さいころ
夢を見ていた。
朝になったら忘れてしまう程度の他愛ない夢。
家族だったり近所の人だったり見覚えのない人だったり、色々な人が出てきてはなんか話したり遊んだり。
良い夢だったり悪い夢だったり意味の判らない夢だったり、色々。
………………
…………
……
その何かしらが、唐突に終わった。
気が付くと、わたしは立っていた。
んー?
なんか見覚えがあるような……?
そこは、色が付いてるんだか付いてないんだか。
ふわふわな感じだけがする、変な場所。
そこにわたしは立っている。
?
目の前に、いつからあったのか、白い箱がある。
わたしの胸のあたりまでの大きさの、真四角の箱。
わたしに見えるのは、その箱の前面と上面。
前面には、斜めに、黒い窪みが2つ。
上面には、真ん中に、赤い窪みが1つ。
さいころだよねこれ。
さいころだ。
んー? さいころ? さいころなんて見たことあるっけ?
なんでこれがさいころだと判るのか?
見たことない? ないと思う? ないかも? ほんと?
いやいやちょっと待って?
なんか見たことあるよ?
と言うか、この夢みたことある!
唐突に、わたしは、それを思い出す。何故かはっきりと。
4回みたよこの夢。この場所。このさいころ。
確か最初、まだぎりぎり立てもしなかったときに1回。
その時は5の目が出たよ。間違いなく。
2回目が1、3回目が3、4回目も3が出た。
いつのことかも判らないのに、何故かそのことをはっきりと覚えてる。
で、今から何しなくちゃいけないかも判っている。
これを振るのね。5回目なんだ、今が。
2歩歩いて、さいころの前に立つ。
さいころを持ち上げる。全く重みが感じられないけど、持った感触は何故かある。
そしてわたしは、さいころを、おもいっきり投げた。
さいころは、山なりに飛んで行った。
そして、何もないところで何故か跳ね返った。
跳ね返ったときの音はしなかった。
跳ね返って斜め右に飛んださいころは、ぼうん、と音を立ててワンバウンドした後、また何もないところで跳ね返ってた。
勢いがなくなって、わたしの前にゆっくりと転がってくる。
ころころころころと、音を立てて。
なんか音に統一性なくない? と心の中で突っ込んだ。
わたしに届く前に、さいころは止まった。
4の目が出た。
やった!
私は何故か、嬉しかった。
その場でぴょこぴょこ飛び跳ねていると、始まった時と同じように、唐突に夢は終わった。