カボチャ少年
昔、あるところに一人の魔女がいました。
魔女には代々門下生として数人の魔法見習いを雇うのですが、彼女には興味を持つことはありませんでした。魔女…ミドナは人間よりも魔法を持たない生物カボチャ人形に恋をひそかにしていました。
ミドナが幼いころ、師匠から魔法のカボチャのことをよく耳にし、カボチャに対して愛情を持っていました。
ある日を境に、ミドナは急病で倒れてしまい、自身がもう長くはないことを悟りました。
片隅の椅子の上に腰かけるカボチャの人形に目を配り、後継ぎとして自分を知ってもらおうと禁忌である魔法をカボチャ人形に授けました。
意識を持ったカボチャ人形はミドナを親として、一緒に暮らし始めました。
2か月ほどしたある日、ミドナの病が悪化。
事の出来事を知ったカボチャ人形はミドナのためにと薬草を探しに出かけました。山を越え、海を越え、知らない大地を超え、ようやく薬草を手に入れました。
家に帰ると、そこにはミドナの姿はありませんでした。
あるのは、カボチャ人形に宛てた手紙と何かと争った部屋の様子だけが残されていました。
『あなたの名前、ジャック・オ・ランタン 私の最愛の弟子として息子として名を残します』
ジャックは泣いた。
名を与える行為は正真正銘として魔法の資格が与えられたことを示します。しかし、名をくれたというよりもそこにミドナの姿がなく争った後だけを残した痕跡にジャックは泣きました。
『ミドナをひとりにするんじゃなかった…』
と、一緒に暮らしている間、ジャックはひそかに気づいていました。
ミドナは時々、窓の方へ視線を向けては安堵し、怯えていたことに。
魔法の術と名をもらったジャックはミドナを探しに旅に出かけました。
ゆく宛ても探す当てもままならない世界へただひたすらミドナを探しに放浪の旅をつづけました。
(省略)
途中で出会い、同じ境遇をもつ人形たちと出会い、ジャックは少しずつ学び理解していきます。
ある山に住まう魔女の噂を聴き、ミドナだと思い、山に登りました。
そこには、ミドナがいました。
ただ、外見だけ似ていて姿は別物でした。
ミドナの存在を訊くと、魔女は優しく教えてくれました。
それは、ジャックにとっては訊きたくない内容ばかりでした。でも、命を与え育ててくれたミドナは決してそんな人ではないと心の中で叫び、ミドナから受け継いだ魔法で魔女に対抗します。
三日三晩続いた夜。とうとう魔女は地に落ち、ジャックはボロボロになっていました。
魔力が底をつき、意識がもうろうとする中、魔女から一言耳にしました。
それは、ジャックが探していたミドナ本人からの言葉でした。
『強くなったね、ジャック。わたしはもう、何もできない。わたしの代わりにジャック(あなた)に、お願いがあるの。わたしを封印して、この地で、もう悪の魔女を生み出さないように…』
と、優しい声だった。
ミドナの声、そう涙をうかべつつ、ミドナの方へ歩き出すが、ミドナと思われたものは再び表情をこわばり、ジャックに威嚇します。
『来るな! 毛皮らしい人形め!』
ジャックはひるむことなく、魔女に近づき、こういいます。
『もう、ひとりじゃないよ』
ジャックがやさしく魔女に抱き付くと、魔女は悲鳴を上げながら、光になって消えて行ってしまいました。残されたのは、ミドナがジャックに上げるはずだった服だけが残されていました。
ジャックは涙をのみ、残された服をぼろぼろになった服と取り換え、ミドナの願い通りに山に封印し、ジャックは新しい地を目指して、再び旅立ちました。