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不思議の国のアリス  作者: 大橋むつお
21/28

21『アリスの本番前』

放送局はだだっ広いのだ!

不思議の国のアリス・21

『アリスの本番前』   



 本格的な放送局は初めてだった。


 子どもの頃に地元のケーブルテレビに出たことはある。それは放送部に入っていていれば誰でも出られるというか、ケーブルテレビの放送時間を消化するためと、地元のPTAから資金援助を放送局が獲得するためのノルマのようなもの。出演した子は、自分の学校の近況報告などをする。

 アリスは、校長先生が近々痔の手術をすることをバラしてしまった。だって、椅子に座るときなどに大変辛そうな校長先生を見ていたので、PTAの聞き耳ずきんと言われていたママから聞いていた真実を伝えなければならないと思った。この放送のお陰で、校長先生は、ボランティアの団体から日本製の「痔」患者専用のドーナツ型のクッションを送られた。

 アリスは一応、校長先生からお礼を言われたが、校長先生の目が笑っていなかったことで、そのときはショックだったけど、校長先生の奥さんから「これで、うちの主人が、座るたんびに当たり散らされることがなくなったわ」という感謝の手紙をもらった。だから、今日も、自分が思う真実のみを語ろうと思った。


 しかし、その大きさと、廊下の複雑さには圧倒された。ADさんに案内されて、楽屋に行ったが、直前に二点確認した。

「お便所と非常口はどこですか?」


「こんにちは」と言って入ると、もう十人ぐらいの外人さんがいた。「おはようございます」と返す業界に慣れてしまった外人さんもいた。直ぐ後に、桂米国さんがディレクターの人といっしょに入ってきた。

「おはようございます。お揃いのようなんで、ざっくり説明させてもらいます。アイドルグループに賛成や言う人は、あっち側の化粧前に、反対や言う人はこっち側の化粧前に座ってください……」

 あとは、どの程度日本語が分かるのかとか、使ってはいけない言葉とか説明された。

「ほんなら、別れて座ってください……あ、あなたらはどっち側?」

 アリスは、反対でも賛成でもなかったので、真ん中に残った。

「ウチ、どっちゃ側でもないんですわ……」

「え……」

「ほら、面白いわ。前田さん、真ん中席いうのん作りましょ!」

 米国さんが、おもしろがって提案したのが、直ぐに採用された。

「ところで、あんた、どこの国の人」と、千代子を見てディレクター。

「この子、河内の国」と、千代子を指してアリスがかえす。


「大阪の放送局は、台本ザックリやからな。気軽に言いたいこと言うたらええで」

「ウチ、言いたいことまとめてきたんですわ!」

 アリスがA4で30枚の原稿を出すと、ディレクターも米国さんも、驚いたり、面白がったり。


 それから、なんとメイクさんがやってきて、メイクと髪のセットをしてくれた。千代子は正直に付き添いであると言ったので、なんにもなし。

「千代子、黙ってたらメイクしてもらえたのに」

「ウチは、そんな……」

「河内の国で通したら、面白かったのに……」

 そんなバカなことを言っていたアリスだが、ADさんが「あと、三十分でスタジオ入りです」と告げにきてから、心臓が踊り出した。

「アリス、緊張したら、可愛いなあ……!」

 確かに、ブロンドの色白。それが、緊張のあまり頬を赤く染め、目が潤んでくると、たしかに可愛い。しかし、本人はそれどころではない。さっきから、千代子やアジア系らしい外人さんがシャメを撮りまくっていることにも気づかない。

「うち、もっかい、お便所行ってくるわ」

「アリス、三回目やで」

「こればっかりは、代わりに行ってもらうわけにはいかへんさかい」


 廊下に出てびっくりした。廊下をAKR47のメンバーが、こっちにやってくる。

「ウワー、ほんまもんのAKRや……!」

 AKRもビックリした。廊下の真ん中に、可愛い(半分、緊張のあまりだが)制服姿のフランス人形のような外人の女の子が突っ立っているのである。

「わー、カワイイ!」

「どこの、国の人?」

「同じ番組に出るの?」

「制服、自前?」

「日本語、分かります?」

 質問攻めになった。

「ウチ、シカゴから来たアリス・バレンタインていいます。アハハ……かんにん、お便所いくとこやさかい!」

 アリスは、トイレに向かって突進した。

 背後でAKRの子たちの明るい笑い声。フランス人形のようで、女子高生の制服。それがカンペキな大阪弁で、お便所に突撃。このギャップは、笑ってしまう。

 しかし、そのアリスが、一時間後に、大演説をするとは、本人も含めて、だれにも分からなかった……。



アリスの演説って!?

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