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不思議の国のアリス  作者: 大橋むつお
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2『TANAKAさんのオバアチャン』

アリスはアメチャンキャンディーをもらって嬉しかったがフウゾクが分からない。

不思議の国のアリス・2

『TANAKAさんのオバアチャン』    



「やあ、かいらしいわあ。あんた外国の人?」


「はい、うちアメリカからの交換留学生ですねん」

 こういうことは、日本に来てから度々ある。おもに制服を着ている時だ。

「大阪弁じょうずやねえ」と言われることもある。

「おおきに、うち大阪出身のオバアチャンに習ろたさかいに」

 こう答えると、日本人のクオーターと間違われることもあるので、隣のオバアチャンと言い直す。

 時には、アメチャンキャンディーをもらえることもある。隣りのTANAKAさんのオバアチャンも、よくアメチャンキャンディーをくれる。そのことをオバアチャンにメールで伝えると、


――オオサカジンノ、ジョウシキヤ(^0^)!――


 嬉しそうな返事が返ってきた。TANAKAさんのオバアチャンには。事あるごとにメールを送っている。アリスはカタカナとヒラガナしか分からないので、いつもカタカナのメールでやりとりしている。

 ウォシュレット初体験の話は、オバアチャンにすごくうけた。お葬式の霊柩車の話は残念がっていた。でも喪主である奥さんのミステリアススマイルが、日本人のオクユカシさからではなく、多額の保険金が下りるためだという千代子パパの説明は書かなかった。


 アリスのブロンドの髪は、当然なにも言われなかった。どころか、羨ましそうにさえ見られる。

 ある日、隣のクラスの女の子が、ブロンドほどではなく、上品なブラウンに染めてきて叱られるのを見て、変に思った。そりゃあ日本人のブルネット(日本人はブラックと思っているらしいが、たいていはブルネット)はいい。なんといっても顔がくっきりと引き立つ。目だってそうだ、ブロンドの眉は、光の当たり具合では無いように見えてしまう。でも、髪の色は個人の自由だと思った。オバアチャンにメールすると、

――ヤマトナデシコ ノ カミノケハ カラスノヌレバイロガ イチバンヤ!――と、返ってきた。


 そのブラウン染めのことがあった週の学年集会。あ、アリスは学年集会とかで、軍隊みたいに並ばされるのが、まだスッキリしない。

 で、学年集会での話が、スッキリしなかった。

「バイトは、かめへんけど、風俗はあかんぞ!」

 生活指導部長の先生の、この話が分からない。

 まず、生活指導そのものが分からない。一度、英語の片岡先生に聞いたことがある。

「うーん、スクールポリスみたいなもんや」

 いつも忙しそうにしている片岡先生は、一言で教えてくれた。

 それで納得したんだけど、そのスクールポリスは制服も着ておらず、授業を教えに来たので二度びっくり。

「なんで、スクールポリスのオッチャンが授業しにくるのん?」

「そやかて、先生やもん」千代子は不思議そうに答えた。

 それで、TANAKAさんのオバアチャンにメールした。

――ソラ クンドウヤ――

 クンドウは、さすがに分からなかったので、ウィキペディアで調べた。「訓導」と漢字で書いてあり、戦前にあった、生徒の躾や風紀を教える専門の先生であることが分かった。それにしてもエラソーなところは、感情的には理解できなかった。

 

 で、風俗である。


 アリスの日本語の理解では、風俗とは「manners and customs」または「native customs」のことであり、その土地のマナーや習慣、文化のことであり、感じとしてはマナースクール、あるいはアンティークの店のイメージだった。

「なんでやろ?」アリスは不思議だった。で、千代子に聞いたら「ねえ」ととなりのミユちゃんに目配せして教えてくれない。で、また、忙しそうにしている片岡先生に聞いた。


「そら、sex industryのこっちゃ!」


 アリスの顔は真っ赤になった。片岡先生にたどりつくまで、フウゾク!? と叫びまくっていたから。


 でも、アリスの好奇心は収まらず、動画を見たり、千代子パパに聞いたりしたが、はぐらかされたり、きわどい答えしか返ってこないので、TANAKAさんのオバアチャンにメールした。

 オバアチャンは、わざわざ電話してくれ、本にしたら一冊分ほどの話をしてくれた。

 オバアチャン自身、アメリカに移住して今の生活になる理由の一つがそれらしかった。

 アリスは、日本での研究の一つにしようと思った……。



次回はアリスの伯父さん登場!

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