤ん坊みたいな大人は、別の意味笑える)
テレビのコメンテーター(言ってることが、わたしが聞いても小学生レベル)
地球温暖化を信じてる人が多い(アメリカ人は「どうでもいい」と思ってる。大きな声じゃ言えないけど)
アメリカが日本を守ってくれると思ってる(自分の国をヤバクしてまで、外国のこと守ると思う?)
コメディアン志望多すぎ(みんな笑わす側のコメディアンになったら、だれが笑うの?)
核とロケット技術あるのに、なんで核兵器持たないのか(一発で、日本のポテンシャル上がるのに)
パチンコへのハンパじゃない熱中(あの小さな箱、ほとんどエンタテイメント!)
学校の面接練習(プレゼンテーション能力ない先生に教えてもらってもねえ)
わたしの無責任な感想にうなづく人(しょせんは、わたしの思いつきだからね)
日本で、笑えないもの(アリスの日記より抜粋)
コメディアンのギャグ(日本語にだいぶ慣れてきたけど、やっぱ笑えない。千代子の婆ちゃんも笑わない)
コメディアンみたいな政治家(最初はギャグで真似してんのかと思ったら、本物の政治家だった)
いくら勉強できても、飛び級させない(これって、若者のモチベーション下げてると思う)
日本の地震(一度、震度3を経験。地球最後の日かと思った。わたしのリアクションにみんな笑った)
イジメの認識(bullyingとviolenceは、全然違う。アメリカのイジメもたいがいだけど)
授業で、反対意見ってか、質問できない(社会科でちょっと質問したら、怖い顔で黙殺された)
世界最高齢のオジイチャンがミイラだった(親の年金が欲しいためだとか)
アイドルの子が坊主頭になった(なんかルール違反らしいけど、最初はテロで拉致されたのかと思った)
証明写真撮るとき(なんで、証明写真に自分のブスっとした顔? あ、ブスじゃないから。念のため)
わたしの英語のギャグが通じない(シカゴじゃ、3歳の子でも笑う。6年も英語習ってんのになんで!?)
千代子ママの高校時代の体育祭の写真(スカート穿くの忘れてんのかと思った。ブルマというらしい)
わたしの日記を公表するやつ(作者だからって、なんでもありは無し。登場人物のプライバシーを守れ!)
ハーーーーーーーー
「元気ないやんか、どないしたん?」
「どないもせえへん……」
学校に着くまでに、千代子はもう十回以上ため息をついている。
「そんな顔されてたら、うちまで切のうなるわ」
「ごめん、アリス」
あまりにも心配してくれるアリスに、千代子も黙っているのは悪い気がして、教室に着くと、サッとメモをして見せてくれた。
「読んだら、すぐに破って……」
そう言うと、千代子は机に突っ伏してしまった。
――バレンタイン、ちよこのわたしかた――
メモには、そう書いてあった。
最初のバレンタインが、わたしのファミリーネームでないことは分かった。でも、その後が問題だ。
千代子の渡し方というのは、ただ事ではない。アリスは自分の手をシュレッダーにしながら考えた。日本には卒業式の後のプロム(パーティーみたいな)がない。アメリカじゃ、プロムを大事にしているところがかなりある。いわば大人への第一歩で、アルコールもありだし、なんとなくのボーイフレンドが正式な恋人になるチャンスでもあり……つまり、身も心もくっつくということ。
バレンタインデーは、シカゴではお気楽な遊びみたいなもの。でも、日本では意味が大きい。本命とか義理とかの区別もあるらしい。
そこまで、考えて、アリスは千代子の気持ちを大きく、重く考えた。
――バレンタインで、千代子は愛する彼に、女の子の大事な○○を捧げようとしてるんだ。
バレンタインまで、あと一週間あまり。
親友として、アリスは千代子の力になろうと決心した。
窓の外は、早春の曇り空が広がっていた……。
千代子はホームステイ先のアリスと同じ高校二年生。
その千代子はすごいことで悩んでいた!?