戻って来たカルエ
「ふっふっふ。そんなもので倒せる訳なかろう」
魔王はまだ死んでいなかった。確かにダメージを与える事は出来たが、それでもなお魔王は立っていた。おそらくもうタクヤは魔力切れだろう。そうなるともう魔王を倒せる方法を思いつかない。
「やっぱこれでもダメか~。じゃあアレを使うか」
「アレ?」
「エルゼ準備は良いか?」
「もちろん」
「じゃあ。皆さーんオッケーですよー!!」
皆さん?一体誰のこと?と思った瞬間突如魔王軍が出現した。
「じゃあちょっとよろしくねー」
「「「「「おおおおぉ!!」」」」」
「なっ!これは…」
『テレポート』
そこは先ほどいた城だ。何故ここにと思ったら、
「やっと来ましたかタクヤ」
「わりぃちょっと遅れた」
そこにはカルエが立っていた。
「カルエ!」
すぐにポピィンちゃんが剣ををかまえたがタクヤがすぐに止めた。
「なにすんだよタクヤ!こいつは私たちをうらぎ…」
「いや、今は俺たちの味方だ」
え?どう言うことだ?カルエは私たちを裏切ったはずじゃ…
「カルエは昨日俺の所に相談に来たんだ。俺たちを裏切れないってな」
昨日?私がタクヤの部屋に行った時か?
「え?じゃあカルエが裏切ったのを知っていたのは…」
「あぁカルエから聞いた。まぁ聞く前から何かあるとは思ってたけど」
「ポピィンさん、魔王軍を操る魔道具を作ったのは私です。本当にごめんなさい。もちろん誤って許されることでは無いことぐらい分かってます。ですから…」
「もういいよカルエ」
ポピィンちゃんは笑顔で、
「起きちゃった事は仕方ないことだし、それにまた戻って来てくれたしね」
私はポピィンちゃんの器のでかさを改めて知った。
「あ…ありがとう、ポピィンちゃん」
カルエは泣いていた。
「いい感じな所申し訳ないですが、これからの事を話さなくても」
「あぁそうだなわりぃ」
そう言ってタクヤはこれからの事を話した。おそらくこの作戦で勝てなかったらもう世界は終わりだろう。
『テレポート』
サルエと魔王が移動してきた。
「遅いですよサルエ」
「わりぃな姉ちゃん手こずってしもうた」
そしてサルエは私たちを見て、
「流石姉ちゃんやな。全員捕まえてしもうたか」
そう私たちは朝と同じように捕まっていた。
「どうや兄ちゃん。流石に壊せないだろ」
「クッ」
「じゃあ早く処分しましょう」
「そやな」
そう言って魔王は剣を振り上げた。次の瞬間私たちは斬られた。はずだった。しかし私たちに傷は無く、変わりにカルエの腹から血が大量に出ていた。
「ぐふっ、な…何故…」
「姉ちゃんには言ってなかったけどここで分かれる前に盗聴器を仕掛けてたんよ」
なるほど…だから…
「お前が囮になって、兄ちゃんたちと魔王軍を逃がしたんだろがそうはいかんぞ」
だからわざわざ…
『テレポート』
わざわざ頭の中で作戦を語ったのか。
「マミィ早く治療を!」
「分かった」
そう本当は私たちは捕まっていた。サルエが聞いていた事は嘘の作戦だ。本当はタクヤが頭の中で作戦を聞かせていたのだ。
「にしてもよく気が付いたね盗聴器があるって」
「まぁな、じゃあそれじゃあ今から世界平和作戦実行しましょうか」
とタクヤはいつも通りの笑顔で言った。そんな笑顔に私はまた胸が熱くなったのを感じた。




